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逃げ足道場 番外編 ~ウチの女当主が怖過ぎる件について~  作者: 真宵 駆
◆◆第七章◆◆ 女当主に造反を企てた者達の哀れな末路について
157/635

◆157◆

「三家がお互いの大会に遠征する現在の形式も面白いのですが、最初から流派を超えた統一ルールの下で共同大会を行えたら、エディリア剣術界がより盛り上がるとは思いませんか?」


 マントノン家の屋敷の応接室で、一仕事終えた三人が紅茶を飲みながら寛ぐ中、シェルシェが何気に壮大な構想を口にする。  


「エディリアの剣術関係者なら、誰もが一度は考える事ね」


「一番のネックはルールだと思うよー。特に一本の判定基準。三家で微妙に違うし、審判次第な所もあるから」


 エーレもコルティナもその構想に大いに興味はあるが、現実問題として非常に難しい事をよく分かっていた。


「公平を期す為に、電気式の判定装置を導入してはどうかと考えています」


「それ、レングストン家でも定期的に何度も検討される話題だわ。『機械に判定させると、単なる剣の当てっこになってしまうのではないか』、って言われて、いつも見送られてるけれど」


「ララメンテ家は判定装置の導入には割と寛容で乗り気だけど、開発資金の問題で二の足を踏んでる所があるねー。装備一式を用意するとなると、道場生の負担も増えるしー」


 武芸の精神性を重く見るレングストン家のエーレと、さほど重く見ないララメンテ家のコルティナが、それぞれの立場から意見を述べる。


「でも、判定基準を明確にしたルールの下で、剣術をスポーツ化して敷居を低くすれば、より多くの競技人口を獲得出来ると思いませんか?」


「ビジネス的には美味しい話ね。ただ、昔堅気の剣士達は反対するでしょう。『武芸のスポーツ化など許されん』、って」


「敷居の低いスポーツから入門してもらって、徐々に武芸としての剣術にハメて行くのもアリだねー。気付いた時にはもう首まで浸かってる感じで。あたかも最初は肩こりの薬と称して、一般人を徐々に違法なおクスリにハメる悪の組織のごとく」


 精神性にとらわれてやや硬直化しているレングストン家と、それは精神を壊す薬だろうとツッコミを入れたくなるララメンテ家のお嬢様。


「ふふふ、人を麻薬王みたいに言わないでください、コルティナ。もちろん、すぐに実現出来る話でない事は承知しています。ただ近い将来科学技術の進歩によって、判定装置に関しては今よりもっと簡単に導入出来る様になるかもしれません」


「となると、後は反対派の説得ね。天然ボケの父はともかく、レングストン家は古参が頑固だから」


「ララメンテ家はその点に関しては楽だよー。『儲かるのなら、大いにやってください』、って感じ」


「もちろん、これはあくまでもまだまだ先の話です。ただ、二人共、『マントノン家の当主が、流派を超えた統一ルールの下で剣術大会の共同開催を考えている』、とそれとなく上の方に伝えておいてもらえませんか?」


「分かったわ。でも随分気の長い話ね」


「シェルシェは長いスパンで物を考えるよねー」


 半ば呆れ半ば感心するエーレとコルティナに対し、シェルシェは、


「ふふふ、この構想が実現する頃、私達三人はどんな風になっているのでしょうね」


 と笑ってみせた。

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