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動揺から立ち直ったララメンテ家の選手達は、対ミノン用の戦術を攻撃寄りから防御寄りに切り替える事で、この巨大怪獣の怒涛の侵攻に多少の歯止めを掛ける事に成功する。
ただし、あくまでも多少であり、怪獣映画で言えば、初め通常兵器で全く歯が立たなかった巨大怪獣を、ややグレードアップした兵器と巧妙な作戦の運用によって、少し時間稼ぎする事が出来る様になった程度の展開である。
それでも瞬殺を免れ、粘り強く抵抗する事により、
「たとえ勝てなくとも、ここで出来るだけミノンさんのHPを削っておいて、後の事は次に当たる選手に任せよう」
と、戦術的勝利より戦略的勝利を目指すララメンテ家の選手達。もちろん勝負を捨てた訳でなく、粘って粘って隙が出来たらそこを突いて倒そうという、気概も一応残っている。念の為。
しかしそんな小細工が通じる巨大怪獣ではなく、個々の試合で粘られた所で、そのパワーは一向に衰えを見せない。
新兵器の攻撃を跳ね返し、大がかりな罠を物ともせず、巨大怪獣ミノンがララメンテ家の最終防衛ラインに近付きつつあった頃、レングストン家からも一人の選手が、打倒ミノンの執念の炎を燃やして着々と勝ち上がっていた。
レングストン家の大会決勝で、ミノンに敗れたキルヒェ・ドームである。
「よし、キルヒェが勝った! これでついに準決勝戦でミノンと当たる!」
観客席でテンションが上がりまくっているのは、昨年のレングストン家の大会の決勝戦で、やはりマントノン家からの刺客に敗れた道場生ティーフ。現在、自分と境遇が似ているキルヒェにすっかり感情移入中。
「キルヒェはここまでよく頑張ったわ。どちらが勝つにせよ、決勝はララメンテ家対他家の形になるわね」
隣で観戦していたエーレが冷静に言う。
「ここまで来たら優勝だ。ミノンを倒せたら、その可能性は十分ある」
「ララメンテ家は、むしろキルヒェにミノンを倒させようとしてるのかもしれないわ。油断は禁物よ」
そんなエーレの言葉も、興奮状態にあるティーフにはあまり届いていない様だった。