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第一話

 施設を抜け出した彼女の目に生気は感じられず、黒ずみ濁っている。黒のジーパンとダウンジャケットを着ているが寒そうに身体を振るわせる。

――今頃……施設は大騒ぎだろうか

 閉じ篭り続けていた人が急に消えてしまえば誰もが驚くだろう。そんな状況が不思議と頭に浮かんでくる。

――なんで……こんなときに……死ぬと決めたのに……

 


 施設を抜け出してから三十分


 

 彼女は再び戻ってきた。所々雨漏りのする古ぼけた建物。

「お姉ちゃんが帰って来た!!」

 引き戸の辺りにいる五歳位の少女が彼女を見るなり叫んだ。その声を聞きつけ何人もの人たちが建物の中から出てくる

「紋乃ちゃん!! どこに行ってたの??」

 その声は少し涙の所為か潤んでいる様に聞こえた。


 黒の長い髪を持つ少女。瀬川紋乃せがわあやのそれが彼女の名前。


 浅倉洋子あさくらようこ。五十歳くらいの容姿の今では珍しいブラウンの髪の毛を持つおばさんが彼女に近づいてくる。


「ごめんなさい、ちょっと気分転換に行こうかなと思いまして出掛けてました」

 とてもじゃないが死のうとしてましたなんて言えるわけもなく心の中に押し込む。

「院長先生、良かったじゃないですか紋乃ちゃんがちゃんと帰って来て」

 院長先生の後ろから若干若そうな声がした。院長先生から目を離しそっちを見る。

「おかえりなさい」


 浅倉加奈子あさくらかなこ。浅倉洋子の妹として生まれた四十五歳くらいで姉とは違い黒髪のおばさん。


「次からはちゃんと言ってから外には行くのよ?? わかった??」

 浅倉加奈子は多少きつめの口調で言う。それがどこか気に入らなかった。

そんなことわかってると言い放ってやりたかったが非は自分にあるため言い返せなかった。

「……わかっ……」

「明日からはちゃんと学校にいきなさいよ」

 言葉を遮られ苛つくがなんとか我慢した。浅倉加奈子が自分のことを嫌っていることは知っていた。だから今までお互いに避けていた。が

 今日は瀬川が言い返せないというのを良いことにしてやられた気分だった。

 浅倉加奈子があたしの大好きだった職員を殺しているのは知っていた。知っていたからといってどうすることもこの国では出来ない。

 すでに国としての権力が崩壊している。警察という制度も崩壊し名前だけで役に立たない。だからこの国で”犯罪”が増え続けているのだ。もうどうすることも出来ない。以前はアメリカ二度程日本という国を統制をしようと兵隊を派遣したらしいのだが市民の横暴から兵士は虐殺され死人は二千人を超える程だ。それが結果としてアメリカ国民の怒りを買い断念せざる終えなかった。それ以来どの国にも日本と関わりを持とうとする国は現れず統制しようとも統制しようとも思われなくなった、世界初の見離された国だ。

――やはりこの国は腐ってる

 そう心で呟くと瀬川は一度抜け出した施設の扉を入った。

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