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マントノン家の大会で優勝した勢いに乗ってエーレの二冠達成なるか、と人々の関心が高まる中、レングストン家の剣術全国大会中学生の部が始まった。
普通、全学年が一緒に戦う形式で、一年生が上位に勝ち残る事は珍しいのだが、エーレとコルティナの二人はマントノン家の大会同様、ここでも二、三年生相手に難なく勝ち進み、その実力が本物である事を証明する。
エーレの場合、その二刀流は一刀流に比べて使い手が少ない為、対策が立てにくいという有利もあるが、たとえ運良く二刀流対策が出来る環境にいたとしても、「あれほどのレベルに対しては、まるで通用しない」、と対戦相手は思い知らされる事になる。
コルティナの場合、そのふわふわな雰囲気に騙されて一気に畳もうと攻撃を仕掛けると、ありえない位最小限の動きで防がれてしまい、「こちらの動作を読まれている」不気味さに気付いた時には、もう為す術がない。
こうして学年の差をものともせずに順調に勝ち進んだ二人は、ついに準々決勝で対戦する事になった。
「令嬢対決が決勝ならもっと盛り上がるのにねー」
試合前、コルティナがエーレにそう言うと、
「それを言うなら、シェルシェが出場していれば、もっと盛り上がったでしょうに」
エーレがしみじみとした口調で言い返す。
「復讐が果たせなくて残念?」
「復讐云々はどうでもいいわ。ただ」
「ただ?」
「あのまま一年間剣術修行に専念して、さらに強くなったはずのシェルシェと戦えなかったのが残念ね。マントノン家内部のしがらみに、かけがえのない好敵手を取られちゃった感じ」
「うふふ、私じゃ物足りない?」
「あなたの代わりが誰にも務まらない様に、シェルシェの代わりも誰にも務まらないって話よ」
「清々しい位堂々とした二股宣言だねー」
「何の話よ」
「私を取るか、シェルシェを取るか、この場でハッキリさせて!」
「何その小芝居」
「うふふ、エーレはどっちを取るのかなー?」
「両方倒すわ。もちろん」
「あらら、まさかの全滅エンド。つれないエーレねー。そろそろ第一次反抗期かしらー」
「だからどういう設定なのよ。あと、第一次反抗期って、私は幼児か!」
しみじみしつつも馬鹿馬鹿しいやりとりを交わしている内に時間となり、二人は準々決勝の試合に向かった。




