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「パティと直接対決するまでに、八年間あるのがせめてもの救いだわ」
レングストン家の剣術全国大会の中学生の部の当日、選手控室に入る前に会場の廊下でコルティナと会ったエーレは、先日パティに公衆の面前で胸をまさぐられた一件について嘆きつつ、ため息をついた。
「私もそこに加わればよかったなー。令嬢三人が揃えばマスコミも喜ぶしー」
エーレに同情するどころか、面白がっている様子のコルティナ。
「そうしてくれれば、パティはあなたに任せて私は安全地帯に逃げられたでしょうね」
「え、その時はパティと二人でエーレを撫で回すけどー? 一人が手足を押さえる役で、もう一人がエーレの体を弄ぶ役」
「私、あなた達に何か恨みを買う様な真似をしたかしら?」
怒りを抑えつつ、エーレが問う。
「エーレだって、目の前に可愛い子猫がいたら撫で回したいって思うでしょー」
「私はあなたと同じ年の人間なんだけれど」
「だったら、余計撫で回したいかな」
「私にそっちの趣味はないからね」
「趣味の問題じゃないよー。エーレだって子猫に気がある訳じゃなく、単に可愛いから撫で回すのであって」
「私、もう道で子猫を見つけてもそっとしておくわ」
自家の開催する剣術大会の当日、痴漢について色々な観点から考察し、自分なりの結論を出す女剣士エーレだった。
一応、優勝候補である。