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大会終了後、決勝で敗れはしたものの、見事な二刀流の腕前を見せたパティと、エディリア剣術界で一番有名な二刀流剣士エーレとが会場の外で会う場面を、マスコミは見逃さなかった。
と、言うよりパティ本人が、
「二刀流の大先輩に当たるエーレさんに、これから挨拶して来ます」
と、記者達が食いつきそうなネタ振りをして、ここまで誘導したのである。
ぞろぞろ記者達を引き連れて現れたパティに対し、エーレもその場の空気を読んで、特にこれを嫌がる事もなく、
「マントノン家の二刀流、とくと見せてもらったわ。素晴らしい技量ね」
と、マスコミを意識しつつ、笑顔で声を掛ける。
「ありがとうございます。エーレさんにはまだまだ及びませんが、いずれその域に近づければと願っています」
パティも、当たり障りのない返答をして微笑んで見せた。
「美少女剣士が和やかに会話している場面」こそ、マスコミの望む絵だと二人とも承知している。これも剣術界を世間にアピールする手段の一つ、と割り切っているのだ。
「残念ながら年齢差があるので、エーレさんと直接試合が出来るのは、まだまだ先の話ですが」
エーレの方が四歳上だが、パティの方が背が高く大人びて見える為、これはある意味意地の悪いジョークに聞こえない事もない。
だがエーレは特に気を悪くする事もなく、
「一般の部で戦える様になるまでに、八年もあるわね。あなたがさらに二刀流を極めてやって来るのを、楽しみに待っているわ。もっとも、あなたはこちらの裏をかいて、一刀流で挑んでくるかもしれないけれど」
「そんなに早く、こちらの手の内を見抜かないでください」
和やかに笑い合う美少女二人の姿を撮ろうとして、記者達が一斉にフラッシュの嵐を浴びせる。
その後も和やかなムードのまま、当たり障りない会話を続けた後、記者達の求めに応じて寄り添って握手をしてみせる二人。
パティは身長差を活かし、並び立つエーレの胸元に握手の位置が来るようにしてから、上下に軽く振ると見せ掛けて、手の甲でそのささやかな胸を執拗に撫で回し始めた。
まさかこの場で「この人痴漢です」と訴える訳にもいかないエーレは、胸をパティに触られまくりながら、
「何で私がこんな辱めを受けなくちゃならないの」
と、心の中で嘆きつつ、記者達のカメラの前で営業スマイルを浮かべ続けていた。
その傍らで、やたらイキイキツヤツヤな笑顔のパティ。
正に変態。




