◆116◆
昨年は「不死身で無敵な殺人鬼」シェルシェ、今年は「巨大怪獣」ミノン。
二年連続でマントノン家から送り込まれた規格外の化物に蹂躙され尽くされた感のあるレングストン家ではあったが、観客達も、
「レングストン家が弱いんじゃない。あの二人が強過ぎるんだ」
という事はよく分かっている。
記者達に取り巻かれ、屈託のない笑顔で嬉しそうにインタビューを受けているミノンを見れば、
「何かの間違いで小学生の大会に紛れこんだ大人が、そのまま優勝してしまった感じだな」
と、改めてそのでかい図体に驚きつつも感心せざるを得ない。
こんな巨大怪獣相手によく戦ったものだ、とレングストン家の選手達の方を見やれば、観客席の下に集まって悔し涙に暮れており、そんな彼女達にエーレが上から何やら慰めの言葉を掛けている様子である。
「ミノンの優勝を阻止出来なかったからって、何も恥じる事はないわ。皆本当にいい試合をしてくれたもの。大切なのは、この敗北から学んだ事を次に活かす事よ。私だって去年シェルシェに負けたけれど、そこから得た教訓を活かして、今年のマントノン家の大会で優勝出来た様なものだし」
普段見下ろされているちっちゃなエーレが大きく見えるのは、単に高い位置にいるからだけではない。
「まだララメンテ家の大会が残ってるわ。どう? あなた達にあの巨大怪獣と戦う気力はまだある?」
「あります!」
強い決意と共に答えるレングストン家の選手達。それを見てエーレも満足げな顔をして、
「私も中学生の部で頑張るわ。一緒に正々堂々と戦い抜きましょう」
「はい!」
いい感じに熱血スポ根していた。
一方ララメンテ家の選手達は早々と会場を後にし、近くにある有名スイーツ店で、
「じゃあ、残念会を始めるよー。とりあえずお疲れー」
「お疲れー!」
ふわふわ令嬢コルティナを中心に、残念会と称する楽しいお茶会を開いていた。
「ウチの大会であの巨大怪獣を仕留めるよー。懸賞の高級ホテルの極上スイーツ食べ放題目指して頑張ってねー」
つくづく熱血スポ根とは縁遠いふわふわなお嬢様である。




