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逃げ足道場 番外編 ~ウチの女当主が怖過ぎる件について~  作者: 真宵 駆
◆◆第七章◆◆ 女当主に造反を企てた者達の哀れな末路について
119/632

◆119◆

 今大会において、


「両家の令嬢が二人共敗退した時点で、客の大半は帰ってしまうのではないか」


 などと洒落にならない冗談がささやかれていた中、ついにその二人、レングストン家対ララメンテ家の令嬢対決が実現し、会場は大いに盛り上がりを見せる。ある意味、本日のメインイベントと言っても過言ではない。


 試合開始直後から、右の長剣を振りかぶり、左の短剣を前に突き出して構えるエーレと、中段に構えて動かないコルティナとの睨み合いが続き、


「読み合いだったら、コルティナが有利だろ」


「いや、エーレがこんなに静かにしてるのは、何か秘策があるんじゃないか」


 観客達も固唾を呑んでそれを見守った。


 やがてエーレが前に出て、コルティナの剣の先を、突き出した短剣の先で軽く突っつくという、牽制とも挑発ともつかない動作を繰り返したが、コルティナはそれに乗らず、ふわふわと受け流してはすぐに元の位置に剣を戻し、床を滑る様にふわふわと後に下がって間合いを取る。


「子猫が猫じゃらしにじゃれついてるみたい」


 ちょっと和む観客達。


 と、エーレが突進して、二剣を異なる角度で連続して打ち込み始め、何がどうなっているのか傍目には分からない程の複雑な猛攻を開始したが、コルティナはこれら全ての連打をわずかな剣さばきで受けきり、観客達を驚かせる。


「すげえな。コルティナには予知能力でもあるんじゃないのか」


「いや、最後にコルティナが放った胴への鋭い一撃を、短剣で素早く払い落したエーレも大したもんだ」


 観客達はほぼゼロコンマ以下の秒数内で行われる目まぐるしい攻防に興奮していた。目まぐるし過ぎて、何が起こっているのか正確に理解出来ていない人も多かったが、それでも熱気は伝わって来る。


 二人はまた長い睨み合いに戻り、試合は膠着したまま延長戦へ突入。


 試合再開後、また長い睨み合いが始まったが、エーレは左手の短剣を小刻みに構え直しながら、何やら攻撃を仕掛けるタイミングを窺っている様子。


 コルティナは相変わらず中段の構えでほとんど動かずこれに対峙し、エーレが仕掛けて来るのを待ち構えている。


 やがて再びエーレが猫パンチの如く繰り出す素早い二剣の攻撃ラッシュが始まり、コルティナはこれを難なく最小限の動きで受け流した後、最後にエーレの頭部に見事な一撃を決める。


「コルティナが勝ったか」


 どよめく観客達。


 だが、審判が下した判定はエーレの一本勝ちであった。素早いラッシュの最中に、コルティナの右手にエーレの長剣が既に打ち込まれていたのである。


 観客達は呆気に取られたものの、すぐにこの二人の敢闘を讃える拍手を惜しみなく贈った。


「うふふ、またしてもやられちゃったけど、ウチの大会では負けないよー」


 試合終了後、コルティナがエーレにふわふわとした口調で告げると、


「楽しみにしてるわ。また戦えるといいわね」


 エーレも不敵な笑みを浮かべてこれに応じる。


「クジに細工して、必ずエーレと当たる様にしちゃおうかなー」


「絶対にやめなさい」


 全ての感動を台無しにするボケとツッコミを交わした後、エーレは強敵コルティナを破った勢いに乗って、そのまま優勝を果たしたのだった。

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