◆143◆
小学生の部では間接的にミノンを倒し、中学生の部では直接エーレを倒して、ララメンテ家の本土防衛を成功させたコルティナに、観客達は改めて感服し、
「すげえな、あのふわふわお嬢様」
「監督と選手を同時にやってる様なもんだからな」
「裏で大会の運営も采配してるっていう話も聞いたぞ」
などと噂しあっていた。
そのふわふわお嬢様本人は記者団に囲まれ、
「今回決勝戦で何とかエーレに勝利しましたが、非常に際どい所でした。運に助けられて勝てた様なものです」
ふわふわをやや抑え気味にして、真面目にインタビューに答えていた。やれば出来る子なのである。
「エーレの三冠達成を期待されていた観客の皆様には、場の空気を読まずに申し訳ない事をしてしまいました」
だがちょっと気を抜くと、ボケに走ってしまうコルティナ。
「ですが、内部外部を問わず今回出場した選手達による素晴らしい試合の一つ一つが、皆様に入場料分以上の興奮と感動を与えてくれたものと確信しています」
段々、優勝者から主催者サイドのコメントにシフトし始めた。少なくとも「入場料」などという単語は、優勝者のインタビューに出て来るはずがない。
「ララメンテ家の剣術全国大会は、この後も、高校生の部、一般の部と、会場を変えて続きます。皆様お誘い合わせの上、どうぞお越しください」
もう完全に商売に走ってしまったコルティナ。観客達からも、どっと笑いと拍手が巻き起こる。
「これ以上おかしな事を口走る前に、誰かコルティナを止めた方がいいんじゃない?」
「でも、流石に優勝インタビューの最中にツッコミは入れられないよ」
「コントのオチみたいに、上から金ダライをコルティナの頭に落とすとか出来ないかな」
ララメンテ家の道場生達が、突っ込みたくても突っ込めないじれったさを覚える一方、
「流石コルティナね。ここぞとばかりに観客達へ、残りの大会の宣伝をしてるわ」
とレングストン家のエーレも、
「ふふふ、彼女こそ真のプロ剣士です」
とマントノン家のシェルシェも、同じ剣術業界に身を置く者として、その商魂には敬意を表していた。それが良いか悪いかはともかく。
その後、普通に戻って真面目にインタビューを終え、仲間の元に戻って来たコルティナが、
「ただいまー。お客さんをドッカンドッカン盛り上げて来たよー」
とふわふわした口調で言うと、
「いい加減にしなさい!」
もちろん皆から一斉に、お約束のツッコミが入ったのだった。