第1章:始まり?
エンジェルの今までを、どうぞ読んであげてくださいね☆
夜、8時。 冬だから空はもう暗くなってきて、私は部屋の中で描きをしてる。
描きが好き。「エンジェルにしか見えない物はきっとあるんだよ。それ描いてほしい」って、
お婆さんに言われたことがあって、それから毎日描きをしてる気がする。
言われた時はよく意味が分からなったんだけど、きっと、私にしか見えない物があるって
いうのは、私にしか感じられないものっていう事だったんだろうね。
こんな育ちの子だから、喋ることもそこまで必要じゃなかったんだけど、お婆さんに
日本の小説とかをもらって、漢字などを教えられた。
その小説を読むとき、「あぁ ここは日本か・・・」って思うときがあるんだけど、小説だから
真実かどうかは分からないよね。
寂しくそう、お婆さんに言ったとき、「どこに行ってもたいした違いはないんだよ。悪い人も、
いい人もいるように、エンジェルとデビルはどこにもあるんだ。もし違いがあるとすれば、それは
文化だけだろうね。この世のみんなはね、どんな顔したって、どこで生まれどこに育ってきたって、
みんな同じ人間だからな。目を閉じれば違いは何だ?」って10歳くらいの頃、真剣に笑顔で
言われた。
そういわれたら、なんかホットしたんだけど、何だか納得いったのに、さらに寂しくなった。
みんな同じ人間なのにね、って。
Love is blind(愛は項目)っていう言葉に似てるんだね。
『愛は項目』なのに、『一目ぼれ』っていう言葉もあるんだね。
ここに預けられる子供はみんな十字架をもらうんです。
私は二つを持ってるんだけど。
お婆さんがいた時、机の引き出しから古い十字架を拾って、私の目の前に見せてくれた。
「これは、あなたの原点から来た、十字架だよ。あたくしにはもう必要でなくなりそうで、エンジェル
ちゃんにあげるよ」って、あの時はなぜそう言いながらすごく悲しそうな目をしてたのか
分かっていなかったんだけど、お婆さんにも、終わりが近づいていたんだねって、今になって
分かってきた。
最期に話したときは、まるで偶然のようだった。
お婆さんは自分の部屋でベッドに眠ってた。
私は咳の薬と、ティーとお水を持って部屋に入った。
ドアのしめる音の所為だったのか、お婆さんはその瞬間起きて、
私に向かって優しく微笑んでいた。
「エンジェル・・・側においでな・・・」って手をゆるく振って、私を招いていた。
私はその瞬間、側にすわってお婆さんの疲れていそうな脹れた目に見た瞬間、
涙目が沸いてきちゃった。
手をとられ、私を見つけていた。
「おばあちゃんがそろそろ、原点に戻るんだよ」って・・・・半分泣き顔で、半分強がってる笑顔で
私に、今日が最後のお話をする日になるっていうのを、知らせてくれた。
そしたら、振動的にフッとお婆さんを抱いた。
「ほらほら、泣くな泣くな。」って、お婆さんが私の耳元につぶやいてた。「そんな悲しそうな
目をされてお婆ちゃんはどうすればいいと思うんだい?」。私は泣きやめなかった。
しくしくと、ずっと泣いてたら、お婆さんに放され、見つけられた。
「おばあちゃん・・・」って何も言うことは出来ずとも、名前を呼びたかった。
「エンジェルちゃん・・・、知ってる?始まりがあれば、終わりも必ずあるんだよ」って涙を我慢してた
お婆さんの顔を始めてみた。「・・・・っていう、人もいるんだけど、お婆ちゃんはね、終わりが大嫌いなんよ。だから、せめて今日は、最後にさせないね、お互い。お婆ちゃんはちょっとの間だけ原点に帰るんだけど、エンジェルちゃんが大きぃなって、夢を叶えた瞬間でもう、もう一同会おうね?ね?」。もう一度私の手を掴まれ、大きい笑顔で私をみていた。「夢を叶えた、輝いてるエンジェルちゃんは、お婆ちゃんは
何があっても絶対見に行くからね。」って言って、まどろっこしそうに姿勢を正し、私を抱いてくれた。
そして、もう一度耳元に「だから、今日は泣かないでね」。って、泣き声で言われた----。
エンピツを放し、ベッド側の窓から見下ろしてる。 都会だとか言っても、田舎だ。 静か過ぎる。
お婆さんが亡くなってから、さらに。会いたいな。
そのために、早く夢を見つけて、叶えてきて・・・。
でも、私には夢っていうのはどういうものなのか、よく分からない。
私には何ができるのかな?
たとえ夢を見つけたとしても、その夢は、もう一度お婆さん会わせてくれる道の夢になるか分からないなあ。
お婆さんが亡くなってから1年だ・・・。それなのに、まるで明日の明日も、賛美歌を口笛でふいてる声が聞こえてくるかのようなんです。
お婆さんは、歌が上手だった。 修道女になった前、日本で歌を勉強してた。とある状況で夢を捨てて、
アメリカにきて修道女になって、神様のために生きてきた。60年間も。
それで、私に歌を教えてくれました。
「エンジェルのボイスを、綺麗に育ていかなきゃね」って、ほぼ毎日の昼ごろに、歌の練習をする前に
言ってた。
お婆さんと二人で歌ってた時間は、ずっと私の宝の思い出になった。
ある日、歌の練習が終わったら、お婆さんに言われた。「詩を書いてみない?」って。「エンジェルが
感じてるもの、想ってる言葉を歌で聞かせてほしい」って。詩?書いたことなかった私は、いったいどういう事かけばいいのか、分からなかった。 作詞?そういうことだよね。でも私は別に、想ってる言葉とか、
そんなものなどがないと、思ってたから、どうしようもなかったんです。
「きっと、エンジェルちゃんにしか感じられないものがあるんだよ。それを、聞かせてほしい」って。
私にしか感じられないものって・・・・。
でも、それから数年が経って、なんだか分かってきた気がする。
この世の中のみんなは、みんな同じ人間。みんな同じ。 私にしか感じられないものがあれば、
誰にだってあるんだ、って。それでも私は空っぽに感じてる。いや、ただ、寂しいだけかな。
ここは、孤児院なので、もちろん、ときに人々は、子供が欲しくて、養子にしに来たりするんだけど。
「エンジェルちゃんはここの天使だ。ここから離れたくないでいてくれる限り、あたくしは決して、誰にも
渡さないから」って、お婆さんが私に安心の言葉を一度だけくれました。
だから、誰かがここの子供を養子にしに来たときは、お婆ちゃんが私を自分の部屋に隠してくれてた。
知らない誰かの娘の振りをして、生きていくことなんて、寂しそう過ぎなの。
離れたくなった。ずっとお婆さんと一緒に、ここにいたかった。
やだ・・・涙が・・・。
手で涙を吹いて、視線を窓から見える景色に見どす。お婆ちゃん・・・、いつ会えるのかな?
そよ風が部屋に入って、涙にぬれた頬が涼しくなった。まるで、お婆さんが、私の涙を、天国から欠かさせようとしてくれてるようだった。
ずっと、いつまでもここにいられるのかな・・・。修道女さん達は、お婆さんの言葉を受け入れて私を
守ることにしてくれたんだけど、なんか迷惑かけてるような気がして・・・。
でも、ここしか、私には、居場所などが、何処にもないんだ・・・。
私にしか感じられないもの・・・・
あるかな、そんなもん。
今の私の心の中には、寂しさと迷いしか何もない気がするんだけど。
そんな唄をつくっても、聴いてくれた人がいたとしても、その人はただ、寂しくなるだけなんじゃないかな?
描いているのは、知らない女の子だ。笑顔は描いていないけれど、悲しい顔にもしていないかな。
自分じゃないと思うんだけど、なんかこの子の表情と共感できる気がする。
胸の十字架を両手で軽く掴んで、ベッド側の電気をけして、暗い部屋を眺めてた。『目を閉じれば、違いは何だ?』。 目を閉じれば、真実だと信じていたものがすべて、何かもなくなる。側にいてほしい人は、
側にいてくれる。どこに行きたくたって、一瞬で行ける。
♪
いつの間にか、眠りについた。目がさめて開けっぱなりの窓から涼しい日差しが流れているのだった。
「さむっ・・・風邪ひいてないといいな・・」と思って、ベッドから上がって眠っている間蹴って落としちゃった描きの紙を拾った。 昨夜描いていた知らない女の子の表情は、今日は昨夜と違ってみえている。気のせいだろうけど、そんな気がした。
ルームウェアを着たまま、部屋を出て風呂場へと向かっていった。
私達の服は、ぜんぶマリー・シスターが創ってくれている。私のは、全部白や天国のような色にしてくれている。お婆さんがそう、マリー・シスターに頼んだらしい。『エンジェルはここの天使だから』って、よく言っていた。 私、時々お店に行くときに、ファッション雑誌とか見るんだけど、私にはあんまりにも無縁な物なのでね。個人的に白い服が好きだし。レースも好き。マリー・シスターにそう言ったときに、「じゃあこれからは白いレースをつけて作ってあげるね」って楽しそうに話してた。
なんか、一年間も日本語で喋ってない気がする。人に聞こえられたくない、時々の独り言を言うときを抜け。 そうだね、お婆ちゃんが亡くなってから、日本語で喋る必要なんてないもんな。 いずれ、日本語を忘れてしまうのかな、私。 なんか寂しいよね、それ。
「あれ、今何時だろ・・・?」って独り言をつぶやいた。 廊下には珍しく、誰も 一人もいなかった。私だけ。戸惑われたまま、風呂場に入った。「さっむっ!」腕を暖めようとしてごしごしと擦ってた。冬だもんな・・・。
風呂場の洗面台の上にかかっている鏡に映してる自分をみつめていた。この顔を作ったいわゆる両親は、今頃何をして過ごして、暮らしているんだろう。
釣り目で、白い肌。 顎には薄いほくろがある。そんな顔です。
髪の毛は、背中の半分ぐらいまで長くて茶色。
歯磨きして、顔を洗って、日常着に着替えて庭へと向かって行った。
誰もいない朝。まじで何時だろ、今。めったにないわ、こんな一人もいない朝なんて。
「みんな冬眠なのか~?」って少し笑ったけど、まあ一人の時間もわりと好きなのでいいんだけど。
孤児院の後ろのドアを開けて、大きい庭に出て行った。
薄黒い曇った空の下にあるこの街の人々は、まるでみんな寝ているかのようだ。
おそらく、眠りについていなかったのかな、私? まだ寝ているのかな? これって、夢?
とか寝ぼけて思った途端、郵便集配人がここに向かってきてた・・・・。
「Good morning,Angel!」って、満面の笑顔で、郵便でいっぱいの手をこっちに振った。
手振りを返した。
「Good morning, Berny」。ホットした。これは現実なんだね。夢じゃないんだって気づいた。
バーニー(Berny)は、私が小さいころからずっと、毎日ここに、郵便を持ってグッドモーニンって言ってくれている。あったかいな、この街の人たちは。
バーニーは家族のように存在するね、私の中で。
「Anything for us today?」って、『今日は何か来たんですかね?』って聞いたら、バーニーが自転車の前にかかっている袋から様々の手紙などを目を通し始めていた。
「Hmmm.....」。私が6歳くらいのときにアラフォーだっただろうバーニーは、何年経っても全然変わらない気がする。毎日毎日会ってるからかもしれないけどね。顔もそうだけど、なんか仕種とかも、全然。「Yup! Ahh...」何かあるっぽいのに、いきなりかなり悲しそうな目に変わってしまった。何だろう。「It's for Sister Judy」お婆ちゃんにって・・・。一年も経ってるのに・・。誰からの手紙なんだろう。
お婆ちゃんは本当は、芙油子っていうんだけど、ここに来て、シスター名をシスター・ジューディーに変えた。私にはずっと、”お婆さん”だけど・・・。
「もらっときまっ・・Ah、I’ll take it, thanks, Berny」英語で喋っている時のほうが多いのに、たまに日本語になってしまうっていう癖があるんだ。この癖に、バーニーが笑ってくれた。
手紙を私に渡してきて、手書きの書かれた住所の手紙が手の中にあづけられた。
「How are you, Angel? You, OK?」って・・・。最近どう?大丈夫か?って・・・。まあ、何て答えればいいのか分からないときは、何を言っても嘘じゃないだろう。
「Yeah....」って。大丈夫って、世界で一番の嘘みたいに感じてしまうのはなぜなんだろう?でも大丈夫って答えてあげなきゃ、ただ心配をかけてしまうだけなんだね。だが、バーニーにはさすが、この言葉が真実じゃないって見抜かれてしまった。
「If you ever wanna talk, I'm here every morning, OK?」。もし話したかったら、毎日毎朝ここに来てるからねって。ありがたいね、本当に。
「Thanks, Berny, really」。こういう時は、『ありがとうね』としか言えないよね。亡くなったのは自分じゃないのに、一番哀しむのはやっぱり生き残された人たちなんだねって、最近思っているんだけど。
あったかく微笑んでくれて、バーニーは自転車をのって、次の家へ向かって言った。 霧が回りを雲ってきて、ほとんど何も見えなくなってしまった。 目を閉じれば、違いは何だ?・・・。
中に入って、まだ誰も廊下を通って、自分の部屋に戻って行った。手紙を手の中につかんだまま。
部屋のドアをすっと開けて、しめて、ベッドにごっしゅんと座った。
手紙の後ろと表をしっかり目回して、誰からなんだろう・・・。お婆ちゃんがいた時にだって、手紙ってめったに来なかったのに・・・。
「開けていいかなぁ・・・?」。 とか自己疑問してたんだけど、私があけないと、ずっと開けてないままなんだね。大事なことも書いてあるかもしれないし・・とか独り言してから納得いった。
開け始めた。
中には普通の手紙があった。 だが、なぜか、日本からの手紙でもないのに、日本語で書かれている。
「芙由子へ」って。 ってことは、これは、お婆さんが修道女になった、ずっと前からの、友達からの手紙なんだね。しかも「さん」とかもつけてないし、きっと仲がよかったんでしょうね。
お・・・まさかの関西弁だ・・・。
『芙由子へ、
お久しぶりやな。元気かな? 何年間も、連絡せんで ほんまにごめんな.......
心配してたら、ごめん。。。やけど、いろいろとな、考えることがあったんだ・・・。
私ね、数年も悩んでて、日本に帰ることにしたんやぁ。。。・
怒らないで・・・。
でも、ちょっとね。お願いがあるんやけど・
芙由子もさ、そろそろ、日本に帰りたいんやない?昔もそう言うてたな?
アメリカはあったかいし好きやけど、やっぱり人は誰もが、いずれは原点にもどらなきゃやな、って。
私達は、もう若くはないから。
私にも、結局旦那も子供が、叶わなかったんやな、やっぱり。
私達が最初に一緒にここに来たとき、ずっと離れないでいようって約束したんだけど、やっぱりアメリカは大きくて、結局こうなったんやな。
最後の手紙には、芙由子には娘のような子がいるって言うたんやけど、日本人やって言うてたんやね?よかったらな、あの子も連れて、日本に帰ろうか?
どうかな?』
ぎりぎりで考えさせてあげる時間もあんまり無いけど、芙由子の街に近くにある街に少しの間いるから、
その時はとにかく、会いにおいでな?
住所はこの手紙の後ろに書いといた。
涙が出てしまった・・・・。
なんでかな・・・・。
お婆ちゃんが私のことを、娘のようだって言ってたとか知らなかったからかな?
この人は、お婆ちゃんが一年前に亡くなったって未だに知ってないからかな?
涙でもやもやとなっている目で読み続ける。
『それから・・・、まだ、あるやろな?帰る時のための、貯めたお金?
こっちは大丈夫だけど、足りるかな? もし足りなかったら、持ってるの全部持ってきて、
私に会いに来てな!
20日の昼3時ごろから待つわ。 夜11時ごろから空港に行くから、5時ごろまで待つね。
もし、帰らないことにしても、私達はずっと友達やから、絶対手紙ぐらい交わそうね。
ゆうこより』
ゆうこって、確かに名前は聞いたことがある気がするんだけど・・・。
お金って?それは初めてきいた。 日本に帰るっていう話も始めて聞いた。
お婆ちゃんが、私のために、ここに残っていったのかな・・・。
そう思うと、なんか申し訳ないっていう気持ちと、ありがとうっていう気持ちが混ざり合って、悲しく感じる。
本当はずっと、帰りたかったのかな・・・。
ごめんね、お婆ちゃん。そして、本当にありがとう。
なんだか、少しだけだけど、寂しくなくなった気がした。お婆ちゃんのことを、もう少し知れて、近くに感じてきた。 ゆうこにも、ありがとうと伝えたくなったけど。。。。
そう思った瞬間、衝動的に手紙をひっくり返して書いてあった住所を読んだ。
ここは知らない・・・・。どこだろう・・・。
知ってるのは、うろ覚えだけだけど、街の名前は知ってる、気がする。
ここからわりと離れている街だけど、自転車で行ったらつけると思う。
「あっ!」って昔にあった事が、やっと納得いった。
私が16になった誕生日がたったら、お婆ちゃんが私に「そろそろ、パスポー作ってトもらえば?」ってなぜ言われたか分からなかったけど、とりあえずお婆ちゃんの言うことは、私はずっと信じて生きてきたんで、パスポートを作ってもらった。
もしかして・・・、お婆ちゃんは 私を日本に連れて帰ろうと思ってたのかもしれない・・・。
きっとそう。きっとそうだったんだね!
お金・・・。本当に、そんなもんあるのかな?
って、私っていったい何考えてるんだろう・・・。
日本に帰るって行っても、私、日本なんかに行ったことがないし・・・っていうか、せめて、日本にいた覚えがないんだけど。
私には、ここしか居場所などが、何処にもないんだ・・・。
でも、ずっとここにいても、お婆ちゃんはもういないから、いても、ね。 ここは孤児院だから、結局、ここにいる子達はみんな、誰かに引き取られていって、周りには誰もいなくなるか、知らない人ばっかりになってしまう。
やだ・・・涙が・・・・。
どうして、この世の中には、何億人もいるのに、どうしてみんなはみんなを一人ぼっちにして、自分のことをさえも、人りぼっちにするんだよ!「訳わかんないんだよ!」って独り言で、しくしくと泣いた。
誰と話しているんだろう、私。バカだな。
一番誰かに聞いてほしい言葉は、自分にしか伝えられない言葉で、自分にしか分からない言葉ばっかり。
みんなこう、同じく感じてるのに、どうして誰にも分かってもらえないんだよ?「もうまじで訳わかんない!」って、再び叫んだ。
ってか、何だこの言葉・・・・ ずっと、こう 感じてたのか?私・・。
この言葉こそが、私にしか、感じられないものなのかな?
考えるのも面倒くさい。。。
もう、涙をふいてくれる人は、誰もいない。
自分で、自分をしっかりして、ベッドから姿勢を正して、手で適当に涙をふいた。
どうしようか分からないけど、やりたい事といえば、ゆうこさんに会ってみたい。
お婆ちゃんの友達に会って、お婆ちゃんの事を、教えてあげなきゃって、心重く感じた。
お金・・・・。 どこにあるんだろう・・・・。
っていうか、使うのかな?本当に、日本に、行くつもりなのかな?私・・。
っていか、その前に、ゆうこさんも、お婆ちゃんがいないのにこんな、出合ったことのない私なんかを、
日本につれてくれるのかなあ・・・。
分からない。でもとにかく、会ってみたい。 それからの事は、決める時が来たら決める。
お金は、もしあるとすれば、お婆ちゃんの部屋にあるんだろう。
お婆ちゃんが亡くなってから一年がたって、私を、頭の修道女以外に誰も入っていない部屋になってきてしまった。
そこまで大きい部屋じゃないのに、お金なんかを、どこに隠せるんだろ?誰にも、私にもバレずに・・・。
自分の部屋を出て、まだ誰もいない廊下を通って私の部屋から少しだけ離れたお婆ちゃんの部屋へと向かって行った。
お婆ちゃんはもういないから、ドアの鍵はずっとかかっていないままだ。
部屋に入って、懐かしくて愛おしい匂いがした。 バラ匂の香水? お婆ちゃんが自分の香水つくってた。こっそりとね。修道女は大体、美容などを無縁になって、神様のためだけに毎日を送るように生きていくはずなんだけど、お婆ちゃんはみんなとはちょっと違う風におもっていた。
「エンジェルは綺麗。それは神様からの報い物で、私はどうしても、その報い物を守るために色々教えてあげなきゃだと思ってるんだよ」って、一度だけ言ったと思う。
それで私に、香水の作り方とか、肌を守る方法などをいろいろ覚えさせてくれた。
お婆ちゃんの部屋の周りを見回すと、一年前と全然かわってない。
つまらない部屋だ。何も、綺麗なものなどないし、お婆ちゃんはもういないから、この孤児院の部屋とまったく違いない。
ベッドのシーツは柔らかなピンク。ベッドの隣には引き出しのある机がある。
十字架をなんとなく掴んだ。
「あそこかな?」って胸の十字架を掴みながら、まるでお婆ちゃんに聞いてたような気がした。
机の前に立って、引き出しを引いたら、空っぽだった。
ため息をついた。
ベッドにごろんと座ってもう一度回りを見回した。
「はぁー・・・」
お婆ちゃんだったら、お金とか貯めてたら、どこに隠すんだろ。
そんな事さえ分からない自分が少し悔しく感じてしまった。
ベッドの向こう側には、洋服だんすがある。
私がちいさい頃、その洋服だんすの中から、お婆ちゃんが、自称”秘密ボックス”を見せてくれた。
その秘密ボックスには、日本からの、いろんなものがあった。
ブレースレットとか、写真とか、いろいろ。
「エンジェルちゃんの原点は、ここだよ」って言われた5才ぐらいの私には、どういう意味かまったく分からなかったけど。。。ま、まさか?秘密ボックスって、まだそこにあるのかな?
急いで洋服だんすを開けて、そこにかかっている数枚の古そうな服をしゅらしゅらと探してた。
たしか、服の後ろに隠れてたはずだけど・・・うろ覚えすぎて・・・ちがうかな?
なかった・・。 探しても探してもなかった。
洋服だんすの前にことんとはいつくばって座った。
またため息。
そういえば、おばあちゃんには、隠れん坊とか勝ったことないんだったね・・・・。
ってか、一年も経ってきたし、ずでに他の修道女が先に貯まったお金を見つけて、救済などに寄付したかもしれないね・・・。普通はそうだろうし・・・。
そう思ったら、諦めようと思った瞬間、ちらっと洋服だんすの下に何かが見えてきた。
割れた床板だった。まさかと思うんだけど、もしかして・・・?
できるだけ静かに、洋服だんすを動かしてみた。
そしたら、洋服だんすが隠してた割れた床板があった。
そこに屈んで両手でゆっくりと割れた床板を開けてみた。
動いた・・・!
さらに開けてみたら、確かに何かが見えてきた。
古くて色の変わった封筒だった。
「これだ!」って思って、慎重に中に隠れていた封筒を引き出した。
わりとだけど、太かった。
開けてみた。
そこには、やっぱり、お金があった。
全部を出して、床に置いて、数えてみた。
「2,910ドルと、2万円・・・・」言葉に積もってしまった・・・・。
いつの間に?なんでこんなに?どうやって?
聞きたいことばっかりなのに、もう聞いたりできないよね。
それも、急に胸にぐっと来てしまった。
2万円って、わりと沢山なのかなあ?私にはよく分からないけど。
足跡が聞こえてきた。
みんなが起きているようだ。
焦って封筒をドレスのポケットに挟んで、中に手でしっかりと守ってこっそりと部屋を後にし、自分の部屋に戻った。
後ろにドアをしめて、ポケットから封筒を目の前に持ち上げる。
なんか、盗んだような気がしていやになった。
でも、私にはお金なんか少しもなくて、これがなきゃ、ゆうこさんに
会いに行けないから。
それでも、なんか罪悪感っていうか・・・・。
「パスポート・・・・」。
必要になるか分からないけど。でもとにかく探ておく。
「確か・・・、箪笥にあるはずなんだね・・・」。
ベッドの向こう側にある箪笥を探したら、やっぱりあった。
パスポートを両手で大事な宝のように胸に持ち抱いた。
去年、お婆ちゃんが死んだほぼ4ヶ月前に作ってもらった。
その時にはもう、分かっていたのかな、お婆ちゃん・・・。
なんで何も言わなかったのかな・・・。
知りたかったとか勝手に言うのは駄目かもしれないって思うんだけど、
っていうか、きっと本人は人に知って欲しかったら、言うのに、ね。
パスポートと、お婆ちゃんのお金を学校用の鞄に挟み込んで、しっかりと
鞄のストラップを結んで、ベッドに座った。
部屋を見回すと、不思議といろいろ思い出させられた。
ずっと、ずっとここにいた。
この孤児院と、この街しか、私には何も分からないし、自分だけで
ここを後にすることなんて できるのかしら・・・。
自信がない。
いまさら、自分の自信のなさに気づいてしまった。
でも、一人でいるっていうのは、やっぱり、一人で自由になにもかも決めて、
何があっても迷惑かけたりしないし、べつにどうなったって自分にしか
何事も起こらないね。とかぼんやりと考えてたら、なんとなく納得がいった。
「エンジェルちゃんはここの天使だ・・・・」
聖文書などをよく読んだ事があるんだけど、天使が一時的にツチに来たとしても、
いずれはみんなに「さようなら」を伝え、原点に帰る。
自分のことを天使だと思ってるかどうかは、考えた事がないから・・・。
でも、お婆ちゃんにもう一度会いたいから、天使になってみたいかも。
なり方が分からないけれど、なりたい・・・。
「20日か・・・」
ゆうこさんが手紙に書いた日時は、もうすぐだと思う。
「今日は・・・」って机の上にあるカレンダーをみたら、
「あ、明後日だ・・・」。
考える時間がない。行くか行かないか、決めるしかない。
とりあえず、行くとしたら、明後日の朝だし、今日は普通に過ごせばいいかもしれない。
明日は、お弁当と、お洋服などを用意し、孤児院の修道女さん達と、子供達への手紙を
書いて、明日になったら置いておいて、出ていく。
今日はいつもと同じ、普通の一日だ。
とりあえず、みんなは起きてるようで、私も、朝ごはんの準備の手伝いをしなくちゃ。
鞄を箪笥の中に隠し、部屋を後にした。
廊下を通ったら、まるで朝とはまったく違う場所にたどり着いたかのようだった。
台所から響く、朝ごはんの準備の音や、子供の叫び声や、「おはよう」を交わす声が
鳴り響いている。
毎日聞こえて、生きてきたのに、こんな平凡な朝を過ごすことはもうないとか思うと、
泣きそうになった。
でも、泣いてはいけない。
今日は普通にしよう。
台所のドアを開けると、修道女たちや、年上の孤児院たちがぱしぱしと、ご飯の準備していた。
私も年上のほう。一番若いのは2、3歳ぐらいの子供が7人くらい居る。
一番年上のは、私と、一個上のお姉さん。 その子は、もうすぐここを出て、ニューヨークに
行くって言ってるんだけど、私と同じく、ここが愛おしくて、早くには行きたくはないみたい。
その子と、うちより少しだけ年下の女の子と男の子が修道女さん達を手伝っている。
「お、おは・・・G, Good morning」。また・・しまった・・。
みんなに普通に朝の挨拶した。
「Ah, Angel! Good morning!」。
その子、Lucyは毎日と同じだ。朝っぱなから元気でいっぱい。
金髪で背が高い。私より5センチくらい背が高いんだ。多分、東京に行ったら、モデルになれる
と思う。かわいいし。
あ、ちなみに、私はほぼ168cm。日本人にしては高いほうらしいけど、こっちだと普通らしい。
私の顔は、みんなと違って、目立つ。それが、好きじゃなかったけど、お婆さんに「どんな顔をしたって、
どこで生まれどこに育ってきたとしても、みんな同じ人間だからね」って言われた時から、違っていても、
同じだなあ、って、思えるようになったんだ。
大体ね、ここにいる子たちはみんなアメリカ人だとしても、よく見れば、みんなはみんなと違う顔してるんだね。私とは別に、違いは無いんだね。
台所の洗面器へ行って、手を洗った。
「Angel, be an angel and toast the bread, would you?」
シスターLoranceが後ろからつぶやいた。 パンを焼いてくれる?って。
Be an angelって、いつものネタだ。自分の名前なんだけど、いい子にして、みたいな意味で言ってる。別に気にしないけどね、想ってくれてるんだなって気になるから、好き。
言われた言葉通りに、トーストを焼き始めた。
ここに居る子供は私を含めて、ほぼ24人がいる。24人の子供達は、なんかの理由で親に捨てられ、それなのに毎日すっごい笑顔で過ごしてる。
私もそうだったかな、ちいさい頃に。
親の顔を覚えているのは、一人しかいないかな。
7歳のころに、母親が逮捕されて、親戚とかがどこにもいなくて、ここに預けれた。
彼は今、12才。母親が刑務所から出てくるのはあと5年。
でも、いつもすごく優しい笑顔をしてくれて、自分の事などは、あんまり喋らないんだ。
そんな、強い彼を見ていると、自分がどんだけ弱いか気づいてしまう。
オーブンでトースト30枚くらい焼いた。みんなに一枚ずつ。
その他にはシーリアルとかもあるんだけどね。
朝ご飯の準備が出来上がり、みんなと一緒に多きなテーブルに座る。
椅子が数台あまっている。いつ新しい子が来るのか分からないからだと思うんだけど、
願いを言うとむしろこれから新しい孤児が増えないようになったらいいのに。
これからは世界のみんなに、愛が平等に与えられたらなと。
お婆ちゃんの椅子もずっと空いている。
「Angel, can you pass me the PP&J?」
私の隣には、7歳くらいの、アフリカン・アメリカンのかわいい男の子が座っている。
実は双子だけどね。彼の隣には、双子の妹さんが座っている。
前は、この二人と遊んでいた時、「Angel, are you from Asia?」って、アジアから来たの?って、
今隣に座っているこの男の子に聞かれたことがある。 あの時は二人はまだ5才くらいだったのに、
なんでアジアとか知っていたのか驚いたけど。
「Yeah, Japan. But I don’t remember Japan at all.」
うん、日本から来たよ。でも、日本の事は、な~にも覚えてないのって、答えたら、
「Can you give me a Japanese name?]
日本の名前をくれる?って、彼に頼まれた。
「Why do you want a Japanese name?」
どうして、日本の名前がほしいの?って、聞いたんだけど、そしたら彼は答えてくれた。
「‘cause, I want to be your brother.」
エンジェルちゃんの弟になりたいんだって・・・。そう言われたら、泣きそうになった。
そしたら、隣で一緒に遊んでた彼の妹に急に頼まれた。
「I wanna be your sister too!」
私もエンジェルちゃんの妹になりたいの!って。嬉し涙を我慢しようとしたけど、なかなか難しかった。
そしたら私は、二人に日本人の名前を挙げた。
「OK. You’re Yoshio-kun, and you’re mimi-chan.」
肩を軽く触って、名づけてあげた。 ヨシオ君と、ミミちゃん。 小説で読んだ人物の名前だけど、
似合ってる。
嬉しそうにつけられた名前を受け入れてくれて、それからずっとこの二人を、ヨシオと、ミミと呼んでいる。
「Here ya go, Yoshio-kun」
ピーナツ・バターゼリーを渡してあげた。
Yoshio-kunって呼ばれると、彼はいつも笑顔になってくれる。もう数年も続いて呼んでいるのにね。
ヨシオ君は隣に座って食べているミミちゃんにピーナツバターゼリーを渡した。
私の弟と妹を後にし、日本に行ったら、この二人はどうなってしまうんだろう。
でも、きっとね。ここにいても、ずっと一緒にいられる訳がないんだね。 いつしか、私のかわいい弟
と妹は、誰かに家族にならせられる。 そしたらもう二度と会えない私達の小さな家族は、思い出に
しか残らないのかもしれない・・・。それがとても苦しい。
やだ・・・涙が・・・・。
泣き顔を弟と妹に見せてはいけない。しっかりして、エンジェル・・・。
ぐんと目を閉じ明けて、涙を消した。
ご飯中はヨシオ君とミミちゃんといろいろな話をした。
たいした話はしなかったけど、ヨシオ君とミミちゃんの話しながら輝いている笑顔がどうしても大好きだから楽しかった。
もし、もしもだけど、日本に行くことにするとしたら、ヨシオ君とミミちゃんを連れて行けたらいいのにな。その願いは叶うわけにはいかないんだけど。分かっているけど、悲しい。
出会いは、いつか別れにあってしまうためだけの物なのか?
そんなの信じたくない・・・。
今日と明日は、最後の ここにいられる二日間になるかもしれないね・・・。
無駄には、したくない・・・。
皿とカップを荒いのために持ち歩くヨシオと、後ろ近くに兄の影に隠れて一緒に歩いているミミちゃんを見かけた。
「ねぇ・・・Hey, Yoshio, Mimi!」
私の声にばしっと気づいてこっちへ視線を向かってくれている。
皿を台所に置いておき、満面の笑顔で私の足元にきてくれた。
「What is it? Angel?」
何だ~?って、ヨシオが、まだ朝ご飯の最後の一口を噛んでいた。ミミちゃんはいつも通りに兄のすぐ隣に立っている。
「Wanna go to town today and play?」
外に出て遊びに行こうか?って。今日と明日は最後になるから、私、妹と弟と一緒に、この 大好きな街を回っていろいろ遊びたい。
「Really? I wanna go!」
行きたいって。嬉しい。うれしすぎて涙が再び登場しちゃいそうになっちゃっている。
「OK! Then go and get washed and we’ll get going, OK?」
よっしゃ!顔とか洗ってきな!すぐ行くね、って。
そしたらあっという間にヨシオとミミが目の前から消えていった。
私は皿洗いの手伝いを仕上げ、玄関でミミとヨシオを待っている。
一瞬で目の前に現れてきた二人は、コートと靴を用意してたけど、ぐしゃぐしゃに・・。
「ほ~らほら、あ、I’ll do it, OK?」
ミミちゃんのコートのチャックをかみ合わせた。
「Hola~ hola~ hola~hola~」
ヨシオが私の言葉を真似してた。ちょっと笑っちゃった。かわいい。そしたら妹もフフフって笑いかけた。
用意が出来、私はドアを空けた。
空けた瞬間、手をつないでて先に孤児院を出て走っていったヨシオ君とミミちゃんが街の道路にあっという間に立ってて、私を待っている。こっちを見て笑っていた。
ドアを閉めて、孤児院の前の小さな庭を通って、関門を閉めた。
「Where are we going?」
ミミちゃんが目大きく私に見上げてて聞いた。 ミミちゃんは私に似ている。顔とかじゃなくて、でも
静かであんまり喋ることが得意じゃないみたい。 だけど、一緒に人形で遊んでいる時は、人形越し
でも、たくさん喋ってくれる。
「I dunno. Let’s go to the shopping centre. Then we can go to the Lake and see if we can find some kind of souvenir」
分からない、とりえあずお店に見に行こう。そしたら湖水に行って、なんかお土産とかを探してみようかね、って言ったら、なんか想像以上に喜んでいそうな笑顔になってくれた。
そう計画した通りに、孤児院から少し離れているお店だらけの街に行った。
おしゃれなお洋服屋さんとか、カフェとかいろいろあるんだけど、私達にはお金がこれっぽちもないから、いつも見ているだけ。それとも、図書館に行くんだけど。
でも、今日は、お婆ちゃんの貯めたお金を、鞄に持ってきた。
最後の最後だから、何かをプレゼントしてあげたいとか思うんだけど、罪悪感もあるんだね。
「さて、Ah, How about we go ‘n eat some cake?」
ケーキ食べに行こうか?って。一緒にお店でケーキを食べに行くのは初めてになる。
「Onee-chan, have you got money?」
ヨシオ君は戸惑われていそうな顔をしていながら、嬉しそうに問った。ミミちゃんも、すっごい笑顔になってた。
いつだったか覚えていないけど、Onee-chanって呼ばれるように教えてあげた時があった。
「Sure. But, you have to keep this as our little secret, OK? 誰にm・・・, don’t tell anyone, OK?」
しゃがんでてそう伝えたら、言われた言葉に従って、笑顔も変わらずに、二人が私の両手をつないでくれた。
「さて・ぇ・・Let’s go!」
一緒に道の向こうにあるカフェへ歩きながら、ヨシオ君がずっと「sate sate sate~♪」って愛らしくまねし始めたら、ミミちゃんも兄と同じく歌いだした。
二人がカフェの外にあるテーブルに座った。私はカフェに入って、リンゴジュースを3杯とチョコレートケーキを一個注文して、テーブルで待っている妹と弟に戻った。
目の前でテーブルの上に現れてきたケーキにフッと目を輝かした。
「itadakimasu!」
って、珍しくミミちゃんが叫んだ。三人で両手を合わせてitadakimasu!って同時に言ったら、
ケーキを食べた。
明日は、明後日のための準備の日だから、今日はずっと 私の家族と一緒に過ごしたい。
楽しい一日にしてあげたい。
そしたら、明日は、バイバイを言うか、手紙で伝えるか・・・。どうすればいいのかな。
自分でもまだ、日本に行くか、行けるのか、連れてもらえるのか、分からないし、
直接に言っても、手紙で伝えても、何て言えばいいのか分からない。
あえて、聞いてみた。
「Yoshio-kun, Mimi-chan. Someday, you want to find a family, right?」
いつかね、家族を見つけたいんでしょう?って、聞いてしまった。
ケーキで口っていうか、顔がいっぱいになっている二人のさっと変わった表情から、
心に痛みが走った。
「You’re our family.」
エンジェルちゃんは僕たちの家族だって。
なんか、その言葉が心に染み込んでしまった。
「なんていえばいいんだろ・・あ Ah, emm, what about, a Mommy and a Daddy?」
ママとパパとか、欲しくないの?
「We wanna be with you」
エンジェルと一緒にいたい、って。
「I wanna tell you guys something, OK?」
二人はケーキを食べるのを止めて、入念に私の話を聞く。
「No matter what happens, OK? We will always be a family. So never be sad, OK? 」
何があってもね、私達はず~っと家族だからね。だから、寂しくならなくていいよ、って言ったら、なんかよく分からないような表情で私を見つめていた。
でも、これしか言えないよね。私だって、これしか何もはっきり決めてないし、これ以上戸惑わせないておこう。
ケーキを食べ終わったら、別のお店を探しに行ってる。
プレゼントを買ってあげたい。思い出になるようなもの。
オモチャとかは、どうかな?でもすぐ壊れちゃいそうで・・・。
ヨシオは私と右手を、ミミちゃんは私の左手を掴んでいる。すっごく小さな手なんだ、って
感じた。愛おしい・・・。
やだ・・涙が・・・・。
ここは、ショッピングセンターとは言え、どうみても田舎で、周りのお店たたちも、小さくてあまり大人数は同時に入れないくらいなんだけど、何気なく三人でミュージック・ショップの前にたどりつき立っていた。
ドアの隣で、ギターを弾いている少年がいる。まあ、少年っていうか、私より年上なんだけど。お店の息子さんなんです。 ちょっとした知り合いで、たまに只でお父さんのお店の
CDをくれるるんです。金髪とピンクでツートンしてる髪色で、目色は、覚えてない。すみません。
どうしてもね、CDをくれるの。嬉しいけど、私は、CDプレやーを持ってないので・・・。
でも、断るどころじゃないから、とりあえず受け取るね。でも、彼の優しさが好きだから、ちょっとだけ、CDをくれるのを期待してしまうようになったの。
目が合って、彼はギターを弾くのを止めた。その瞬間、笑顔になってくれて、ギターを座っていた椅子に置いといて、私の前へ歩いて来る。
目の前に来て、満面の笑顔で「Angel, good morning!」って挨拶してくれる。
「Hawk, good morning」
挨拶をかえした。ホークっていうのは、あだ名と思いきや、本当の名前です。お父さんが、
どこに行っても目立たせるような名前をあげたかったらしく、ホークって名づけたって。
ホークっていうのは、鷹っていう意味で、いわゆるスターっぽいと、私は思うんだけど、けっこう好きなの、彼の名前。髪型に似合ってるしかっこいいと思うね。
空が晴れてきて、ホークのまぶしい笑顔が目の前で輝いている。
あぁ・・・もう、合えないのね・・・。と、ぐっと来た寂しさに、涙目がわいているのを感じた。
彼は、その瞬間、私の瞳にひと時見つめ、涙目に気づいたかのようにちょっと心配してるような表情になっている。
でも、何も言わなかった。
「Say, Angel, I’ve got something I wanna give ya. Come in the shop, OK?」
何か見せてあげたい物があるんだけど、店に入ってな、ってこれもまたどうしようもさせてくれないくらいの優しい強引な願いなんだけど、相変わらずのホークがいい。相変わらずが好き。
ホークが店前の6フィートくらいの高さのドアの前に立って、ドアが閉じないように紳士のように、とっても高く手を伸ばしてドアの上を止めて、私と、ミミとヨシオが先に入るたまでずっとドアを手で開けたまま止めておいて、店に入ってる途中で彼の顔をちらっとみたら、普通に目が笑ってた。
「Thanks」
ホークにお礼を言って、お店に入った。ヨシオとミミがとことこと店の奥に冒険をしに行った。
ホークがカウンターの後ろに回って、カウンターの後ろに屈んで、何かを探している。
私はカウンターに近づいて、何を探しているのかと思ってちょっとのぞいてみたら、
ホークがちらっと私をみてやんちゃっぽい笑顔になって、探しに戻った。
「What is it?」
何~?って問いかけても、さすが教えてくれない。
「Got it!」
ちょっと達成感的な声色でみつけた!って言ったら、立ち上がり手にはCDを持っている。
でも、このCDは、売り物じゃないって気づいた瞬間、ホークが喋りかける。
「This got here by mistake.I think it’s from Japan!」
なんかの間違いで届いたみたいだよ。日本のCDらしい!、って言われた途端、そのCDを彼の手からそくと取って、目大きくジャケットを見つめる。
「す、すっごい・・・初めてみ、見てる」って、自分の、思わず日本語で喋っちゃうという癖
に気づかなかったくらい嬉しいっていうか、びっくりして夢中になる。
「Sugoi, isn’t it? I haven’t listened to it yet, but, I think it’s some band or something.」
すっごいだろ?まだ聴いてないんだけど、多分なんかのバンドだと思うよ。
そしたら彼がカウンターに腕を抱えて、私の顔に近く見つめているのを感じ取った。
頭をあげて、彼をみる。「If you like, wanna listen together? You free today?」
よかったら、一緒に聴かない?今日暇かな?って。
ずっと前からなんとなく分かってたけど、ホークは多分、多分だけだけどね、ホークは多分私のことを・・・ね。でも告白っていうのは、日本の小説でしかなかなか、聞いたことがないんだ。小説の中でしか、うちは恋愛とか一度もした事ないから、よく分からないので、友情だと決めておいていた。
だから、こう答えるしかない。
「OK! Ah, we’re goin’ to the lake soon so, wanna meet there? Can you bring you’re CD player?」
いいよ!あ、もう少しで私達は湖水に遊びにいくんだけど、あそこで会うのはどうかな?CDプレヤー持ってこれるかな?。
彼は私がそう言った瞬間、思わず笑顔になっている。
「Sure! I meet up with you a little later. I’ll be there in about 20 minutes, OK?」
うん!少し遅れるかもしれないけど、やく20分後であっちで会おうね。と、いう約束をし切って、私はヨシオとミミを呼び出して、三人でお店を後にして湖水へと行った。
湖水、『Lake Swallowtail(レイク・スワローテイル』は、ショッピングセンターから、自転
車で行ったら10分ぐらいで行ける。けっこう近いけど、私は子供の二人を自分の自転車に乗せて行ってるから、ちょっと時間が延びるね。
ついてから、いまさら気づいたんだけど、結局プレゼントは買わなかったんだって、すごく虚しく心に染み付いた。
そんな事を知らず、湖水を目に付いたヨシオとミミちゃんは、いつのまにか自転車から勝手に降りてきて、湖水側へと走っていった。
私も自転車から降りてきて、大きいリンゴの気の下に自転車を置いておく。
「Find something nice for a souvenir, OK?」
なんかいい物探してみてね!って、すでに湖水の水の中に入念に手で探しているヨシオ君とミミちゃんに叫んだ。
私は、彼らの探しに手伝いしようと思い、レースのドレスと、羊毛のジャケットの袖を捲ったら、後ろからホークの声にかけられた。
「Hey! 」
焦って来たかと思うくらいの疲れた息をしていて、自転車を柵の側に置いといて、私の元に歩いてくる。
「Hey! 」
なぜか、目の前に立っているホークの姿に、心がぎゅっとした。もう2年ぐらいの付き合いなのに。気のせいか、これ。
ホークの手には、CDプレヤーと先ほど見せてくれたCDを持っている。
よかった、当たり前だけど、持ってきてくれて本当によかった。早く聞いてみたい。日本の音楽を聴くのが初めてになるし、なんかドキドキしてきた。
ホークも、私をみていて、何て話せばいいのか分からないようだ。これは珍しい。いつもなら色々話してくれるのに。
彼は背が高く、私はここの人にしては普通っぽい。彼は私より1フィートぐらい高い気がする。これも気のせいかもしれないけど、そんな気がするね。
手の中に持っているCDに至っている私の視線に気づいたか、ホークにさろわれる。
「Ahh, you wanna listen to the CD? 」
そっかそっか、CD聞きたいんかい?。そう言われてぱっと彼の表情を見上げた。
相変わらずの満面の笑顔。この笑顔は、みんなに見せてるのかなあ、それとも・・。とか思っていたら、彼はすでにリンゴの木の下に座ってて、私に「おいで」の手仕種をしてて招いていた。
それに答えて私は彼の側に座りにいった。
私は、日本で育ったってわけじゃないからか、せめて小説で読んだ女の子の人物と同じように、そんなにシャイってわけじゃない。私は、小説で読んできた女の子のキャラクターだったら、好かれているかなあっていう気がする男の隣に座らないと思う。
でも、これがまた、小説で読んだものだけで、何とも言えない。
ホークはCDプレヤーを開けて、側に置いておいた。そしたら、手の中に持っている、非常に気になってるCDのケースを開けた。それがワクワクと来た。
ケースからCDを取り、ケースを私の手に渡してくれた。
『BLUE CALLING』っていうバンド名が書かれている。 聞いたこと無い。って、日本の
アーティストは、一度も聞いたことがないんだけど。
「Here goes!」
彼も、ドキドキしてるような声色で、「かけるぞ」って言って、プレヤーのスピーカーの音量を上げて、プレヤーのCDの入り口を閉じ、リンゴの木に背中を持たせかけ、目を閉じた。私はそれを見たら、膝を抱えて、彼と一緒に目を閉じてCDに耳を済ます。
出だしから、今まで聴いた事がある曲とは違うのを感じた。歌詞も、曲調も、光っているような感じがして、私は、周りを忘れてしまい、CDプレヤーから流れてくる音に全身全霊を入り込める。
ボーカルは、男の人だ。 でも声がとても綺麗で、歌詞も、なんか自分の心に響く。
閉ざした瞼の下から、涙が沸きこみ始めている。
次の曲が始まり、とても激しくて、最初のバラード系の曲とはまったく違う感じ。
でも、これにもまだ感動し、いつの間にか自分の体がリズムにのって動き始める。
そのまま、あっという間に、CDが止まった。
私は目を開けて、閉じていた目の後ろに流していた涙の所為で視線が燃やしている。
「THAT WAS JUST AWESOME!」
ホークが大声で「すっげぇ~!!」って叫んで、私はそれで自分に帰った。
ホークを見たら、すっごく盛り上がった笑顔になっている。初めてみた。
そしたら彼は、私の顔を、涙で濡れた顔をみつめた。
「Wow… I guess the lyrics were pretty good too? You OK?」
うおー・・歌詞もけっこうやばかっただろな?大丈夫?って、気持ちの盛り上がったままでも、気をかけてくれてるような顔で私をしっかり見つけてくれる。
自分で、指で涙を拭いて、うなずいた。言葉が出せない。心には、未だにこのCDの歌詞と、せつなさも喜びを感じさせてくれるメロディも響いている。
本当に、すごかった。
頭がまだモヤモヤしたまま、ホークがゆっくりと私に近づいている事に気づいた。
どきっと退いて、近づいてた彼の顔から逃げた。
キス・・、されそうになった。でも、お互いも、何もなかったようにしている。
「Say, Angel? I’ve got something I wanna ask you…」
あのさ、聞きたい事があるんだけど・・・・。って、ひょっとしたら、何が聞きたがってるのかもうすでに分かってる気がする。彼はまたほんの少し、私に側に近づいた。
「I wonder if you’d mind….」
「イエス?」
ドキドキしてて日本語の発音になってしまった。
「Singing in my band? I wanna see you sing on stage」
え・・。エンジェルに、俺のバンドに歌ってほしいって。ちょっと、何だこれ。ホットした気持ちと、ちょっとがっかり?したような気持ちになってきた。
「Your band? Me? 」
私、人の前で歌う事は、一度もやった事がなくて、考えるだけで自分の自信のなさにびびるくらいなんだ。
「Yeah! I’ve heard you sing before, when Sister Judy was here…」
そう!前に聞いたことあるんだよ、シスター・ジューディーがいた時・・。その言葉でちょっとの間止めた。
「Hawk, I don’t think I’m cut out for singing on stage. I’m sorry…」
ホーク、私、あんまり、ステージとかで歌えるような人じゃないと思う、ごめんね・・・。
明後日からは、もう二度と会えないとか、言えるわけないんだけど、これも断ってる理由の一つ。
「Then, can I ask you one more thing?」
じゃあ、もう一つ聞いていいかな?って。 何だろ・・・。鼓動がまた走ってくる。
「OK…」
ホークは前よりももう少し私に近づいて、耳元に息が触れてくる。
「Will you be my Girlfriend?」
か、彼女・・・って? そういわれた途端、反射的に前へどいて避けた。
彼の目に見つめて、とても優しい茶色な目が私の心を差し出した。
「あ、Ah… I… Em…えっと」
とかしか出せなくなった。
私、明後日から・・・ 明後日から・・・・。って言い出しそうになっている。
どうして今なの?!どうして今日、この日に?どうしてずっと前に伝えてくれなかったの?
「How do you say, “I love you” in Japanese?」
日本語だと、「I love you」って何ていうの?って・・。
私は、頭の中が空っぼになってしまって、何も冷静に考えられなくなっている。
「Aishiteru…」
って、ホークの質問に思わず答えた。
「Aishtelu」
って、熱く触れてくる息で耳元が熱る。
キスしに近づかれて来る。
だめだ、キスの仕方さえもさっぱり分からないこんな子供のような私だし、もう・・ただだめだ。でも、ホークはとても大事な友達・・・私、自分の気持ちやこれからどうなることとか、まだ全然分からないんだ。
ずっとお兄さんのように思ってたホークのことは、急に異性のように感じてくる。
でも、やっぱり、今は・・・だめだ。
「あ、ah, wait…」
待って。 ホークは少し私から引いた。
「Yoshio and Mimi.…」
ヨシオとミミちゃんが・・・。っていう言い訳をつけた。本当だけど、それでも、言い訳だ。
ホークは納得してくれたような顔をして、後ろにある空まで高く立っているリンゴの気にもだった。ホットした。
しかし、空気が一気にに変わって違和感が回っている。
いやだなぁ。ホークと一緒にいるといつも楽しいのに、何だこの違和感。最悪だ。
しばらくそのまま、しんと沈み込んだ空気の中で何も話さずにいたら、私はようやく言葉を口から出せた。
「So…, I’m goin’ to go and help them find a souvenir」
草から立ち上げ、ドレスの後ろから草をシューシュー払いのけて、ホークに一瞬だけ微笑んで、ヨシオとミミを探しに行った。
これもまた少しホットした。
少しだけぼんやりと歩いたら、ヨシオとミミは湖水の向こう側で小石などを集めているのが見えてきた。湖水の水量は高くないから、心配は必要ないと知ってるんだけど、それでも心配しちゃうよね。
私がもし、いなくなったら、こいつらはどうなるんだろう・・・。
とか考えてたら、ヨシオとミミが私を見かけ、こっちに向けて笑っている。
手を振った。
「おーい!How’d you guys get over there? !」
本当にどうやって、湖水の向こうを越えられたんだろう。ずっと見守っていてあげたいのに、やっぱりそれは、私にはできないかもしれないよね
「Angel! Look what we’ve found!」
ヨシオが自分の声帯の強さを知らず、大声で私を呼んだ。
何か見つけたみたいだ。
少し近づいたら、ヨシオとミミが靴を脱いで湖水を越えたのが分かった。
仕方なく、私も靴を脱いで湖水側の側において、湖水の中に足を踏み出す。
ショロンショロンと、浅い湖水を通って行った。
向こう側にたどり着いたら、ミミちゃんが自分のドレスを掴み上げていて、たくさんの小石や花を抱えているのを見た。ドレスが少し汚れている。行く前に洗ってあげるしかないかも・・。
「Angel! Look! I found a pink and red pebble in the lake! It looks like a heart! See?」
ミミちゃんがすごく幸せそうに手を伸ばし、私の目の前に赤くてピンク色の、ハート形の小石を見せている。
本当にかわいい。
アフリカン・アメリカンだからちょっとした訛りで喋るんだけど、それも可愛い。
屈んで、ミミちゃんと目通りに座る。
私達は、家族だ。どこで生まれたとしても、これは絶対だ。
「Wow! It’s so pretty! Let’s take this as a souvenir, OK?」
これをお土産にしようね。って言ったら、二人とも同意してくれた。
私からじゃなくても、この小石が、思い出になってくれるといいな。
もし、もし本当に、ゆうこさんに出会ったら、本当に行くことになったら、いつかは絶対に
この街に帰る。その時は、ヨシオとミミは何歳になっているんだろうね。
泣きそうになっていると思ったら、後ろからホークの声が聞こえてきた。
「HEY! You guys found something already?!」
お前らなんか見つけたか?って。
さっきのハプニングで、初めてホークの声で心がいやな感じに舞い回った。
でも、まるで何もなかったかのように、私はホークに笑顔で振り向く。
「Yeah! Come look!」
うん!これを見て!って、今まで全然知らなかったけど、私はわりと演技力あるみたい。
私の言葉道理に、ホークが靴を脱き湖水を通ってきて、私たちの前にたどりつく。
「Hawk! Look! It looks like a heart!」
ミミちゃんが珍しく先走り嬉しそうに話し出した。
ホークがミミちゃんの手からハート形の小石を取り、じーと見てる。
「Wow! This is really cool! 」
ホークが子供のために大袈裟に満面の笑みで笑ってるんだけど、やっぱり優しいね。
チャラいけど・・・。
その瞬間、ホークがちらっと私の目に見上げて一瞬だけ見つめた。ドキっときた。
だめだ・・・。
「Then…, let’s go home? OK?」
帰ろう?って言ったら、ホークがもう一度私を見た。なんで・・・?って思ってるかのようだった。ちょっといやだな・・・でもこれじゃ駄目だから、仕方ないよね。
好きかどうか分からない。っていうか、友達としては、とても好きだけど、そういう風にホークの事を、想った事ないから、自分の今の気持ちが、さっぱり分からない。
ホークが立ち上がって、私を見ている。
「Then, I’ll walk you home.」
送ってあげるよ。って。相変わらず紳士だね。そこが好きかな。でもそれは、優しい友達だからだと思うんだね。
とりあえず・・・。
「Thanks.」
私も立ち上がって、ハート形の小石をドレスのポケットに挟み込んだ。
ミミとヨシオは、帰りたくないよーって言ってるような凹んだ顔をしている。
「ほらほら・・・Don’t make that face. It’s soon lunch time.」
そんな悲しそうな顔をしないの!もうすぐ昼ごはんの時間だよ。
私の思わずの日本語に、ホークがふふと笑った。
「Holahola! If Angel says you gotta go home, you gotta go home.」
エンジェルちゃんが帰ろうって言ったら、帰るんだぞ。
ミミちゃんとヨシオがため息をついて、うなずかずに、ミミちゃんが私の手をとって、同意してくれた。ホーク、ありがとうね。
ホークがヨシオの手を取って、そして・・私の手も・・。ドキっとした。
柔らかな笑顔で、私を見ている。
「The lake’s a dangerous place to walk, ya gotta hold hands when ya cross.」
湖水の中に歩くのが危ないよ?手をつないで通らなくちゃ。
私の顔が赤くなっているのを感じた。
何も言わず、4人で手をつなぎながら湖水を通る。
元にいた所に戻ったら、びしょびしょの足で靴を履いて、ミミちゃんだけは履くのに嫌がった。
自転車に戻っていく間に、何度かホークと一瞬だけ目が合ってた。
何も言わず、ただ言ってしまうっていうのは、いけない事って気がする。
でも、私の、これからの計画を言ってしまったら、どうなってしまうんだろう。
そこも不安なんです。
自転車を乗ってる間、私の自転車にはミミちゃんで、ホークの自転車にはヨシオが乗ってて帰っていった。
孤児院の前に至ったら、ミミちゃんとヨシオが先に中に入って行った。
私とホークだけ、二人で孤児院の前に居る。
「じゃあ、see’ya…」
ホークからそむけて、孤児院のドアへと向かう。そしたら、後ろから右手が掴まれた。
無理やりに振り迎えさせられ、ホークと私はわずか数インチの距離だけで顔が合わせている。手を捕まえたまま、上げさせられ、私の手の平の中に何かを挟んだように感じた。
何だろう・・・?
そして、私の左手にも、平たいものをくれた。
右手を離さず、左手首を掴んで、上げさせられ、私の手の中に挟みこんだ、『BLUE CALLING』のCD目の前に見させられている。
「Let’s listen to it again together tomorrow.」
明日また一緒に、聴こうよ。って・・・・
顔が熱くなっている。
たった数インチの距離で目に見詰め合っている。これが、人生初めて。
右手と左手首も放され、私は孤児院の中に入っていった。
振り向かわずに、後ろにドアを閉じる。
息が速い。
右手の平を開けた。
中には、新しいイヤホンがある・・・・。
分かってたんだ・・。
ずっとずっと、ここ数年CDをくれてるのに、
イヤホンとか持ってないとかを、ずっと知ってたんだ・・。
でも、いけないよね。
これが、いけない。
私は、ここに残っては、いけない。
かな?
此処は、お帰りできる場所でもなくとも、ずっとここしか、居場所とかがなかった。
今の私には、何があるの?今の私には、誰がいるの?
ヨシオと、ミミと、ホーク・・・。
でも、ここに残っても、私には、何が出来るんだろう。
でも、たとえ、日本に行っても、誰もいないでしょう。私には、知っている人は、誰もいないでしょう。今脳裏に新しい悩みが浮かんでくる。
日本って、どこ?
お婆ちゃんが、帰りたかった場所・・・
でも、お婆ちゃんはもう、帰れないんだね・・・
もし、もう一度会えるとすれば、日本に行くしかないかもしれない。
どうやって会えるかどうかは分からないけど、お婆ちゃんが、もう一度会おうって約束してくれたから、いつか必ず・・・
決めた。
どうでしたか?
間違いとかありましたら、本当にすみません><
頑張ります!☆