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アルタジア  作者: 桜花シキ
第3章 古代文明マクエラ
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マクエラ制圧戦

 シルゼンの言葉にアストルたちのみならず、サイモアの第四隊隊長だという彼に加担していた戦闘型マクウェルたちも絶句した。


「どういう……ことなんだ?お前が、内乱の話を持ち掛けたんだろう。戦闘型が自由を得られる国を、息子の無念を晴らそうと……俺は……俺たちは騙されていたのか?」


 先ほど彼と話していた男が声を震わせている。

 サイモア軍第四隊隊長は、笑ったままの表情を崩さない。この男は、間違いなく戦闘型マクウェルだ。なぜ、マクウェルがサイモアの軍にいる?


「いやぁ、戦闘型は実に扱いやすい……。注意しなければならなかったのは、サーネル兄弟くらいですか。感づいていたのでしょう?」


「……確信はもてなかったルルが、異変には気がついていたルル」


 男は手を叩く。


「さすがですねぇ。しかし、私もよくやったでしょう?ここまで気づかれなかったのですから」


 男は得意げに笑う。シルゼンが問い詰める。


「あなたがマクウェルだということを、司令官は知っているのか?」


「もちろん。あの方に隠し事はできないからねぇ……。グレゴルド君、君は私がマクウェルだということに気がつかなかったでしょう?隠すのは大変でしたよ。いつも重い鎧兜を身に着けて、耳やら尻尾やらをサイモアの人間に見せないようにしていたんですから」


ヴァグラ=ファルス (40) サイモア軍第四隊隊長


「グレゴルド君、君に会ったのは6年前だったかな?君がまだ一兵士だった頃……我々第四隊がフェルムンドを任されることになり、その見送りに兵士たちが集まったときだ。私のことを疑惑の目で見ていた青年がいたことを覚えているよ。それが、君だ」


「あの時は、なぜ無名だったあなたが隊長の座につけたのか疑問に思っていた。そもそも、マクウェルのあなたがなぜサイモアに?」


「うんうん、今から話してあげるよ」


 ヴァグラは話し始める。


「私がサイモアに手を貸すことを決めたのは、6年前のフェルムンド事件のときだった。私の出身はフェルムンドでね。ご周知のとおり、フェルムンドはサイモアに制圧された。私もそのときはまだ血気盛んでね。自分の力を過信して、サイモアに挑んだ。見事に、負けたけどねぇ。運良く、私は捕虜としてサイモアまで運ばれた。その移動中の船の中で、私は考えたのだ。私は負けた。だが、不思議と悔しさや怒りは湧き上がってこなくてね。代わりに、ただ憧れだけが残った。そうか、私は強い者の下で戦いたいのだと気づいたよ……。もっと私は自分の力が発揮できる場所で戦いたい…こんなちっぽけなところじゃなくてね」


「そんな理由で……サイモアについたのか?」


 アストルたちは、戦うことに執着するヴァグラに何か恐怖を感じた。仲間よりも、何よりも戦うこと。ヴァグラは戦いに憑りつかれている。


「ザイラルシーク様は私を使ってくれた。私がマクエラのスパイとしてサイモアに動向を報告すると言ったら、喜んで任せてくれてねぇ。隊長というのは名目で、実際はマクエラに詳しい私が指揮をとることになったというだけなのだよ。隊の中にも、私のことを監視している兵たちがいるし、四六時中通信機の携帯を義務付けられているけどね」


「何……通信機?」


 クローリアが顔をしかめる。


「うん、この会話も筒抜けだよ?第四隊からサイモアの司令官のところまでね。もうじきここを攻めにくるんじゃないかな?この騒ぎで、ここが手薄なうちに。──それから、アストル君。君がここにいることも、ザイラルシーク様に知れたわけだ」


「!」



──エネルギーチャージ完了、撃てーっ!


 聞いたことのある嫌な掛け声とともに、ドン!と大きな音がした。地面が激しく揺れる。


「ほら、来たみたいだ。せいぜい、暴れるといいよ。私も戦うのは大好きだからねぇ」


 ヴァグラは笑いながら、シュッと姿を消す。外に逃げたのだろう。


「くっ……とりあえす脱出しないと危険だ!みんな、早く外へ!リベランティス、大丈夫か?お前も早く逃げ……」


「アストル……オレから、逃げろ」


 床にうずくまるリベランティスはうめいた。リベランティスから、逃げる?どういうことだ?


「何言ってんだよ、ここにいたら危ない……早く……」


 ただならぬ様子に気がついたロロが叫ぶ。


「アストル!リベランティスから今すぐ離れろ、暴走だ!」


 それとほぼ同時にリベランティスがアストルに攻撃してきた。間一髪、アストルはそれをかわす。リベランティスは苦しそうにうめくと、壁を壊して外へ出て行ってしまった。


「追うぞ!」


 ロロが走り出す。それを追うように、アストルたちも走り出した。



 外は悲惨な状況だった。

 マクエラは炎に包まれ、マクウェルたちが武器を持ったサイモアの兵士に追われている。


 それを笑いながら眺めているヴァグラの姿を捉えた。ヴァグラは挑発するように、人気のない森の方へ消えていく。

 それとは対照的に、海岸を目指すリベランティスの姿があった。


「リベランティスのことは俺に任せて、兄貴たちはマクエラとあの戦闘狂を頼む!」


 ロロは返事も待たずにリベランティスを追う。

 残されたアストルたちにも、考えている暇はなかった。


「アストル王子!悪いけど、手を貸してほしいルル!」


「もちろんだ!もう俺がいるのは完全にばれたし、力の加減もいらないしな!」


「アストル、無理はしないように。僕も援護するよ」


 クローリアが銃を構える。


「サイモア……いつまで続ける気だ」


 シルゼンも大剣を抜いた。


「怪我してる人、教えて!私、治すから」


 リエルナは怪我したマクウェルたちを探しに走って行く。

 アストルも父から譲りうけたグローブをはめる。


「──いくぞ、みんな!」


バトル編入りました!



古の大陸編もそろそろ終盤です。

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