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逃げ足道場 番外編 ~ウチの女当主が怖過ぎる件について~  作者: 真宵 駆
◆◆第七章◆◆ 女当主に造反を企てた者達の哀れな末路について
101/632

◆101◆

 その後のマントノン家の剣術全国大会は、小学生、中学生の部の盛り上がりに引っ張られる形で、高校生の部もそれなりの活況を呈したが、それに続く一般の部は悪い意味での盛り上がりを見せる事となる。


 マントノン家の道場を代表する人気剣士達が、直前になってこぞって不参加を表明し、この大量ボイコットによって、大会は不戦勝だらけのスカスカなものになってしまったのだ。例年の倍以上来場していた多くの観客達も、「一体何が起こった?」、と首を傾げ、大会は奇妙な雰囲気のまま進行して行く。


 時を同じくして、首都エディロにあるナチャーラホテルの会議室にて、そのボイコットした選手達が記者会見を開き、彼らの代表者であるグルーシャ・アシープカが、


「我々は、同族経営の悪しき弊害によって腐りきったマントノン家を離脱する」


 と宣言していた。


 グルーシャは、前当主スピエレについて、


「剣術家としても、経営者としても、倫理的な観点からしても、トップに相応しくない者が、ただマントノン家の血を引いているというだけの理由で、長年に亘って当主という重大な地位にのさばり続けた」


 と、そのボンクラ振りを攻撃し、


「前当主がスキャンダルを起こして収拾がつかなくなると見るや、世間で一時的に持て囃されているだけの、まだ中学生の娘に当主の座を譲って、その場しのぎのごまかしに走る始末」


 現当主シェルシェについても、「隠蔽工作用のお飾り当主」と批判。


 この二人の当主を激しく非難する事で、自分達の行為の正当化を図り、


「我々は、もっと青少年の育成に相応しい健全な剣術道場を作る事を目指し、自浄努力を怠るマントノン家への批判も込めて、敢えて全国大会の最中にこうして新流派の旗揚げの記者会見を行わせて頂いた。もう二度とマントノン家に戻る気はないが、マントノン家がこの批判を重く受け止め、改革に努める事を切に願うものである」


 と、締め括る。


 知らせを受けて、試合が行われている全国大会の会場では、主催者席に座る当主シェルシェに記者が殺到し、この件について質問攻めにしたが、


「全く突然の事で、私も事情が分かりません。今、詳細を調べさせている所です。大会が終了しましたら、この場を借りて急遽記者会見を開く事にしますので、全ての試合が終わるまでお待ちください」


 まだ中学生でありながらも、シェルシェは当主として取り乱す事なく、この突然降って湧いた難局に敢然と立ち向かう姿勢を明らかにした。


 しかしもちろん、シェルシェが事前に全てを察知していた事は、前に述べた通りである。


「ネズミが猫の前にノコノコ現れたみたいだねー。いよいよ大虐殺が始まるよ」


 そして観客席から双眼鏡でシェルシェの表情を観察していたコルティナは、シェルシェが全てを察知していた事を全て見抜いていた。


「だってシェルシェ、口元が微かに笑ってるもの」

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