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2話

「俺が呪文を唱えたいんだが、いいかい」


猛夫は右手に箒の柄を取り外して作った杖を掲げ、今にも呪文を唱えそうな格好をしながら聞いた。


「ああ、いいよ。どうせ本番じゃないし。いや本番でも俺はしないから関係ないか」


秀人は壁にもたれ掛りながら、心底どうでも良さそうな顔をして言った。


「しかし、本のに書いてある通りに唱えても面白くなさそうだ。使い魔が召喚されても使い道ないしな。お前は何が出て来てほしいか」


「俺、いや何でもいいが、出来れば簡単に処分できそうな物がいいな。それかモテないお前のために女の子でも召喚したらどうだ」


「そうか。その手があった」


そう言うと猛夫は目を輝かせていった。


「マンダラー クンダラー コンダラー テンダラー ・・・」


猛夫が唱えだすと同時に秀人がポケットにいれた無線式スイッチのいれる。


ガタン。ガガガ。ギギギギギ。ゴオオオオオ。


未完成の物体がうなり声を上げ始める。猛夫はそれに負けじとさらに大声で呪文を唱える。


「ケンダラー。サンダラー。ウォンダラー。チンダラー ・・・」


「ダラーって何」


芋虫の様な布切れから出て来た和美が、布切れの上に座りながら言った。




「俺が召喚されてたら使い魔にされてしまった件」。この物語の内容は次の通りである。魔術師の家に生まれた者の習慣の一つとして、一人前の魔術師になる前に動物の使い魔を召喚する。魔術がからっきし出来ない少女は、魔術の訓練嫌気がさして、家の者に隠れて一人で召喚の儀式をしてしまう。そして召喚されたのは主人公の少年。

少女は、彼女の考える高位の幻獣などが召喚される事を期待したが、ただの人間が出て来てしまったため落ち込んでしまい、家の者には自分専属の下僕と称して家畜扱いする。

初めの内は、少女と少年は価値観の違いから衝突ばかりしていたが、幾多の困難を乗り越え、お互いを理解し結ばれる。


ガガガ。ゴトゴトゴト。ギギギ。ガチャン。


「ヤンダラー。インダラー。シンダラー。モウヤダー」


ガンガンガン。ゴン。


俺は耳元に響くけたたましい物音で目が覚めた。寝ながら首を捻ると、ここが小さな箱のような空間の中である可能性を考える事が出来る。しかしくわしく空間を調べた訳では無いので、何とも言えない。

本来なら状況を性格に把握し、担当部署があれば申し伝え、あるいは今後の対応について検討を行うが、下の方から響いている音は、今にも俺に害を与える可能性があり、予断を許さない。

おれは情報を更に集めてから対応を検討するか一旦はこの場を離れるようにするかどちらかを選択する必要に迫られた。


バキッ。


俺は顔の前にある板を押した。以外と簡単に開く。俺は自分がその空間から抜け出せる大きさの出口を確保すると、体重を底のの板にかけないようにそっと立ち上がった。


そこには、杖をもって両手を天上に差し伸べて、大声を上げている少年と、壊れたリモコンのような物を顎挟んで、壁にもたれて寝ている少年と、太さ1メートル位ありそうな、紐で縛った布の固まりに座って大きく足を降っている少女がいた。


布の固まりに座っている、短い髪を二つに束ねた中学生らしき少女が俺を見て言う。


「ねえ。もうその騒々しい掛け独り言と騒音、止めてくれないかな。物体からなんか出て来たよ」


リモコンを顎に挟んだ少年が眠そうに答えた。


「もう少し待って。そしたら何かが起こるかもしれないから」


「起こるって、何かな。何かなら既に起こっる気がするけど。これって成功じゃないのかな」


「ちがうね.そんなんじゃねえよ」


壁にもたれた少年はそう言うとまた居眠りを始めた。そのとき、


「「成功しったて」」


二人の少年はそう叫び、俺の方へ振り向いた。大声は既に止み、機械音がひたすら鳴いている。杖をもった少年が言う。


「あれえ、気が付かなかったなあ。人がこの中にいたなんて。秀人、連れて来たんなら一言いって欲しかったな」


「いや、俺も知らないし。お前が連れて来たんじゃないの」


「知らないなあ。・・・。そうだきっとこの部屋に迷い込んだんだ。君、ここは危ないから出た方がいいよ」


「そうだ。ここは危ない。少なくともその物体からは出た方がいい」


確かに。この機械の中に居るのは危険な可能性がある。最もここに居る人たちもこの機械に負けず劣らず危険と考える事が出来るが。


「わかりました」


俺はそう言って、自分が今居る機械から抜け出す。少女が俺に話しかける。


「ねえ、あなたはだれ。教会の関係者?」


俺は即座に否定する。


「いえ。違います。関係者ではありません」


「そう。でもここ関係者でも滅多に来ないんだけど、どうしたのかな」


少女は関心薄そうに首を傾げる。リモコンを持っていた少年が、俺に言う。


「お前、猛夫の妹か。それとも親戚。顔がよく似てるね」


「そ、そうですか。でも違います」


俺はそう答える。俺にそんなに似ているのか。少し見てみたい気もする。じゃなくて猛夫は俺の名前だけど。それにあれ、そう言えば妹? 妹と言っていなかったか。俺が女の子に見えたのか。そういう可能性もあるが、しかしそういう事例は聞いた事がない。

俺は自分の体を見る。あれ、スカート?なんで俺がスカートをはいているのか。可能性はいろいろと考えられるが正確になことがわからなければ、対応はできかねる。もしやと思い胸を触る。あるとは言えないがいつもの感触とは違う。なんか違う。そして恐る恐る股のあたりを触ってみる。あれ?ないいつものところにない。一時どこかへお出かけしている可能性は否定できない。もう少し触ってみるがやはりない。

完全に調べたわけではないので、存在する可能性もあるが、現状確認できていない以上あれが存在していないことを否定することはできない。そういえば今の俺の声、個人的には普段に比べて高く聞こえた。


「どうかした」


少女が俺を不思議そうに見る。


俺は思わず部屋から飛び出してしまった





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