4枚目『掴み取ったもの』
リハビリの方法を知らないアホが書いた結果がこれだよ!
私の体が動くようになって、リハビリが始まった。
腕全体を動かす大きな動きから、次第に小さく繊細に指を動かすように。
義手を動かす度に、肩口から、胸、腰までが痛み、足がよろめく。
私の新しい腕は思うように動かない。少し前までは何不自由なく、何も意識せずとも動かせたはずの腕が、今となっては自分の体に重さとなってのしかかる。
私の努力をあざ笑うように腕が変な方向に動く。予期せぬ動きに肩が痛み、私の体は傾く。咄嗟に先生が支えてくれる。
「大丈夫?」
そう聞かれたので、頷いて自分の足で立つ。先生は、私の肩に手を置きながら、
「千沙ちゃん、がんばって。動くよう様になってきたんだ。きっとまた自由に動かせるようになるよ」
そう言って励ましてくれる。私はそれに小さな声で、でも聞こえるように「はい」と答えた。
そして、私はまた腕を持ち上げる。そして、指を開いて、閉じる。
この動きをするたびに思う。義手を手に入れて、私は何かを掴めたんだろうか。それとも、これから掴めるのだろうか。
実感も無く、私は不安になっていく。
そんな時先生が言った。
「じゃあ、このボールを握ってみて」
そう言って、野球ボール大の柔らかそうな球をこちらに差し出してくる。
ほんの少し前なら、何の問題もなく掴んで、放り投げたりしていた物。それすら今は掴めるかどうか不安になる。
義手を動かすのをためらう。私の表情に何かを感じ取ったのか先生が、
「大丈夫?今日は止めておく?」
と聞いてきた。そうしたかった。もう少し動くようになってからの方が良かった。
――――――もしも掴めなかったら。
そんな気持ちが先行する。けれども私は、その気持ちを抑えこんで、首を横に振る。
「大丈夫です。やります……やらせて……ください」
先生は少し不安げな表情で手のひらに載せた球を私のほうに差し出してくる。
深く息を吸って吐く。心臓の鼓動が高鳴る。
肩を少しずつ上げ、指を開く。当然のように腕が思い通りに動かず、肩が痛む。その痛みを我慢して、動かない球に触れる。触れて、球が動いて心臓が締め付けられるような感覚に襲われたけれども、球は落ちずに先生の手のひらの上に乗っている。
球を弾いて落とさないように気をつけながら、指を閉じていく。
強く握りすぎているのか、それとも逆に弱いのか。不安になりながら腕を持ち上げる。
ボールは手に握られたままだった。握る力が少し強いのか少し歪な形になりながらも私の手のひらの中にあった。
手を返して、指を開けると、手の上で球が転がり床に落ちる。
跳ねた球は、私の横を転がって、やがて止まった。
先生は口を開けて信じられないようなものを見る目で球と私を交互に見る。私も、口をバカみたいに開けて、転がっていった球と先生の顔を交互に観る。
そして、自分の頬が持ち上がっていくのを感じた。先生の顔も笑顔に変わっていく。
不安も苦痛も忘れ、心には純粋な喜びが溢れ出す。
――――――やっと掴めた……。
目の前が霞み、頬を温かいものが伝う。今まで、悲しいときや辛いときにしか流なかったそれが流れている。それも、なんだか面白くて、嬉しくて。
霞む目の前。その霞んだ風景を新しい私の手の甲が拭き取る。
改めて見た腕は、なんだか輝いて見えた。
毎度変わらずの低クオリティの文章。改行やほか諸々におかしいところがありますが、目を瞑っていただけると幸いです。
しかし、やっとここまで来れましたよ。
やっとです。
絵に感情移入することなんてなかったのに、あの絵を見た瞬間に『この絵で小説を書きたい』って思えました。つのつき様がいたが故に、今の自分がいる。ある意味で感謝感謝です。
もちろん、このヘタクソ小説を読んでくださっている方にも、いろいろアドバイスをくれているハインケル様(学校の先輩だけれども他人行儀)。ほか色々な方々に支えてもらった結果です。それでこんなものですが、ここまで書き切れた自分にある種驚いています。が、まだ先はありますので、皆様、これからもお付き合い頂きたいです。