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ララメンテ家の小学生の部の大会が始まる直前、会場の外でコルティナは、女子の出場選手達にふわふわと訓示らしきものを垂れていた。
「『序盤で巨大怪獣を倒したら、お客さんが帰っちゃうんじゃないか』、なんて気を回す必要はないからねー。帰った所でもう入場料は前払いで頂いてるから、ウチの懐は痛くもかゆくもないしー」
だが、あまり訓示になってない所が、いかにもコルティナらしい。
「一見無敵に思える巨大怪獣にも弱点の一つや二つある事は、もう分かってるよねー。ミノンと当たる事になっても、慌てないで冷静にそこを突く事が肝心だよー」
ちょっとだけアドバイスらしくなったと思いきや、
「もしかしたら戦うまでもなく、先にミノンと当たったレングストン家の選手が倒してくれるかもしれないけど、その時はラッキーだったって事で」
他力本願に走り、
「この大会はねー、詰まる所『誰かがミノンを倒したら、ウチの勝ち』なの。さらに言うと、その『誰か』が誰でも構わないから。ララメンテ家でもレングストン家でも無所属新人でも。でもそれはそれとして」
また少しアドバイスらしくなった所で、
「何度も言うけど、ミノンを倒した人と優勝した人は、それぞれ高級ホテルの極上スイーツ食べ放題にご招待だから頑張ってねー。運がよければ二回も行けるよー」
しつこく物で釣ろうとする始末である。
「当たり付きアイスじゃないんだから」
コルティナのマジともボケとも判別しかねる発言に、今まで近くで黙って聞いていた同学年の道場生の一人が、ついツッコミを入れてしまった。
最後まで黙ってようと思ってたのに。
しかしララメンテ家の選手達はこのやり取りにどっと笑い、試合前の緊張が上手くほぐれた様子なので結果オーライとする。