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逃げ足道場 番外編 ~ウチの女当主が怖過ぎる件について~  作者: 真宵 駆
◆◆第七章◆◆ 女当主に造反を企てた者達の哀れな末路について
128/632

◆128◆

 試合が再開されるや否や、いきなり前に飛び出して相手の頭部を狙うミノンの剣を、素早く受けて鍔迫り合いに持ち込むキルヒェ。


 一本先制したからと言って、この巨大怪獣ミノン相手に油断など出来ない事は百も承知である。むしろ一本取られた為に、わずかな残り時間で積極的に攻めて来る事は容易に想像出来た。


 鍔迫り合いなどもどかしいと言わんばかりに押しのける様にして離れた後、再び突進して相手の頭部に剣を打ち込むミノン。キルヒェは何とかこれを受け、鍔迫り合いに持ち込んだ後、すぐに離れて対峙する。


 残り時間三秒を切り、観客達がほぼキルヒェの勝利を確信したその時、ミノンは最後の突進を決行する。


 キルヒェが反射的に剣を持ち上げた瞬間、ミノンの剣はきれいな円の軌道を描いてその右胴を斬り裂いていた。


 そのままくるりと一回転して元の体勢に戻るミノンに、審判が一本を認め、両者再び試合開始位置に戻った所で時間切れ。試合は延長戦に突入する。


「ああ、惜しい。もう少しだけミノンが遅かったら、勝ってたのに!」


 観客席で地団太を踏むティーフ。


「そんなヘマをするミノンじゃないわ。果敢に攻めていても、動きそのものに焦りは見えなかったもの。『残り時間がどんなにわずかでも、一本取るには一瞬あれば十分だ』位に考えてるんじゃないかしら」

 

 淡々と言うものの、心配そうな表情を隠せないエーレ。


 そして延長戦が開始されると、キルヒェとミノンは中段に構えた剣と剣を、その先端部分をくっつける様にして対峙し、お互いの出方を慎重に窺った。


 ただぴたりと静止しているのではなく、両者小刻みに剣の位置を修正し続けているのが、剣同士が当たってカチカチ鳴っている事から分かる。


 始め小さかったこのカチカチ音がやがて激しく大きくなり、それにつれて緊張感も高まって行き、ついに臨界点を突破したと思しき瞬間、両者同時に前に飛び出し、互いに相手の頭部を狙って渾身の一打を放った。


 鋭い打突の音が短い間隔で二つ続いた後、キルヒェとミノンは勢い余って中央で衝突し、抱き合う様にもつれ合って、床に横倒しに転倒する。


 審判はキルヒェの一本勝ちを認め、試合は終了した。


 レングストン家の執念が、マントノン家の巨大怪獣を倒したのである。

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