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アルタジア  作者: 桜花シキ
第8章 軍事国家サイモア
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救出③

 ルクトスは水竜の笛を吹いた。

 しばらくすると、水面下に黒い影が映る。それは大きな水しぶきを上げて姿を現した、巨大な水竜。他の水竜とは比べものにならない威圧感があった。

 その水竜は、ルクトスに迫るドクドリスたちを尾でなぎはらう。


「久しぶりだな──ザナルカス」


【海王たる我を呼び出すとは、それ相応の事情があるのだろうな?】


 海王ザナルカス──ルクトスの水竜だ。年齢はナルクルよりも上だというが、正確な年齢は分からない。

 ザナルカスはその巨大な頭をルクトスに近づけた。これだけでも、十分と言っていいほど海王の威厳が溢れている。


「分かってるくせに、聞くなよ」


 この状況を水竜、それも海王が知らないはずがない。ルクトスの反応に、ザナルカスは鼻を鳴らした。


【ふん……ドクドリスごときに手を焼くとはな】


「そう言うなって。俺も年だしよ……まぁ、それはお前も同じだろ?」


【一緒にするな。我は、まだ戦える】


「じゃあ、協力してくれよ。一応、俺はまだお前の主だぜ?それに──俺だけじゃ、大事なもんは全部消えちまうんだ……情けないだろ?」


 ドクドリスはルクトスを黙って眺めていたが、頭を戻すとルクトスに背を向けた。しかし、去ってしまうわけではない。迷惑そうな声で、ザナルカスは合図する。


【ふん──早く乗れ】


「ありがとな」


 ルクトスは礼を言うと、ザナルカスの背に飛び乗った。





「お前らしつこすぎだって!」


 倒しても倒してもなかなか減らないドクドリスに、イアンとガヴァンもだんだんと圧されていた。


「イアン!」


 ドクドリスがイアンのすぐ横を猛スピードで通り抜ける。間一髪、ガヴァンの声に反応してそれをかわしたイアンだったが、はずみで尻餅をついてしまった。

 そこを狙って、先ほど横を通過していったドクドリスが空中で回転し、イアンめがけて戻ってくる。


「やばっ……」


 あまりのスピードに、体勢を立て直す暇もない。イアンは覚悟して目を閉じた。

 ガヴァンが助けに入ろうと試みるも、ドクドリスに囲まれてしまう。

 絶体絶命──そう思ったとき、突然2人を襲っていたドクドリスたちが何かになぎ払われる。

 呆気にとられる2人の目に映ったのは、巨大な水竜に乗った男の姿だった。


「おい、怪我してねぇか!?」


「──ルクトス様!申し訳ありません……お手を煩わせました」


 それがルクトスであると気がついたガヴァンは深く頭を下げる。


「それはザナルカスに言ってくれ。まだ戦えるなら、あと少し辛抱な」


 それだけ言い残すと、ルクトスはザナルカスと共にドクドリスに向かっていった。ザナルカスが大きく口を開けると、凄まじい威力で水が噴射される。その水圧に圧され、ドクドリスたちはあっという間に吹き飛ばされていく。


「ふ~、助かったぁ。──ディラン兄さんとブレインはダウンしてるみたいだね。まぁ、ディラン兄さんは自滅だろうけど……」


 汗でぐっしょりになりながら、危機を脱したイアンが息を吐く。

 その様子を見たガヴァンは、イアンに駆け寄って尋ねた。


「お前は大丈夫か、イアン?」


「大丈夫ではないけど……まだ、やれるよ」


「今日は随分とやる気だな」


「本当はもう嫌だけど……こんなとこで諦めちゃ、グレンに示しがつかないからさ」


 イアンは立ち上がり、レイピアを握り直す。


「お前の言うとおりだな」


 いつになく真剣なイアンに刺激され、ガヴァンも気合いを入れ直した。


「父上とグレンが帰ってきたときに、レティシアが壊滅していては話にならない。私たちは、私たちの務めを果たす!」


 最後の力を振り絞り、ガヴァンとイアンは再びレイピアを振るう。

 徐々に、気味の悪いドクドリスの鳴き声が小さくなっているように感じた。


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