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アルタジア  作者: 桜花シキ
第3章 古代文明マクエラ
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同じじゃなくても

防御壁(バリアウォール)!」


 アストルは研究施設周辺に安全地帯を作った。これで、マクエラの人たち以外入れなくなる。


「皆さん、急いでこちらに集まってください!」


 クローリアたちは、マクウェルたちが避難できるよう通路を確保していた。

 集まってはくるものの、サイモアの攻撃をかわしつつなので、なかなか避難が進まない。


「ルル……このままじゃ間に合わないルル。アストル王子、ここの守りはルルたちに任せてサイモアを何とかしてほしいルル!」


「でも……」


「私も、一緒に守るの。だから、アストルは行って!」


 リエルナが傷ついたマクウェルたちを治療しながら言った。


「リエルナ、それじゃあお前がもたないぞ?」


 すると、リエルナは胸を張る。


「私、そんなにか弱くないの。アストルより、丈夫なの」


「随分な自信だな……分かった、任せるよ。さっさと、終わらせよう」





「リベランティス!正気に戻れ!……ちっ、聞こえてないか」


 暴走するリベランティスを追うロロは、必死に呼びかけていた。

 しかし、暴走状態のリベランティスにロロが追いつけるはずがない。ロロは息を切らしながら、なんとかリベランティスを見失わないように走る。

 リベランティスの意識は飛んでしまっているはずなのだが、海から攻めてくるサイモアの軍艦めがけて移動しているところを見ると、無意識のうちに仲間を守ろうとしているのだろう。

 とはいえ、うかつに近づいては危ない。

 しかし、急いで止めなければリベランティスはひとりで軍艦に突っ込んでいってしまうだろう。


「本当に、世話の焼けるやつだな。昔から、やんちゃなのは変わらない……」


 ロロは立ち止まると、何やらぶつぶつ言い始めた。


インに呼応し静止せよアドスタンドスティル!力ずくで止めさせてもらうぜ」


 ルル開発の魔導式。あらかじめリベランティスに刻んでおいた魔導印と呼応させることで、力を倍増させることができる。


 リベランティスの左腕に刻まれた魔導印が赤く光る。その光は鎖のように暴走するリベランティスに絡みついた。鎖は、なにやら魔法を公式化させたような文字や数字で形作られている。


「ガアァァァァッ!」


 リベランティスは、なおも抵抗する。


「くっ、おとなしくしてろ……」


 ロロは今まで何度か暴走を抑えてきたが、これで止まらないのは初めてのことだった。


「おいおい……結構本気で止めてるんだぞ………まずいな」


 その時、2つの黒い影がロロの傍を横切った。


「お前たち!」







「アストル、どこ行くの!?」


 クローリアが敵の攻撃をかわしつつアストルに駆け寄る。


「サイモアを止めるには、根源をたたかないと。あの軍艦とヴァグラ…それを止めに行くんだ。ここの守りは、ルルとリエルナが任せろって……俺もすぐ戻る!」


 走り出そうとするアストルをクローリアは慌てて呼び止める。


「ひとりで行く気!?そんなのいくらなんでも……」


「クローリア君!」


 ルルが防御用の魔導印を地面に描きながら叫ぶ。


「君もアストル王子と一緒に行くルル!シルゼン君も、ここはルルたちに任せて!」


「ルル!?俺はひとりでいいって……」


 ルルは首を横に振った。


「ひとりは駄目ルルよ。そうやってひとりで戦おうとして、リベランティス様は……早く行くルル!!」


 ルルは悔しそうに言った。


「……すぐ戻る!!」


 ルルの思い押されて、アストルたちはまず軍艦を止めに向かうことにした。

 サイモアの軍艦は、2発目を撃つためエネルギーを溜めている。アストルの脳裏に、シャンレルの光景が蘇る。ここまで、あんな風にされてはならない。


「クローリア、軍艦は何艘だ!?」


 クローリアは目を凝らして海を見る。


「……3艘だよ。今エネルギーを溜めているのは、こっちから見て一番右の1艘!」


「分かった!シルゼン、あの船壊せそうか?」


「おそらくな……やってみなければ分からんが」


「じゃあ、手伝ってくれ。クローリアは後方支援を頼む!」


 アストルとシルゼンは軍艦を破壊しに行ってしまった。ひとり残されたクローリアは思う。


(今の僕は2人に比べたら、力がない……アストルを守るって言ったのに、シルゼンの方が何倍も頼もしいや。僕は……)





「描き終わったルル!みんな、お願いルル!」


「はい、教授!みなさん、いきますよ……インに呼応し守りたまえアドバリアウォール!」


 ルルの弟子たちが、一斉に唱える。すると、ルルの描いた魔導印から光の柱が立ち昇り研究施設周辺を包み込んだ。これでアストルの魔法の代わりになる。それに加え、リエルナも防御壁形成の補助に加わった。


「これで、アストル王子たちがサイモアの根源を断つ時間稼ぎくらいにはなるはずルル」




──俺は、何てことを……俺のせいでマクエラが……。こんなことを望んでいたわけじゃないのに!


 不運にもサイモアに力を貸してしまったあの男は、茫然と立ち尽くしていた。


「俺は……何てことを……」


「君、何してるルル!?危ないルルよ!」


 放心状態の男は、目前にサイモア兵が迫っていることにも気がつかない。

 男に鋭い刃が振り下ろされる。


──一瞬、時が止まったような気がした。


 目の前に赤が広がる。

 男がそれに気がついたとき、小さな身体が倒れるのを見た。



「──サーネル教授……?な、なんで俺なんかをかばった!」


 ルルは、とっさに飛び出し男をかばったのだった。

 ルルを斬った兵士は、戦闘型の女性にふっとばされる。


「おい、アンタ!ぼけっとしてないで、早く教授を安全なとこまで運びな!」


「あ、ああ!」


 男は言われるままに、ルルを研究施設まで運んだ。青い顔をした教授を見て、弟子たちが驚いて駆け寄ろうとする。ルルは震える声で、それを止めた。


「動くな!みんなは……マクエラを守る……ことに集中……するルル」


 弟子たちは唇を噛みしめながら、魔導式の発動に集中した。

 ルルの顔から、どんどん血の気が引いていく。


「教授……マクエラがこうなったのは、俺のせいなんだぞ?俺なんか……」


「君の気持ちも分かるルルよ……君も……戦闘型のマクウェルたちを……守りたかった。戦闘型は……いろいろ辛かったはずルル。ルルたち頭脳型にも……何か力になれないか……考えた結果が魔導式だったルル。でも、それだけじゃ……力不足でリベランティス様は……。でも、ルルたちも……マクウェルを守りたかったのは同じルル。姿や力は同じじゃなくても……仲間を守りたかったのは同じルル……よ……」


 ルルは目を閉じた。

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