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小中学生の部での盛り上がりに引っ張られる形で、その後、他の部でも盛況となったレングストン家の大会が無事終了すると、人々の注目は自然とララメンテ家の大会に向けられた。
エーレ、ミノンの三冠達成なるか、コルティナとその指導を受けた後輩達がこれに待ったを掛けるのか。
そんな若き女剣士達の闘いを見ようと、小中学生の部の前売りチケットは発売直後に完売である。
「ララメンテ家にとっては嬉しい悲鳴でしょうね。ある意味、一番美味しい所を持って行った訳ですから」
マントノン家の現当主シェルシェが、前々当主のクぺに、書斎でそんな話をする。
「ララメンテ家は会場もいつもより広い所を借りたらしいな。お前が公式試合に出ないというので、一時は観客動員数の減少を心配していた様だが」
「蓋を開けてみれば、中学生の部は私がいなくとも三大会全て大入り満員です。少し寂しい気もします」
冗談めかして笑うシェルシェ。
「なに、お前が出ていればもっと盛り上がっただろう。その場合、観客動員数に見合う会場を探すだけで一苦労だ」
「ふふふ、お気遣いありがとうございます、おじい様」
「しかし商売を抜きにして言えば、これだけ盛り上がっているのに選手として参加出来ない今の状況は、お前にとってさぞ辛いものがあるだろうな」
少しトーンを落とし、しみじみとした口調になるクぺ。
「当主には当主の戦いがあります。目下そちらだけで手一杯なので、むしろ大会には参加出来ない方が好都合です。もし参加が可能であったならば、つい両方張り切り過ぎて、体を壊しかねません」
「当主の戦い、か」
遠い目になる前々当主のクぺ。
「また、これだけ盛り上がってくれたおかげで、世間ではもう当主交代劇も離脱騒動もすっかり忘れ去られてしまった感があります。これはマントノン家の当主としては、非常に喜ばしい状況です」
「ついでに離脱派の立ち上げた新流派も、この盛り上がりの前では大して話題にならずに忘れ去られつつある様だが」
「ええ。もう少し頑張って欲しいものです」
シェルシェは妖しく微笑んで、
「いずれ滅ぶ運命とは言え、滅びるのが早過ぎても困りますからね。こちらで利用する都合もありますし」
と無慈悲なコメントを付け加え、またもやおじいちゃまを少し困惑させるのだった。