表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
逃げ足道場 番外編 ~ウチの女当主が怖過ぎる件について~  作者: 真宵 駆
◆◆第一章◆◆ ボンクラ当主と呼ばれた心優しき父親について
16/632

◆16◆

 ただただ落ち込む弟エフォールに掛ける言葉が見つからず、しばらく考えた末にスピエレは、


「剣術が上手く出来なくなっても、生きる資格がなくなった訳じゃない。もしそんな事になったら、俺なんかとっくの昔に親父に絞め殺されてるよ」


 と、間の抜けた事を言う。


「それにお前は昔から頭も良かったじゃないか。今、マントノン家は政府の復興計画に参加していて、ものすごく忙しいんだ。お前が手伝ってくれれば、ものすごく助かる。


「俺はこんなボンクラでも一応当主だから、色々な会議に出たり、ややこしい書類に目を通したり、マントノン家の意見をまとめた案を提出したりと、何が何だかよく分からないまま、とにかく何とかやり過ごしてる有様だ。そんな風にいい加減だから、役員達から毎日何かしら小言を言われてるよ。


「でもお前ならもっと上手くやれると思う。そんな訳だから、早く復帰してくれ。ああ、でもリハビリはじっくり時間を掛けないといけないか。


「やっぱり、今言った事はナシだ。お前は当分何もしないで、リハビリに励め。義足の技術も日進月歩らしいから、医者と相談してどんどん最新式の奴を採用するんだ。実家が金持ちだと、こういう時都合がいいな。


「お前を見てると、体より心の方が参ってしまってるんじゃないか、とつくづく思うよ。不謹慎かもしれないが、この際、長い休暇をもらったと思って気楽に過ごせ。お前は根が真面目だから、その位で丁度いい」


 とりとめのない事をまくしたてて、スピエレは何とか弟を励まそうとするのだが、エフォールはそれに対して否定も肯定もせず、兄の顔をしげしげと眺めながら、


「兄さん、今忙しいのか」


 とだけ尋ねた。


「ああ、今日も会議があったんだけどすっぽかした」


「ここへ来る為だけに?」


「こうでもしないと、いつまで経っても見舞いに来れそうもなかったから」


「役員に怒られるぞ」


「どうせ、会議に出たとしても怒られる」


 兄が真顔でそう答えるのを聞いて、エフォールは思わず笑ってしまった。


「兄さんは昔から、何事も一生懸命やってるのに上手く行かなくて、怒られてばかりだった」


「ああ、もう何かに呪われてる感じだよ。って言うか、お前も一緒になって怒ってたじゃないか」


 そう言いながらも、ようやく弟が笑顔を見せた事に、スピエレは内心ほっとする。


 エフォールは少し沈黙した後で、


「たとえ報われない結果に終わったとしても、努力し続ける事は尊いんだな」


 しみじみとつぶやいた。


「褒めてるのかバカにしてるのか、微妙に判断に苦しむ様な事を言わないでくれ」


 苦笑するスピエレ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ