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ふわふわ分析魔コルティナと巨大怪獣ミノンとの対決となった決勝戦について、
「最新版のデータが少ない分、ミノンが有利かな」
「いや、コルティナの事だから、今日の試合からもう十分なデータを取得してるんじゃねえか」
「あくまでもこの大会はデータ取得の場と割り切って、自分の所の大会で仕留める作戦かもしれねえぞ」
などと、観客達もこの試合の展開を色々と予測する。
また、先の小学生の部の大会で、ミノンの妹のパティがコルティナのデータ分析主義を暗に否定する様な発言をしている事から、この一戦にはその因縁も絡んでおり、一部では、
「コルティナは、失礼な事を言った妹の代わりにここで姉を倒して、ララメンテ家の名誉を守るつもりかも」
などという見方もあったが、
「あの浮世離れしたふわふわお嬢様が、名誉とかにこだわる姿が想像出来ない」
と、観客の大半は割と正しくコルティナのふわふわさ加減を把握しており、
「巨大怪獣の方だって、そんな細かい事を気にするタイプじゃないだろう」
ミノンの方も怪獣の名に相応しい豪放さが既に知れ渡っていたので、
「どちらもこの試合にお家の名誉を持ち込むなどという面倒くさい事は全然考えていないだろう」
という見方の方が優勢であった。
いよいよ両者が試合場で向かい合い、片や宙に浮かぶ羽毛の様にふわふわ、片や獲物を狙う野生動物の様に闘志を漲らせ、対照的な構図を形作る。
ある意味、科学者対怪獣の趣のあるこの戦い、怪獣映画のクライマックスとしては至極王道とも言えた。
もっとも映画においては、科学者本人が直接怪獣にタイマンで戦いを挑む無茶なケースは珍しいが。
一応あるにはある。
そして、それが怪獣映画史上に名を残す傑作だったりするから不思議なものである。