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観客を魅了する才能にかけては、マントノン家の三姉妹の中で随一と言っていい「大道芸人」ことパティ・マントノン。
向かい合うだけで対戦相手を恐怖のどん底に陥れる長女シェルシェとも、その巨体とパワーと豪快さで対戦相手を終始圧倒する次女ミノンとも異なり、パティの場合、
「向き合うと、『何をやってくれるんだろう』、とついワクワクしてしまう」
「手品のタネを見破ろうとして見破れないけど、それが楽しいっていうあの感じ」
「全然怖さを感じさせないのも手なんだな、って思う。相手は警戒せずに油断するから」
負けた選手すら魅了する不思議な何かが備わっていた。
「でも、どことなく、色気があるというか、エロ気があるというか」
「分かる。女の子同士でも、ちょっとそれはアウトみたいな」
「隙あらば襲われるんじゃないかって、妙な気分になって来る」
ただし、同時に不穏な何かも感じ取られていた様ではあるが。
それはさておき、パティの決勝戦の相手となったのはレングストン家側の選手で、ナーデル・シュヌーアという、小柄ながらも相手に粘り強く食い下がる剣士だったが、
「勢いに乗るパティに瞬殺されて終わりだろう」
と、これまでの試合を見て来た観客達は、全くナーデルの活躍を期待しておらず、その興味も、
「何秒で終わるかな」
という、パティのタイムアタックの対象レベルに留まっていた。