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逃げ足道場 番外編 ~ウチの女当主が怖過ぎる件について~  作者: 真宵 駆
◆◆第八章◆◆ 大道芸人のデビューと三大令嬢決戦について
173/635

◆173◆

 三年振りに三家の令嬢が揃い踏みした中学生の部の大会において、各令嬢は予想通り順調に勝ち進み、まずマントノン家のミノンとレングストン家のエーレとの令嬢対決が実現する。


 昨年までは小学生の部で、子供の中に大人が一人的な光景から「巨大怪獣」と呼ばれていたミノンも、中学生の部ともなると周囲との差が大分目立たなくなって来てはいたが、それでも人一倍図抜けて大きい事に変わりはなく、


「何か去年よりまた一段とでっかくなった気がする」


 などと、観客もその相変わらずの巨大怪獣振りに驚いており、一方エーレはと言えば、中学三年生になってもまだ小学生で通る程のちっちゃい体格のままで、本人もそれを気にしていたが、


「ミノンはエーレと並ぶと一層でっかく見えるな」


 などという心なき声を耳にするにつけ、


「私は広告画像の商品の脇に置かれるタバコか」


 口には出さないものの、内心さらにブルーになっていた。


 だが、もちろん剣術の試合は体格だけで決まるものではない。


 試合開始直後から、右手の長剣を頭上高く振りかぶり、左手の短剣を前方に突き出して構える二刀流のエーレと、一刀を中段に構えたミノンが、大きく間合いを取って長い睨み合いに入ったが、それは、いつも最初から積極的に攻めるミノンにしては慎重な態度で、


「巨大怪獣が子供相手に攻めあぐねてるぜ」

「ミノンも本格的な二刀流を相手にするのは、これが始めてじゃなかったか」

「勝手が分からずに戸惑ってるんだろ」


 それだけこのエーレというちっちゃな強敵を警戒している事が見て取れる。


 互いに、少し前に出てはまた下がりと、間合いを微妙に調整し続け、時折どちらからともなく飛び込んで打ち込むが、防御されてまた睨みあいに戻るという、双方地味でじれったい攻防に徹した後、そのまま三分が経過して延長戦が決定するが、


「違う。この二人の試合に俺達が求めているのはそうじゃない」


 と、観客も落胆の色を隠せなかった。


 怪獣映画に多くの客が求めているのは、派手な破壊と戦闘のシーンである。


 地味な破壊と戦闘に従事する怪獣がいたら、それはそれで面白いが。


 小さな民家を一軒壊すのに、三十分以上掛けて少しずつ解体する怪獣とか。

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