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巨大怪獣ミノンの三冠が懸かっていた事もあって大入り満員となった小学生の部に引き続き、レングストン家のツンデレ二刀流エーレの三冠が懸かっている中学生の部も大入り満員で幕を開け、大会を主催するララメンテ家の経営陣の皆さんは、
「これで今年の最大懸念事項はクリアした」
と、早くも全てを終えた気になって文字通り祝杯を上げていた。昼間から。
ちなみに、この後に続く高校生の部と一般の部の大会については、
「去年と同じ場所でいいよー。お客さんの数は大体同じ位だと思うから」
というララメンテ家の分析魔ことコルティナのご神託により、勝負を手控えて昨年と同じ会場を予約してあり、予算面での心配は特にない。たとえ客が全く入らなくても、小中学生の部で得た利益で十分黒字である。
小中学生より数段グレードが落ちる会場で大会を行うララメンテ家の道場生達は、多少は気分を害するかと思いきや、
「会場の大きさは十分だし、二年前までは、もっと小さい所で客席もガラガラだった事を思えば、何も不満はないです」
と、「吾唯足るを知る」の精神で満足していた。
そんな裏事情はともかく、いよいよ、その年の剣術界の最大の注目を集めた大会が始まった。
観客の目当ては、もちろんレングストン家のエーレとララメンテ家のコルティナの二大令嬢の活躍であり、クジで決まった組み合わせによると、上手く勝ち進めば決勝戦で両者が対決する予定になっている。
「まさか、クジに細工とかしてないでしょうね」
開会式の前、あまりにも出来過ぎた組み合わせに、選手控室でエーレがコルティナに冗談めかして問い質した。
「してないよー。それに、ウチの選手達は皆、エーレの首を虎視眈眈と狙ってる事も忘れないでねー。『エーレは今大会の目玉だけど、大会の途中で敗退させても全然オッケーだよー』、って言ってあるし」
コルティナがふわふわとした口調で答えたが、その内容はかなり挑発的である。
「で、今回も私を倒した人が、『高級ホテルの極上スイーツ食べ放題』なワケ?」
「そうだよー。エーレの首にはそれだけの価値があるからねー」
「随分安い首ね」
「高い安いじゃないよー。勝利の後のスイーツの味は極上だもの」
「じゃあ、敗北の後のスイーツは?」
「悲しい気持ちを吹き飛ばしてくれる魔法の味だねー」
だからあんた達は優勝祝賀会も残念会もスイーツ店でやるのか、とツッコミを入れたくなったが、ララメンテ家の他の選手達もいる手前、失礼過ぎるかなと判断してぐっと言葉を呑みこむエーレだった。




