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逃げ足道場 番外編 ~ウチの女当主が怖過ぎる件について~  作者: 真宵 駆
◆◆第一章◆◆ ボンクラ当主と呼ばれた心優しき父親について

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11/636

◆11◆

 そして二年後、「強い騎士様」を望んだユティルが授かったのは、元気な女の子だった。この子はミノンと名付けられ、


「ミノンは活発だな。まあ、よく動くこと動くこと。流石は私の孫だけあって、これはいずれ男に負けない立派な女剣士になるかもしれん」


 クぺの祖父バカをさらに誘発しつつ、二歳上の姉シェルシェ共々可愛がられる事になる。


 しかし、母ユティルは娘が無事に生まれた事を喜びつつも、跡継ぎたる男の子が出来なかった事について、どこか落胆の色を隠せなかった。


「気にする事はないよ。ミノンも君に似てるから、さぞかし綺麗な子になるだろうな」


 ミノンを高く持ち上げてあやしながら、スピエレはユティルを励ます様に言う。


「ええ、二人の子供は何よりの宝物です。三人になればもっと――」


「ねえ、ユティル」


 スピエレはミノンを乳母に渡した後で、妻に寄り添い、


「二人共女の子だったのは、きっとマントノン家にとって何か意味があるんだよ。今は分からないけれど、きっと何か大切な意味が」


 楽観的に言ってみせる。


 ユティルはそんな夫の手を愛おしそうに取り、


「もう一人だけ、お願いします」


 と、固い決意と共に訴えた。


「分かった。けれど、約束してくれるかい」


 スピエレはユティルの手を優しく握り返し、


「無理はしない事。そして、今はこの娘達と楽しく過ごしてあげる事。いいね?」


 そんな夫の言葉に、


「ふふふ、もしあなたが名門の当主でなくて、ごく普通の家庭の人だったら」


 ユティルは微笑み、


「さぞや幸せに暮らせていた事でしょう」


「はは、昔、親父に言われたよ。『お前は生まれる家を間違えたのかもしれぬ』、ってね。でも普通の家に生まれていたら、君とはどうあがいても結婚出来なかったんだから、今より幸せになれたとは思えないなあ」


 スピエレはそう言って、呑気に笑った。

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