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逃げ足道場 番外編 ~ウチの女当主が怖過ぎる件について~  作者: 真宵 駆
◆◆第八章◆◆ 大道芸人のデビューと三大令嬢決戦について
174/632

◆174◆

 思いの他、地味な展開となった巨大怪獣ミノンVSちっちゃな二刀使いエーレの令嬢対決に、「ま、実力者同士が戦えばこんなもんか」、とトーンダウンしていた観客達は、延長戦が開始されるや否や、意外な光景に目を見張った。


 試合開始の合図と同時に、巨大なミノンがちっちゃなエーレを踏み潰さんばかりの勢いで突進し、上段から満身の力を込めて振り下ろす剣を、ちっちゃなエーレは左右の剣をクロスさせて受け、そのまま鍔迫り合いに持ち込み、互いに押しのける様にして離れた後、大きく間合いを取って対峙する。


 そこから長い睨み合いはせず、今度はエーレの方から飛び込みざま腕を伸ばして長剣で相手の頭部に素早く打ち込むも、ミノンはこれを弾きつつ相手の内懐に突っ込んで行く。エーレは体を回転させてこれを受け流し、勢い付いて止まらずにそのまま五、六歩進んでから反転したミノンと、位置を入れ替えて向かい合う。


 先程までの静かで地味な探り合いから一転して、その後も離れてはぶつかり合い、また離れてはぶつかり合いという、喧嘩ゴマの様な派手な展開となり、観客のテンションも一気に上がって行った。


 複雑な軌道で次々に打ち込まれるエーレの二剣を、目まぐるしく剣の位置を変えて的確に防ぎきるミノン。


 凄まじい勢いの突進と同時に放たれる豪快なミノンの一撃を、二剣の運用で巧みにさばき切るエーレ。


 いつ果てるとも知れぬ両者の技の応酬が続き、気が付けば延長戦開始から既に七分が経過。


 と、その時、エーレが空中に渦を描く様に短剣で防御しつつ長剣でミノンの左手を狙うも、ミノンは一歩下がってこれをかわし、相手の二剣の間隙を縫ってエーレの喉元に鋭い突きを入れる。


 これが一本と認められてミノンの勝利が決定し、会場は割れんばかりの拍手に包まれた。


 体格的にそうは見えないが二つ年上の強豪を見事に下したミノンはもちろん、その凶暴な突きに吹っ飛ばされつつも倒れずにこらえたちっちゃなエーレにも惜しみない拍手が送られたのである。


「エーレ、よくがんばったねー!」


 それは、はじめてのおつかいから戻って来た小さな子供をほめてあげるママの様な気持ちだったかもしれない。


 成長期、早く来い。


 試合の結果とは別にそんな事を切に願う、ちっちゃなエーレだった。

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