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第4章:さらば

さー!行こうか?行かないか?どうするんだ、エンジェルちゃん!!?

(笑)


カフェで話し終わったら、ゆうこさんは私と、自分の車に乗って、ゆうこさんのお家に行っている。

私の自転車と鞄は、車のトランクに詰め込んである。

ゆうこさんのお家は、私の街から随分遠いみたい。


お婆ちゃんは、車とか持っていなくて、やっぱりあんまり会えなかったんだね。

孤児院には、お金がほとんど無くて、電話なども、無理だったんでしょうね。


どんだけ寂しかったんだろう、お婆ちゃん。



車に乗っている間は、お喋りはほとんどしていない。

でも、ちょこちょこ、ほんの少しだけ話をかけてくれている。


ゆうこさんは、一人暮らしみたい。

お婆ちゃんには、私といい、孤児たちといい、周りには毎日たくさんの人に囲まれ暮らしていたのに、ゆうこさんは、一人暮らしで・・・。


お婆ちゃんが貯めたお金について聞こうと思ったんだけど、やっぱりそれは聞かないでおこう・・・。いや、なんか、どうでもいいみたいな・・・ね? お婆ちゃんが、そんな事を私に知っ

てほしかったら、きっと私に教えてくれたんだろうと思うし。

うん。きっとそう。


『日本に連れて行ってください』と、カフェでゆうこさんに頼んだ時、『本当に、ほんっとうに行きたいのか?』とか、『全部、ちゃんと考えたか?』とか、そんな言葉を、いっさい聞かなかった。

ただ、『分かった。飲み物を飲みおわったら、私の家に行こ。そこで荷物などを整えて、航空に行く』と。


多分明日には、日本につくんでしょう。 そう、考えていると、私はドキドキしてて、なぜ

かお腹が少し痛くなってきている。


でも、もう、振り返れないんだ。

行くと決めたから、もう行くしかない。




さっきまでいた都会みたいなあの街から離れ、2時間も車の中で何もほとんど何も話さず、

私はただ、初めて乗っている車にして、初めての乗り物酔いを抑えようとしているだけ。

体がわりと弱いと、改めて思い知らせられた。



しかし・・・気持ちわるいなあ・・・。

あー、気絶しそうな気分になっちゃってきた・・・。

でも、頑張る・・・。



珍しい事ながら、久しぶりの頭痛になってしまい、休もうと思って目を閉じたら、いつの間か目が覚めた・・。

「あ、あ・・・寝てた・・・?」って、癖の独り言をつぶやいたら、ゆうこが笑った。


「あーおはよう」

バックミラーに映っている優しい笑顔に我に返った。


「あ・・・おはよう・・・」

って、まだ完全に我に返ってないみたい・・。バカ・・・。

でも、頭痛などが治ったみたいだし、いいや。


「もうすぐ着くで!」

車の窓の外を除き、まるで別世界のような都会の道路を走っているのだった。

見たことのない、本物の都会だった。

まるで上の空の太陽へと背伸びしようとしているかと思うほどの高いビルや建物や、アメリカ人だけでなく、日本人も韓国人も中国人もインド人も黒人の人々が、目の前の街を彩っている。


「あの・・・っ!この街、どこなの?」

「ん?ロス・アンゼルスやで!」

「ロ、ロ、ロス?!!」

いったい何時間寝むり込んでたんだろう・・・。


車のドアに手をしがみつけ、走っている車の速さで少しモヤモヤしているロスの景色を眺めている。

「夢みたい・・・・。ゆうこさんは、この・・・っていうか、ロスに住んでいるんですか?!」

「そうやで。びっくりしたんかい?」

「え・・、ええ・・・はい・・・」


ゆうこさんは微笑んでいるように聞こえた。だが、私は周りの、ロスの景色から目が離せなかったんだ。 

デカい・・・本当に、ほんっとうに、すっごくデッカい・・・。


しばらく経って、少し落ちついた。

「ゆうこさんは、どんなお家に住んでいるんですか?」


「日本育ちやないのに、よく敬語の使い方分かっておるんやな。芙由子と喋っていたと同じように、私と喋ってええやで」

と、私の質問に答えていただかず、ただやらわく、でも真剣な目で笑った。


そして、いつの間にか、車が止まった。

ついたようである。

ゆうこさんは、ドアを開け、降りた。

そして、窓から私をみている。

「エンジェルちゃんも早く降りなさいね?」


「あっ!」

ぼーとしてた私も、焦ってドアを開けて、車を降りる。

ドアを閉じたら、ゆうこさんはもうすでに私から離れ、カーパークの前のマンションへと行っている。

そして、こっちに振り向いて、『おいで』って手を振られたら、私は焦ってゆうこさんの元へと走る。


目の前のマンションの高さに、私は絶句している。

高くて、おしゃれじゃないけど、たくさんの人たちが住んでいそうな庶民っぽいマンションである。

中に入って、ロビーを通っている。

私はただ、ゆうこさんの後を追っているだけ。

周りには、ほぼ10人くらいがマンションを出てたり入ったり、ロッカーや郵便を確かめたりしている。

誰だろう・・・。


エレベーターに案内され、ゆうこさんの後に乗っていった。

スイッチを見たら、フロアは25階もあるみたい・・・。それはかなりびっくりした・・・。

ここに、いったい何人が住んでいるんだろう・・・。

私達は、21階に行っているのである。


とかぼんやりと考えていたら、エレベーターのベルが『ピン』と為り、自動ドアが開く。

目の前には、赤いマーブルの床と、白い壁のドアだらけの廊下がある。

ゆうこさんの後に、そこを通っていく。


一分もかからず歩いていたら、木製の白いドアの前に立っている。

ゆうこさんはポケットから鍵を取り、ドアのロックを開けた。

ドアを開けて、なんだか暖かそうな香りがゆうこさんの部屋からわたってくる。

何だろう?香水?


ゆうこの後に、部屋に入ったら、古びた感じでもわりと綺麗なお部屋である。

すわり心地よさそうなクリームのソファーとか、柔らかなピンク色の壁紙など、これは、物語の中の暖かいおばあさんのようなお部屋みたいで、見ているだけで少し嬉しくなってくる。


とかぼーと考えていたら、ゆうこさんはもうキッチンに行っていった。

「あっ・・・」

私もキッチンへと追い、そこにはゆうこさんがオーブンのノブをがしゃりと捻っている。

「お腹すいたやろ?夕飯作ってあげるから、あそこでゆっくりしててな」

「あっ・・・・」

って、何を言おうと思ってたのか、ゆうこさんに言われた言葉通り、リビングに戻った。


クリームのソファーに座り込み、予想通り、いや、予想以上にぷしぷしとした、すわり後腰のよさに、私はまるでのまれてきているのだった。


目の前に、部屋の向こうには、テレビがある。

初めて見ている・・・。といっても、ホークの家に行った時は、一度だけ見た事があるんだけど、実際に、つけたりしなかったし・・・。って、今もそうだけど、なんか・・・。


「テレビ、つけてええで!よかったら!」

キッチンからゆうこさんの大声が聞こえてくる。

「つけるって、どうやって・・・」

って独り言をつきながら、リモートコントロールを探している。これは、小説などでしか読んだりした事ないし、よく分からないのです・・・。

孤児院にはテレビなどなかったし・・・。


「あった!」

って、達成感に満ち溢れた独り言で、クッションの下に埋められていたリモートコントロールをやっと見つけた。


そこで問題がまた一つ表れてきた。

ボタンだらけの物を、両手に掴み、見つめている私には、どのボタンを押せば、テレビがつくのか、さっぱり分からないのである・・・。


とりあえず、やってみたいとずっと分からないだろう、と決め、色んなボタンを押してみる。なんとなく、一番上にある赤いボタンが何かしそうだねと思って、押してみたら、テレビがついた。

「やった!」

って、また達成感のあまり、思わず笑顔になっている。


私は、テレビの事とかが全く分からないから、今場面に映っているのはどういう物なのかさっぱり分からない。とりあえず、金髪の美人の若い女性が、いけめんの若い男性と喋っていて、どこからか分からないんだけど、お互いが話を交わしている間、ちょこちょこ笑い声が聞こえてくる。


「あはははっ!」

その二人の話を聞いてたら、思わず笑い出した。

コメディーか!

「あはは!なんか、面白い!」

って、また独り言。


この癖はまじで止めておきたい・・・。一人でいる時は大丈夫だけど、今はゆうこさんにも聞こえてくるかもしれないし、かなり恥ずかしい。


そこでゆうこさんが、キッチンから顔を出してきた。

「何みてる?」

「テレビ!」

って、純粋に答える私だけど、その返事にはなぜか、ゆうこさんが戸惑った笑顔になってしまっている。私、何か変な事言っちゃったかな?


コメディーが終わってすぐに、何かのいいタイミングで、美味しそうな匂いがしてきて、ゆうこさんが作ってくれた夕飯を持ってきている。


小さめな窓の側にある、木製のテーブルの上に、私がまだ食べたことのなさそうな皿に盛られた、熱そうな食べ物を置く。


テーブルの方へ行き、まさに私にはまだみた事のない、白と暗い茶色の食べ物が目の前においてある。

「あの・・、これ何は?」

「え?知らへんか?そりゃ珍しいなあ・・。ライスカレーやで。美味しいで?!」

「へぇー」

ライスとカレーは、聞いた事はあるが、今始めてみている。本当に美味しそう。


ゆうこさんが先にテーブルに座り、ハンカチを膝に誣いる。

「さぁ、食べな」

「あっ!う、うん・・・。」

この、ライスカレーの上手そうな匂いのせいか、ちょっとボーとしてしまいそうになっていた。

テーブルに座り、ゆうこさんが置いてくれたハンカチを、ゆうこさんと同じように、膝に誣いておき、フォークとナイフを手に入れ、食べ始めました。


「おい!『いただきます』は?」

って、笑顔で言われながら、ゆうこさんにプチと怒られた。

「あっ!す、すみません・・・。いただきます!」

「いただきます!」


「うわっ!本当に美味しい!」

本当にすっごく美味しい!初めて食べているのに、ハマってしまった気がして、すぐに全部食べちゃいそう。

「やろ?!ここのアメリカってな、美味しい物どんだけあってもな、日本料理を作るための食材って探しにくいで。ライスカレーぐらいは余裕で作れるけどな!」

「私、日本の料理は一度も食べたことないの・・・どんな味?」

「それはな、日本についてからの、お楽しみやなぁ!」

その言葉で、私とゆうこさんは同時に笑顔になった。


食べながら、色んな話をした。お婆ちゃんの事とか、ゆうこさんとお婆ちゃんの楽しい思い出話とか。私も、ゆうこさんに、色んな事を話した。ヨシオと、ミミちゃんの事とか・・・。

でも、なぜか、ホークや、今日出合った日本人の顔をしたあの男子の事は、話したくなかった。何だろうね。ちょっと恥ずかしいかも・・・。でも、もう二度と、あの日本人・アメリカンの男子には、会えないのね。約束は、行かないことになったら、また会うって、言ったので、これで、守る約束とかはもうないって事かなあ。


せっかく出合った人と、すぐにお別れするのが、あんまり好きじゃないね・・・。だって、そういうのって、寂しいよね。顔も声も覚えたし、楽しかった話も出来たのに、ね?

でも、きっとこれで、いいよね・・・?

出合ったばっかりの人のほうが、ずっと知っている人の事より、お別れが痛まないし、ここで終わりだとかって、きっとこれでいいよね・・・。

って、出合ったばっかりの人なのに、私って変かな?


食べ終わったら、ゆうこさんが私に、出来るだけ短く今夜の予定などを教えてくれた。

ゆうこさんは自分のスーツケースがもうすで用意してあり、私が、自分の荷物やお婆ちゃんのお金はまだ車のトランクの中にあるのを思い出し、選りに行こうとしたら、ゆうこさんは『大丈夫やで!急がんでもな。焦らんで、な?何があっても、こっちもお金も荷物もあるから。』って、安心の言葉を言ってくれた。

そこでまた、お婆ちゃんってなんでお金をあんなにたくさん貯められたか、って聞きたくなったんだけど、止めた。それはもういいって、決めたしね。


ゆうこさんは、荷物を持ったまま、私と一緒に航空へ行こうとドアを開けようとしたら、最後にこの部屋を見回す。

「あの・・・、この部屋、どうなるの?」

「大丈夫大丈夫。心配ないや。借りてるだけで、貸し手にはもう連絡したから、このまま置いていっていいってな。」

「あ・・そうなんだ。」

って、ドアを開けて、私が部屋を出たら、ゆうこさんも部屋を後にし、ドアの鍵をかけた。

「さようなら、アメリカ・・長い間、ありがとうな」

寂しさと嬉しさの混ざった表情で、ゆうこさんがお部屋と、アメリカにお別れの挨拶を言っておいた。

『さようなら、アメリカ』・・・・

その言葉を考えているだけで、私は泣きそうになっている。

でも、涙を抑えて、ゆうこの後にエレベーター、そして車へと行った。


車に入って、トランクを確かめたら、鞄がまだ置いた所にあるのを見て、ホットした。

いや、盗まれるわけないだろうけど、なんとなく、心配になっていたから。


ゆうこさんも車の運転者席に座り、エンジンをかける。

「行こ」

「はい・・」

ドキドキとしているのに、なぜかかなり落ち着いている気がする。 ちゃんと、行くと、決

めたからかな? 私は、何かをすると決めたときは、たとえ、やらない方がいいかなとか、

思ったとしても、何だか最後までやりたいと決めてしまうタイプなの。

さっきお腹がすいてたから、何か食べようと思って、食べようとしたら、お腹がもうすかなくなってしまったのに、とりあえず食べると決めたから、とにかく食べると、する時と同じように・・・。


車の後ろの席にまっすぐ座り、姿勢を正し、すでに動き始めた車の中から、黄昏にそまっている夜の街を、ただ見つめている。




航空には、夜の11時ごろに着くらしい。

今は夜の10時。

飛行機が飛び出すのは、夜中の1時ごろ。 遅いのを選ぶとけっこう安めで買えるって。

まあ、お金は心配なさそうだと思うんだけど、きっと日本についたら、色んなものが必要となりそうだからでしょうね。

私は、何も知らないから、とりえあずゆうこさんの言う通りにしよう。

そしたら、もう少し怖くなくなるから。


夜のロス・アンゼルスは、とても綺麗。

夜なのに、人ごみの中、いろんな声が聞こえてくる。知らない人の声ばかりだけど。

でもなんだか、安心させてくれる・・この風景。

証明や音楽もこの夜の街を輝かせていて、私からしては、まさに『別世界』のようなの。


ゆうこさんは、この風景にはもう、慣れているのでしょうね。



車の中が暖かいのに、なんだか冷たい風を感じる。

そして、お腹がまた痛くなっている・・・。







車が止まると、衝動的に私は窓の外を見る。

暗くてあんまり見えないんだけど、ゆうこさんは、躊躇わずにそくと車を降りて、外からトランクの中身を取り出す。

暗くて間違っているかもしれないけど、その瞬間、ゆうこさんが私を見て、微笑んでくれた気がした。

なんだか子供のように、何かをものすごく楽しみにしてるような笑顔だった。

いや、気のせい、じゃなかった・・・かな?


私も車から降りて、ゆうこさんが私に、私の鞄を渡してくれると、手首時計をみている。

「まだ時間があるみたいや。よかった」

と、自分のスーツと鞄を手に取り、車のトランクを閉める。

「あっ・・・車は?大丈夫ですか?」

こっちを見て柔らかに笑う。

「大丈夫やで。知り合いに貸してもらっただけや。もう連絡しておいたんでおいていってええって」

「あ、そうなんや」

え、私何いってる。思わず、初めて関西弁を口にした。

「関西弁?」

ゆうこさんが優しく笑っている。

よかった。ふざけているとか思われてなくて・・・。本当に思わずだったから・・・。

私って一体何なんだろう・・・。天然すぎる・・・。



ゆうこの後に、航空の正面へと歩いていった。

意外とこんな時間でも、回りがとっても騒がしくて、皆は急いでいるようだ。

私は、急ぎが苦手。どんな時でも、頭が痛くなったり、お腹も、すっごく嫌になってしまったり。何でだろう・・・。


中に入ったら、外よりも騒がしくて、どこに見ても人いっぱいでちょっと怖くなってたけど、ゆうこさんがすぐに私の手を取り、「こっちやで」って言って、私を連れてくれた。


「パスポート持ってるんやな?」

「は、はい。鞄に・・・」

本当に、本当にいくんだね、っていまさらながらピンと来てしまった。


カウンターの前に来て、背の高い黒髪のアメリカ人っぽいお姉さんがいる。

「Japan, first class please.Two adults」

日本行き。ファーストクラス。大人の二人分をお願いします。

チケット・カウンターのようだ。

ゆうこさんの英語と、アメリカン・アクセントの上手さに驚いた。

まあ、60年くらいアメリカに住んでいたら、英語などが上手くても当たり前かもしれないけど、私はただここで育ってきただけなのに、ゆうこさんはすごいな~、と。

ゆうこさんがこっちに振り向いてきた。

「チケット代は、私が払ってあげるから、芙由子にもらったお金は日本についたら有意義に使ってなさいね」

「は、はい。ありがとうございます。」

ゆうこさんはとっても真剣な表情をしている。

その所為か、私はちょっとビビった時のような、ドキドキがしてきた。

まあ、怖くは、あるとしても、決めた事だから、もう振り向かない。


カウンターのお姉さんが、封印の中にきちんとある空港権をゆうこさんに渡し、

「Thank you. Enjoy your flight」と丁寧に挨拶をした。

ゆうこさんが渡された空港権をしっかりと握っていて、また私の手をとる。

そして、私を見た。

「行くで」

「う、うん」

息を飲み込んだ。気絶しそうな気分がほとんど去ってきて、ただドキドキとワクワクの気持ちでたまらないのだった。

私は、ゆうこさんより5インチくらい背が高いと思うのに、私なんかより、ゆうこさんの方

がよほご高そうな気がする。私は、やっぱりまだまだ人生では未経験で、子供だって、強く思い知らされている。


騒がしい通路を通っていって、チェックインに着く。

私は、大きめな鞄しか持っていないので、ゆうこさんは自分のスーツだけを回転機においておき、私を飛行機への入り口へと連れていく。


入り口らしいドアの前にきて、少し太ったお兄さんが入り口の前に立っている。

ゆうこさんが彼に航空券を渡す。

私はただそれを見ているだけ。

「Thank you. Please enjoy your flight」

眠そうでも、元気な笑顔で客室乗務員も、挨拶をする。

そして、ゆうこさんが、私の手を取り、入り口へと連れていった。

そして、いつの間にか、飛行機の中に立っている・・・。

引き返されないところまで来たから、もう前へと進むしかない。

そう感じたんだ。


飛行機の中をすっと見回して、そこには荷物を席の上の棚に詰め込んだり、自分の席を探したりしている。

「ほら、空いてる席を探そう。」

と、ゆうこさんが私の手を離し、席へと行った。

私もゆうこの後を追っていく。



結局、隣に座れなかったのだ。

私は、知らない誰かの隣席に座っているんだけど、ゆうこさんは、どこかな・・・。

ちょっと不安になってきちゃった。

でも、不思議だけど、お腹が痛くなくなった。まだ飛んでいないからかもしれないけど、

なんか車とはまた違う空間みたい。


お腹が痛くないけど、心臓がハンパないくらいドキドキとしている。

ファーストクラスなので、乗り継ぎがない。

このまま、寝たら、明日目が覚めたら、もう日本にいるかもしれない。

そうだね・・・。もう、寝ていいんだね・・・。

でも、珍しく、もう11時過ぎてるのに、全然眠くない。

今、ヨシオと、ミミちゃんと、ホークは、何しているのかな・・・。

私の手紙、見つけたかな・・・。

泣いているかな・・・。

泣かないでほしい・・・

とか、言っても 今の私は・・・

やだ、こんなトコで 涙が・・・。

だめっ!隣には知らない人がいるし、涙は、目を閉じて、我慢するしかない・・・。


目を閉じようと思ったら、さっきの客室乗務員のお兄さんが現れてきた。

「We’ll be taking off soon. Please turn off all cell phones and laptop computers」

間もなく出発します。携帯電話やパソコンをお消しください。

私は、携帯やらパソコンなんか持っていない。

持っているのは、ホークからもらったイヤホンだけ・・・。

はぁ・・・みんな・・・、許してね。


私の席は、窓側なので、出発し始めたら、すぐに分かった。

怖くはない。不思議な気分。

ゆうこさんって何処だろう・・・。


そんな事考えたら、空へと飛んでいった。

窓から見下ろす。

あぁ、これが、胸に来る。

「First time flying?」

初めて乗ってるか?って、隣から聞かれてくる声にうろたえる。

「あ、そうなんで・・Yes. It is…」

隣席の人は、優しい顔をしたおじいさんだった。おじいさんと言っても、まだ40代っぽい。アメリカだと、これはまだわりと若いと思われているから、おじいさんと言うのが、ちょっと可笑しい気がする。

「You have very good English. You from Japan?」

英語上手だな。日本から来たか?

あ、そっか・・・。ここに来て、私は、人生初めて、日本人になった、か?違うかな?

「Ah…No..I’m from, America. Los Angeles. Only, a small town, not the City」

あ、いや、私・・・アメリカから来たんです。ロス。ですけど、都会とかではなくて、小さな街なんです。 

って、日本から来たって言えばよかったのか、分からない。日本にいた事あるかどうかも分からないし。でもまあ、確かに、ああ、国籍って複雑。要らない・・・。って少し自分に腹が立ってくる。


「Really?! I’m from Japan! Ahaha! Bet I don’t look it, huh?」

そうなんか!オレは日本から来たんだよ。見ても分からないだろう?って。

確かに。この人は、黒髪のアメリカ人らしい顔をしているお方にしか見えない。

「You’re Japanese?」

日本人ですか?

「That’s right. Only, my Dad was American, so I guess, ハーフ?」

そうだよ。あ、でも、父はアメリカ人だったので、ハーフって言ったほうがいいかな?って。

「ううん、日本人で、いいと思いますよ。そうで居たいのならば」

と、私が彼に見上げ、微笑む。

彼は嬉しそうに笑った。

「じゃあ、君は?」

彼の日本語の発音は完璧だ。もし目を閉じていたら、間違いなく日本人だと思うくらい。

まあ、実はそうだけどね、このお方。

「私?何ですか?」

何でしょうね・・・。

「君は、アメリカン?ジャパンイース?」

英語を使って、なぜかかっこよく聞こえたし、私は笑顔になる。

「え・・・ん~・・・。分からないです。」

「分からない? どうして?」

「それも、分からないんです・・・。ただ、日本人でも、アメリカ人でも、みんなと同じだと、思っています・・・。あ、ごめん、可笑しい話してしまったんですね。」

でも、本当に、そう、信じてるから、口にして、なんか、すっきりした。

「みんなと同じか・・・。確かに、それが一番かもしれないな」

と、話が終わった。

私って、何か変な事を言ってしまったのかな?

いや、でも、言って、よかったと思う。


彼は、笑っているのだった。


そして、しばらくしたら、もう一度話しをかけられる。

「君は、若いのに、頭いいですなぁ。」

「あの、先は、何か、変なことでも言ってしまったら・・・」

「謝るな。君は多分、間違ってないと思うんだよ」

と、優しく微笑んでくれた。

その笑みに、私も笑顔になった。


「そういえば、お名前は?」

「え、私、ですか?」

「あ、ごめん。失礼だったな。先に相手の名前を聞いてしまって・・・。俺は、隆介というんだ。」

「いい名前ですね。私は、エンジェルと申します。」

「綺麗だね、その名は。」

「ありがとうございます。」




そのちょっとした話でも、私は少し落ちついた。

今になって、窓から見下ろしても、真夜中の暗い曇り空しか見えない。

という事で、私はようやく眠る事にする。


隆介さんに、『おやすみなさい』と言っておき、窓に頭をあずけ、眠りにつく。

明日は、日本に着く・・・・。


どうでしたでしょうか~~~~?♥

個人的に、テレビとのハプニングがちょー面白かったんですけど(笑)

皆さんはどう思いましたか?

感想を、楽しみに待っておりまーす!♪

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