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アルタジア  作者: 桜花シキ
第1章 水上都市シャンレル
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神石

『アルタジア』

 そう呼ばれる世界があった。

 世界は6つの大陸に分かれ、3000年の歴史を刻む。

 3000年の時の中で、世界には多くの生命が誕生した。

 花が生まれた、虫が生まれた、鳥が生まれた、竜が生まれた──そして、人間が生まれた。


 そうした歴史の遠い記憶から、今まで共に歩み続けてきたものがある。


『神石』


 人々は、そう呼んだ。

 魔法の力を宿し、人間に富と幸福を与える石。

 人間の歴史は、常に神石と共にあった。

 神石は、常人離れした力を与える石。

 人間の歴史は、常に神石と共に発展してきた。


 いつしか人間は、その力が自らの力であるように錯覚し始める。

 その時、ふと黒い影が顔を出した。

 世界中の神石を手中に収めようと、戦争を起こす者たちが現れたのだ。


 欲しい、もっと力が欲しい──


 神石は、人間に富と幸福を与える石。

 神石は、人間に大きな欲望を芽生えさせる石──


****


 水上都市シャンレル 人口約1万人程の小さな島国だ。この島は人工島で、太古の昔、人々が人力で造り上げたらしい。神石が見つかるより前だという話だから、今からすればとんでもない話だ。今だったら、神石をちゃんと使える人間が10人もいれば1週間くらいで造れてしまうだろうから、多大な労力である。

──とはいえ、“ちゃんと使える10人”とサラッと言ってしまったが、それほど簡単な話ではない。神石を使うにしても“適性”というものがある。


 神石の大きさにもよるが、普通に見られる5cmくらいのもので通常1人の人間ができることといったら調理用の火を起こしたり、最低限の飲み水を確保できるといった程度である。

 これは“ただ使える”というだけで“ちゃんと使える”には程遠い。


“ちゃんと使える”人間──

 そういう人間は、先ほど述べたように建築をあっという間にしてしまったり(小型の家なら1人でも1日で造れてしまう)、はたまた干からびた湖に水を満たしたり、レパートリーが増え、出力も桁違いだ。“ちゃんと使える”人間にも差はあって、使う人間のポテンシャルに影響しているらしい。神石を使うには体力を消耗するので、力が大きければ大きいほど、それは激しくなる。

 10人いればシャンレルを造れるとは言ったが、それはかなり上位レベルの人間だし、それであってもまともに10人で1週間なんてことをしたら間違いなく致死レベルだろう。

 改善策として、神石を集めて力を増幅するといったものがあり、大抵の国はそうしている。


 しかし最近、それがどうも度を超えて、“神石の奪い合い戦争”なんてものが世界のあちこちで起こりつつあるようだが。


 その影響を、まだシャンレルは受けておらず、平和なものだった。

 島国の上、大きな力を持つわけでもない。狙われる対象にはなりにくかったのだろう。おまけに『水竜』という巨大な竜たちが国周辺の海を守っている。シャンレルの民は10歳になると1人1匹、水竜と契約する。それで一人前だと認められるのだ。契約するには竜に認められなければならない。基本的に力で見極められるのだが、必要とされる力の度合いは竜ごとに異なるため、相性の良さそうな竜を探しては試し、探しては試しをくりかえすのだ(過去には30回繰り返したというツワモノがいたらしい)。

 認められたら、その竜の牙を使って自分で笛を作る。その笛の音を竜は記憶し、その笛の音に限って呼び出すことが可能だ。プライドが高いため、一生そのひとりの人間にしか従わないのだとされている。


 その水竜の中の、次期海王の名を継ぐであろう竜にも契約者がいた。


 アストル=ウルヴァージュ=シャンレル。今年で18歳になる青年だ。


 彼もまた、次期シャンレルの王となる者だ。

 アストルは他とは明らかに違っていた。

 王クラスの水竜も一目見て認めるほどのポテンシャルと魔力──


 それにも関わらず、彼は神石を持ってはいなかった。


「何で、俺は神石がなくても力が使えるんだろうな……」


 少し気にはなっていたものの、特に問題はなかった。

 そう、問題などなかった。


 こんな戦争が起こるまでは──


初投稿になります。


慣れていないので更新は遅いかもしれませんが、気長に読んでいただけると嬉しいです。

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