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さあ答えよ 夢ならむ

作者: 7hikari
掲載日:2026/10/03

一


白かった。


上も下もなく、遠くも近くもなかった。ただ一面に白いものが広がっていて、自分がその中に立っているのか浮かんでいるのか、それとも横たわっているのかさえ分からなかった。


寒くはなかった。暑くもなかった。音もしなかった。耳を澄ませても、自分の息の音すら聞こえない。


俺は自分の手を見ようとした。


見えなかった。手を持ち上げたつもりなのに、目の前には白いものしかない。手がどこにあるのか、そもそも手があるのかどうかもよく分からなかった。


名前を思い出そうとした。高瀬(たかせ)。高瀬悠真(ゆうま)。二十六歳。それは思い出せた。会社の名前も、住んでいるアパートの部屋番号も思い出せた。けれど自分がなぜここにいるのかは、どれだけ考えても出てこなかった。


最後に覚えているのは何だったか。


夜だった気がする。車に乗っていた気がする。けれどその先を手繰ろうとすると、記憶の糸はふっと白の中に溶けてしまう。


「さあ」


声がした。


振り向いたつもりだった。けれど振り向いた先も同じ白だった。それでも、そこに誰かがいることは分かった。


男だった。


背は俺より少し低い。厚手の作業着のような、くすんだ紺色の上着を着ている。肩幅が広く、どこか猫背(ねこぜ)だった。年は五十を過ぎたくらいだろうか。そう思ったのは、首筋や手の甲の皮膚の感じからだった。


顔は見えなかった。


暗いわけではない。影になっているわけでもない。ただ顔のあるはずの場所を見ようとすると、視線がそこだけ滑ってしまう。目も鼻も口もあるはずなのに、どんな形をしているのかどうしても捉えられなかった。


「さあ、答えよ」


男が言った。低い、少しかすれた声だった。


「……何を」


自分の声は驚くほど小さかった。


「ここは、どこだ」


男が問うた。


俺は周りを見た。白いだけだった。


「分からない」


「そうか」


男はそれだけ言うと、左の手首を持ち上げて腕時計を見た。


古い時計だった。金属のバンドは鈍(にぶ)く曇り、文字盤のガラスには細かい傷がいくつも走っている。男はその文字盤をじっと見つめていた。まるで待ち合わせの相手が遅れているときのように。


「時間がない」


男は誰に言うでもなくつぶやいた。


俺もその文字盤を覗きこんだ。


針は十一時四十七分を指していた。


秒針は動いていなかった。


「その時計、止まって」


言いかけたとき、男はもう手首を下ろしていた。そして顔のない顔をこちらに向けた。


「さあ、答えよ」


同じ言葉だった。


「おまえは、誰だ」


「高瀬……高瀬悠真」


「そうか」


また、それだけだった。男は俺の答えを聞いても、うなずきもしなければ首を横に振りもしなかった。ただ聞いたということだけを示すように、少しのあいだ黙っていた。


「あんたは、誰なんですか」


俺は聞いた。


男は答えなかった。代わりにまた腕時計を見た。十一時四十七分。針はやはり動いていなかった。


「問うのは、こっちだ」


男が言った。責めるような口調ではなかった。むしろ、ひどく疲れている人の声に聞こえた。


「答えるのは、おまえだ」


そう言うと、男の姿は白の中にゆっくりと溶けていった。輪郭がにじみ、色が抜け、最後に残った腕時計の鈍い光もやがて見えなくなった。


俺は白の中に一人で残された。


どれくらいそうしていたのか分からない。時間というものが、ここにはないようだった。眠っているような気もしたし、ずっと起きているような気もした。


ただ男の言葉だけが、白い空間の中にいつまでも残っていた。


さあ、答えよ。


何に答えればいいのか、俺にはまだ分からなかった。けれど自分が何かに答えなければならないのだということだけは、なぜかはっきりと分かっていた。


二


男はまた現れた。


いつ現れたのかは分からない。気がつくと白の中に立っていた。前と同じ紺色の作業着で、前と同じように顔が見えず、前と同じように腕時計を見ていた。


「さあ、答えよ」


「……また、それですか」


「あの夜、おまえはどこへ向かっていた」


あの夜。


その言葉を聞いた途端、白の向こうから何かがにじみ出してくるような感覚があった。


電話だった。


アパートの部屋で、コンビニの弁当を温めていた。電子レンジが鳴るのと同時にスマホが震えた。画面には「母」と出ていた。母が夜に電話をかけてくることはめったにない。


嫌な予感がして出ると、母の声は震えていた。


——お父さんが、倒れたの。


脳の血管が、と母は言った。救急車で運ばれて、今は手術をしている。お医者さんが、ご家族を呼んでくださいって。


「実家に、帰ろうとしていた」


俺は答えた。


「親父が倒れたって、連絡があって」


「そうか」


男は腕時計を見た。


「急いでいたな」


急いでいた。


実家は県境の山を一つ越えた先の町にある。高速を使えば遠回りになる。峠を越える旧道を行けば一時間は早く着く。俺は迷わず旧道を選んだ。


その日は昼過ぎから雪が降っていた。天気予報は、夜にかけて大雪になると言っていた。分かっていた。分かっていたけれど、一時間早く着けるなら、と思った。もしその一時間のあいだに親父が——。


そう思うと、ハンドルを握る手に力が入った。


「急いでいました」


俺は言った。


「スピードも、出してたと思います」


「そうか」


男の声には何の色もなかった。


「雪は、深かったな」


深かった。


峠道に入ったあたりから、雪は急に強くなった。ワイパーをいくら動かしても、フロントガラスの向こうは白い渦(うず)だった。ヘッドライトの光が降ってくる雪に跳ね返って、すぐ先も見えない。対向車も後続車も一台もいなかった。


道路の轍(わだち)はすでに雪に埋もれかけていて、どこまでが道でどこからが路肩(ろかた)なのかもはっきりしなかった。


「深かった、です」


「そうか」


男はしばらく黙っていた。


それからふいに顔を上げた。顔はやはり見えなかった。けれど男がどこか遠くを見ているのだということは、なぜか分かった。


「寒い夜だったな」


「……はい」


「一杯、やりたくなるような夜だった」


独り言のような言い方だった。俺に聞かせるというよりは、自分に向かって言っているようだった。


そのとき、ふっと何かの匂(にお)いがした。


甘いような、つんとするような。どこかで嗅(か)いだことのある匂いだった。けれどそれが何の匂いなのか思い出そうとする前に、匂いは白の中に消えてしまった。


気のせいだ、と俺は思った。夢の中で匂いがするはずがない。


「おまえは、飲んだか」


男が聞いた。


「飲んでません」


俺はすぐに答えた。


「酒は、ほとんど飲まないんです。あの日も、飲んでません」


それは確かだった。弁当を温めていたところに電話が来て、俺はそのまま上着をつかんで部屋を出た。冷蔵庫に缶ビールが何本か入っていたけれど、開けてもいなかった。


「そうか」


男は言った。


そして深くうなだれた。


なぜうなだれたのか、俺には分からなかった。俺が飲んでいなかったことが、この男にとって何か都合の悪いことなのだろうか。それとも俺の答えを疑っているのだろうか。


男は長いあいだ顔を上げなかった。


やがて、うなだれたまま腕時計を見た。十一時四十七分。針はやはり動いていなかった。


「時間がない」


男がつぶやいた。


「さあ、答えよ。おまえは、何を見た」


何を見た。


その問いを聞いた瞬間、白い空間がぐらりと傾(かし)いだ気がした。


カーブだった。


峠を下りはじめて、何度目かの左カーブ。ガードレールの向こうは黒い谷だった。俺はブレーキを軽く踏んで、ハンドルを左に切った。


そのとき、カーブの先から光が来た。


ヘッドライトだった。二つの白い光が、雪の幕の向こうからまっすぐこちらへ向かってきた。


近い、と思った。


思ったときには、もう目の前だった。


俺はブレーキを踏んだ。強く踏みこんだ。ハンドルを右に切ったのか左に切ったのか覚えていない。タイヤが雪の上で空回りする嫌な感触があった。車体の後ろが、ふわりと浮くように横へ流れた。


滑っている。


そう思った。ハンドルを戻そうとしたが、何の手応えもなかった。車は俺の意思とは関係なく、雪の上を滑っていった。


光が視界いっぱいに広がった。


そこで記憶は途切れていた。


「滑ったな」


男の声で、俺は白い空間に引き戻された。


「……滑りました」


声が震えていた。


「ブレーキを踏んだら、車が、滑って」


「そうか」


「止まらなかったんです。ハンドルを切っても、全然」


「そうか」


男はうなずきもしなかった。ただ俺の言葉を一つずつ受け取るように聞いていた。


「さあ、答えよ」


男がもう一度言った。


「はみ出したのは、どっちだ」


俺は息をのんだ。


はみ出したのは、どっちだ。


分からなかった。思い出そうとしても、雪の白とヘッドライトの白と夢の白が混ざり合って、何も見えなかった。カーブを曲がっていた。光が来た。ブレーキを踏んだ。車が滑った。そこまでは覚えている。けれどそのとき自分の車が道路のどちら側にいたのか、相手の車がどちら側にいたのか、それだけがどうしても分からない。


スピードを出していた。


雪が深いと分かっていて、旧道を選んだ。


ブレーキを踏んで、車が滑った。


滑った車がどこへ行ったのか。


考えれば考えるほど、答えは一つしかないように思えた。急いでいたのは俺だ。スピードを出していたのは俺だ。滑ったのは俺の車だ。だとしたら。


「……俺です」


口が勝手に動いていた。


「俺の車が、滑って……はみ出して、ぶつかった」


言ってしまってから、胸の奥が冷たくなった。


男は何も言わなかった。


責めもしなかった。頷(うなず)きもしなかった。そうか、とさえ言わなかった。ただ顔のない顔をじっと俺に向けていた。


その沈黙がどんな言葉よりも重かった。


やがて男はゆっくりと背を向けた。


「待ってください」


俺は叫んだ。


「ぶつかった相手は、どうなったんですか。俺は、誰に——」


男は振り返らなかった。紺色の背中が白の中に溶けていく。最後に、左の手首だけがこちらを向いた気がした。


止まった腕時計が鈍く光った。


十一時四十七分。


そして、何も見えなくなった。


三


最初に聞こえたのは電子音だった。


ピッ、ピッ、と規則正しく鳴る音。それから遠くで誰かが話す声。ワゴンの車輪が床を転がる音。消毒液の匂い。


まぶたを開けると白かった。


一瞬、まだあの場所にいるのかと思った。けれどその白には縁があった。蛍光灯の細長い形があり、天井のボードの細かい穴があった。


「……悠真?」


母の声だった。


首を動かそうとすると、頭の奥が鈍く痛んだ。視線だけを横に向けると、ベッドの脇のパイプ椅子に母が座っていた。母は俺の顔を見て、口元を手で覆った。


「先生、先生、ちょっと——」


母は立ち上がって、ベッドの周りのカーテンの向こうへ出ていった。


それからのことはあまりよく覚えていない。医師や看護師が入れ替わり立ち替わり現れ、俺の目にライトを当てたり、名前や生年月日を聞いたりした。俺は聞かれたことに一つずつ答えた。高瀬悠真。二十六歳。


答えるたびに、どこかであの声が響いた気がした。


さあ、答えよ。


俺が運ばれたのは、実家のある町の隣町にある総合病院だった。事故から四日が経っていた。


頭を強く打っていたこと、雪の中で一晩じゅう車に閉じこめられ、ひどい低体温(ていたいおん)になっていたこと。発見があと少し遅ければ危なかったこと。医師はそういうことを、俺ではなく母に向かって話していた。右手の指先には包帯が巻かれていた。凍傷(とうしょう)だという。


医師たちが出ていくと、母はまたパイプ椅子に座った。そして俺が一番聞きたかったことを、俺が聞く前に話してくれた。


「お父さんね、助かったの」


手術はうまくいった。まだ入院しているけれど、話もできるようになった。右手に少ししびれが残るかもしれないけれど、リハビリでよくなるだろうと言われている。


「あんたが事故にあったって話したら、自分のせいだって泣いてたわよ」


母はそう言って笑おうとして、うまくいかずに、また口元を覆った。


俺は天井を見つめた。


親父は助かった。俺も助かった。


だとしたら、あの光の向こうにいた人は。


「……相手の人は」


声に出すと、母の顔がこわばった。


母はしばらく答えなかった。それから「警察の人が、話を聞きに来るって」とだけ言った。


それが答えだった。


警察が来たのは二日後だった。


俺は集中治療室から一般の病棟に移っていて、ベッドの背もたれを起こして座れるようになっていた。


やってきたのは五十前後の男だった。灰色のスーツに、着古したコートを腕に掛けている。男は県警の交通課のものだと名乗り、坂口(さかぐち)という名前の入った名刺をベッド脇の台に置いた。


「体の具合はどうですか」


「……大丈夫です」


「それはよかった。無理はしないでください。疲れたら、いつでも止めますので」


坂口は椅子に腰を下ろし、手帳を開いた。そしてゆっくりと、一つずつ確かめるように話しはじめた。


事故があったのは、峠を越える旧道の南側の下り坂だった。見通しの悪い左カーブで、俺の車と対向車が正面からぶつかった。


発見されたのは翌朝の八時ごろ。通りかかった除雪車の運転手が、雪に半分埋もれた二台の車を見つけて通報した。その夜、峠は大雪で、事故のあとあの道を通った車は一台もなかったらしい。


「相手の方は」


坂口はそこで一度言葉を切った。


「発見されたときには、もう亡くなっていました」


わかっていた。母の顔を見たときから、いや、もっと前からわかっていたような気がした。それでも坂口の口からその言葉を聞いた瞬間、胸の奥で何かが音もなく崩れた。


「ただ——」


坂口は手帳に目を落とした。


「解剖の結果、亡くなられたのは事故からしばらく経ってから、明け方近くだろうということでした。けがと、寒さです。もう少し早く見つかっていれば、ということは……まあ、あなたも同じ状況だったわけですから」


俺は何も言えなかった。


同じ雪の中で同じ夜を過ごして、俺は生き残り、その人は明け方に死んだ。俺が車の中で意識を失っているあいだ、その人はどれくらいの時間、どんなことを考えていたのだろう。


「それで、今日伺ったのは、事故の状況についてなんですが」


坂口は言った。


「正直に申し上げて、よく分からないんです」


あの夜、雪は一晩じゅう降りつづいた。二台の車はぶつかった勢いで回転し、カーブの中ほどで互いに斜めに向き合う形で止まっていた。タイヤの跡も破片の飛び散り方も、朝までに積もった雪の下に埋もれてしまった。防犯カメラもない山道で、目撃者もいない。俺の車にも相手の車にも、ドライブレコーダーはついていなかった。


どちらの車がセンターラインを越えたのか、判断できる材料がない。


「一応、お二人とも血液も調べていますが、アルコールや薬物は検出されていません。そちらの線はなしです」


坂口は事務的な口調でそう言った。


「ですので、今のところは、雪でのスリップ事故ということで。ただ、どちらにどれだけ過失があったのかは、もう少し調べないといけない。あなたに何か覚えていることがあれば、と思いまして」


覚えていること。


カーブ。光。ブレーキ。滑っていく車。


そして白い場所で、自分の口から出た言葉。


——俺の車が、滑って……はみ出して、ぶつかった。


あれは夢だ。夢の中で問い詰められて、そう答えてしまっただけだ。本当にそうだったのか、俺には分からない。


「……カーブで、対向車のライトが見えて」


俺はゆっくり言った。


「ブレーキを踏んだら、車が滑って。そこまでは覚えています。でも、その後は……」


「どちらがはみ出していたかは」


「……分かりません」


それは嘘ではなかった。


坂口は「そうですか」とだけ言って、手帳に何かを書きつけた。


「無理もないですよ。頭を打っていますし、あの雪ですから。また何か思い出したら、連絡をください」


坂口は手帳を閉じ、立ち上がりかけた。それからふと思い出したように、もう一度腰を下ろした。


「そういえば、事故の時刻なんですが」


「……はい」


「たぶん、十一時四十七分です。相手の方の腕時計が、衝突の衝撃でその時刻で止まっていましてね。ずいぶん古い、金属バンドの時計でした」


その瞬間、病室の空気がすっと白くなった気がした。


十一時四十七分。


鈍く曇った金属のバンド。傷だらけの文字盤。動かない秒針。


さあ、答えよ。


「……相手の方は、どんな人だったんですか」


自分の声が遠くに聞こえた。


坂口は少し迷ってから話してくれた。


宮内(みやうち)正志(まさし)さん。五十四歳。峠の向こう側の町で、製材所に勤めていた。奥さんを早くに亡くして、娘と二人で暮らしていた。あの夜は、雪で電車が止まってしまった娘を駅まで迎えに行く途中だったという。


「仕事のときは、いつも紺色の作業着を着ていたそうですよ。あの夜も、その上にコートを羽織っただけで。よほど急いで出たんでしょうね」


坂口はそう言って立ち上がった。


「娘さんは、ずいぶん参っています。自分が迎えなんか頼まなければってね」


坂口が出ていったあとも、俺はしばらく動けなかった。


紺色の作業着。猫背の、肩幅の広い男。止まった腕時計。


時間がない。


あの男は宮内正志だった。


俺がぶつかった相手が、俺の夢の中でずっと俺に問いつづけていたのだ。


さあ、答えよ。はみ出したのは、どっちだ。


そして俺は答えた。俺だ、と。


その答えを聞いた男は、何も言わずに消えた。責めもせず、許しもせずに。


あの沈黙は何だったのだろう。


俺は包帯の巻かれた右手を、そっと握りしめた。指先にじんとした痛みが走った。その痛みだけが、ここが夢ではないということを俺に教えていた。


四


宮内正志の娘が病室に来たのは、それから三日後のことだった。


その日の午後、看護師が「面会の方がいらっしゃってます」と伝えに来た。名前を聞いて、俺はしばらく返事ができなかった。断ることもできたのだと思う。けれど俺は「お通ししてください」と答えていた。


入ってきたのは、二十代の前半くらいの女性だった。


黒いコートを着て、肩までの髪を後ろで一つに束ねている。化粧はほとんどしていなかった。目の下には濃い隈(くま)があり、まぶたは赤く脹れていた。


「宮内千夏(みやうちちなつ)です」


彼女はそう名乗り、深く頭を下げた。


俺はベッドの上で、どうしていいか分からずにただ頭を下げ返した。立ち上がることもできない。何か言わなければと思うのに、言葉が一つも出てこなかった。


彼女は勧めもしないのにパイプ椅子に座ろうとはせず、ベッドの足元に立ったまま俺を見下ろしていた。


「突然、すみません。警察の方に、こちらに入院されてるって伺って」


「いえ……」


「どうしても、お会いして話を聞きたくて」


彼女の声は押し殺したように静かだった。


「……このたびは、本当に」


俺はようやくそれだけ言った。その先をどう続ければいいのか分からなかった。ご愁傷様です、と言うのは他人事のようで違う気がした。申し訳ありません、と言えば、何かを認めることになる気がした。


彼女は俺の言葉が途切れたところで、小さく首を振った。


「父は、素敵な人でした」


そう言って、彼女は話しはじめた。


母が亡くなったのは、彼女が十二のときだった。それから父は一人で彼女を育てた。製材所の仕事は朝が早く、体もきつい。それでも父は毎朝彼女の弁当を作り、授業参観には作業着のまま駆けつけた。


「口数の少ない人で。何を聞いても、『そうか』ってばっかり言うんです」


そうか。


その言葉に、俺は背筋が冷たくなるのを感じた。白い場所で何度も何度も聞いた言葉だった。


「その時計も、母が結婚したときに父にあげたもので。もう何度も修理に出して、バンドも曇って、新しいの買ったらって言っても、絶対に外さなかったんです」


彼女はそこで一度言葉を切った。そしてコートのポケットから何かを取り出した。


腕時計だった。


鈍く曇った金属のバンド。傷だらけの文字盤。針は十一時四十七分を指したまま止まっていた。


俺は息ができなくなった。


夢で見たのとまったく同じ時計だった。ガラスの傷の一本一本まで同じだった。


「警察から、返してもらったんです」


彼女は時計を両手で包むように持っていた。


「この時間に、父は——」


そこまで言って、彼女は口をつぐんだ。肩が小さく震えていた。


俺は目をそらすこともできずに、その震える肩を見ていた。


しばらくして彼女は顔を上げた。目は濡れていたが、声はさっきよりもはっきりしていた。


「警察の方は、どちらが悪かったのか分からないって言うんです」


「……はい」


「父のせいかもしれないって。雪の夜に、娘を迎えに行こうとして、急いでいたのかもしれないって」


彼女の指が時計のバンドを強く握りしめた。


「でも、そんなこと、あるはずないんです。父は、雪の日は誰よりも慎重な人でした。スタッドレスには毎年一番に変えて、峠道ではいつも後ろの車に抜かれるくらいゆっくり走って、私がいらいらするくらいで」


彼女は一気にそう言った。


「それに、父はお酒も飲まない人でした」


俺は彼女を見た。


彼女は俺を見ていなかった。手の中の時計に、まっすぐ目を落としていた。


「母が亡くなってから、一滴も。私を育てるのに、酒なんか飲んでる場合じゃないって。だから、あの夜も——」


そこで彼女の言葉が、ほんの一瞬だけ止まった。


「あの夜も、電話したときは、いつもの父でした。いつものように、『そうか、待ってろ』って」


彼女はそこで小さく笑った。笑ったように見えた。すぐにその笑みは崩れて、彼女は口元を手でふさいだ。


「私が、迎えに来てなんて頼まなければ」


指の隙間から、くぐもった声が漏れた。


「タクシーで帰るからいいって、一言言えばよかったんです。そうしたら、父は——」


彼女はその場にしゃがみこんだ。


俺はベッドの上から手を伸ばしかけて、やめた。俺にはその肩に触れる資格などないと思った。


彼女の泣き声が病室の中に静かに響いていた。ピッ、ピッ、という電子音はもうなかった。窓の外では、また雪が降りはじめていた。


「……すみません」


気がつくと、俺はそう言っていた。


彼女の泣き声が止まった。


しゃがみこんだまま、彼女はゆっくりと顔を上げた。濡れた目がまっすぐに俺を見ていた。


「……どうして、謝るんですか」


俺は答えられなかった。


「分からないんじゃないんですか。どちらが悪かったのか。警察の方には、そう言ったんですよね」


「……はい」


「だったら、どうして」


彼女は立ち上がった。そしてさっきまで座ろうとしなかったパイプ椅子に、はじめて腰を下ろした。俺との距離がずっと近くなった。


「高瀬さん、あの夜、急いでいたんですよね」


俺は息をのんだ。


「お父さんが倒れて、実家に向かう途中だったって。病院の廊下で、お母さんが話してるのを聞きました」


そうだ。親父もこの病院に入院している。母は毎日、二つの病棟を行き来していた。


「急いでいたのは、父じゃなくて、あなたなんじゃないんですか」


彼女の声は責めるような調子ではなかった。ただ静かだった。あの白い場所で聞いた声とよく似た静けさだった。


「それに、さっき、謝りましたよね」


「……」


「本当は、覚えてるんじゃないんですか」


覚えている。


カーブ。光。ブレーキ。滑っていく車。


そして白い場所で、俺は答えた。俺だ、と。その答えを聞いて、この人の父親は何も言わずに消えていった。


あれは夢だ。夢のはずだ。


けれど夢の中の腕時計は、今、彼女の手の中にある。夢の中の男の口ぐせは、彼女の父親の口ぐせだった。だとしたら、夢の中で俺がした答えも、ただの夢ではないのではないか。


あの人は、俺に答えさせるためにあそこにいたのではないか。


「……分からないんです」


俺はようやくそれだけ言った。


「本当に、分からないんです。でも、もしかしたら——」


その先を俺は言えなかった。


彼女はしばらく俺の顔を見ていた。それから手の中の時計に目を落とし、そっとコートのポケットにしまった。


「私は、本当のことが知りたいだけなんです」


彼女は立ち上がり、もう一度深く頭を下げた。


「父が悪かったなら、それでもいいんです。でも、もしそうじゃないなら……父のせいにされたままなのは、父がかわいそうです」


そう言って、彼女は病室を出ていった。


ドアが閉まる音がしても、俺は彼女が立っていた場所から目を離せなかった。


窓の外では、雪が音もなく降りつづけていた。


五


その夜、俺はもう一度あの場所へ行こうとした。


消灯のあと、暗い病室で目を閉じて白い空間を思い浮かべた。紺色の作業着。猫背の背中。止まった腕時計。もう一度あの人に会えたら聞いてみたかった。あの沈黙は何だったのか。俺の答えは正しかったのか。


けれど、いくら待っても白い場所は現れなかった。


うとうとすると、見えるのは雪だった。フロントガラスの向こうの白い渦。カーブの先から現れる二つの光。俺はそのたびにブレーキを踏み、車はそのたびに滑り、そのたびに俺は汗だくになって目を覚ました。


何度繰り返しても、光がどちらから来たのかは分からなかった。


ただ滑っていく自分の車の感触だけが、繰り返すたびにどんどん鮮やかになっていった。


明け方、俺は眠るのをあきらめて窓の外を見ていた。雪はもう止んでいて、駐車場の外灯の下で積もった雪が青白く光っていた。


あの人は一晩じゅう、こんな雪の中にいたのだ。


娘を迎えに行く途中で。待ってろ、と言ったまま。


その朝、俺は母に、親父に会いたいと言った。


親父の病室は、別の病棟の三階にあった。母に車椅子を押してもらって入っていくと、親父はベッドの上で、動きの悪い右手にスポンジのボールを握らせていた。俺の顔を見ると、親父は何か言おうとして、うまく言葉にならず、ただ「おう」とだけ言った。


しばらく二人とも黙っていた。母は気を利かせて廊下に出ていた。


「……俺のせいだな」


先に口を開いたのは親父だった。


「俺が倒れたりしなければ、おまえはあんな夜に峠なんか越えなかった」


「親父のせいじゃないよ」


俺は言った。それは本心だった。


「旧道を選んだのは俺だし、スピードを出してたのも俺だ。……たぶん、はみ出したのも」


親父は動かない右手をじっと見つめていた。


「そうか」


その言葉に俺はびくりとした。けれどそれは紛れもなく親父の声で、親父の言い方だった。この年代の男は、みんなこういう言い方をするのかもしれない。


「……相手の娘さんが、来たんだ」


俺は昨日のことを話した。夢のことは話さなかった。話しても信じてもらえるとは思えなかった。ただ、彼女が泣いていたこと。父親は雪の日は誰よりも慎重で、酒も飲まない人だったと言ったこと。本当のことが知りたいと言ったこと。


親父は最後まで黙って聞いていた。


それから、ボールを握る手に少しだけ力をこめた。


「おまえは、どうしたいんだ」


「……」


「分からないなら、分からないでいい。警察がそう言ってるんだろう。無理に背負うことはない」


親父はそう言った。けれどその目は、俺の答えを待っていた。


「でも、もし、俺のせいだったら」


俺は言った。


「俺が黙ってたら、あの人のせいになる。もういない人のせいに。娘さんは、ずっと自分を責める。自分が迎えなんか頼んだからだって」


口に出してみると、もう迷う余地はないように思えた。


急いでいたのは俺だ。スピードを出していたのは俺だ。滑ったのは俺の車だ。それは確かに覚えている。そしてあの人は雪の日は誰よりも慎重で、酒も飲まず、後ろの車に抜かれるくらいゆっくり走る人だった。


だとしたら、はみ出したのはどちらか。


答えは一つしかない。


夢の中で、俺はもうその答えを言っている。あの人に向かって。あとはそれを現実で言うかどうかだけだ。


「……そうか」


親父はもう一度言った。そして動きの悪い右手を、ゆっくりと俺の方に伸ばした。


その手は俺の肩までは届かなかった。途中で力尽きて、ベッドの縁に落ちた。俺はその手を、包帯の巻かれた自分の右手で握った。


その日の午後、俺は坂口の名刺にある番号に電話をかけた。


坂口は翌日の朝に病室へ来た。前と同じ灰色のスーツに、前と同じコートを腕に掛けていた。俺が「思い出したことがあります」と言うと、坂口は黙って手帳を開いた。


「あの夜、俺は急いでいました」


俺は話しはじめた。


父が倒れたという連絡。旧道を選んだこと。大雪だと分かっていたこと。スピードを出していたこと。下り坂の左カーブ。対向車のライト。強く踏みこんだブレーキ。滑りだした車。


そこまでは、本当に覚えていることだった。


「それで、俺の車が……滑って、センターラインを越えました」


そこから先は、夢の中で自分が答えた言葉だった。


「反対車線に飛び出して、対向車とぶつかりました。……俺が、はみ出しました」


言い終えたとき、不思議なほど胸が軽かった。


坂口はしばらく手帳にペンを走らせていた。それから顔を上げて、俺をまっすぐに見た。


「確かですか」


「……はい」


「前回は、分からないとおっしゃっていましたね」


「思い出したんです」


坂口は何かを確かめるように、俺の顔を見つめていた。その目の奥に一瞬だけ、何かを量るような色がよぎった気がした。けれど坂口は、それ以上何も聞かなかった。


「分かりました。では、今のお話をもとに、あらためて調書を取らせていただきます」


それからのことは、俺の知らないところで淀みなく進んでいった。


退院したのは一月の終わりだった。事故は俺の過失によるものとして扱われることになった。過失運転致死(かしつうんてんちし)。その言葉を初めて書類の上で見たとき、俺はそれが自分のことだと、しばらく分からなかった。


会社は春まで休むことになった。上司は電話口で、運が悪かったんだよ、と言った。そのあとで俺が過失を認めたと知ると、上司はもう何も言わなくなった。


自動車保険の担当者が何度か実家に来た。過失の割合。賠償の額。ご遺族への慰謝料(いしゃりょう)。保険で足りない分は、俺が少しずつ払っていくことになった。担当者は何度も「ご自身の過失をお認めになっているので」と繰り返した。それは責める口調ではなく、ただそれ以外に言うことがないという風だった。


一度だけ宮内千夏に会った。


弁護士の事務所の小さな応接室だった。彼女は病室に来たときと同じ黒いコートを着ていた。俺が深く頭を下げると、彼女は少しのあいだ黙っていて、それから同じくらい深く頭を下げた。


「本当のことを話してくださって、ありがとうございました」


彼女はそう言った。


「これで、父も浮かばれると思います」


その声は、病室で聞いたときよりもずっと落ち着いていた。


俺は何も言えなかった。ただもう一度頭を下げた。


これでよかったのだ、と思った。


これであの人は悪者にならずにすむ。彼女は自分を責めずにすむ。その代わりに俺が背負うものは、もともと俺が背負うべきものだったのだ。


その夜、久しぶりにあの夢を見た。


白い場所だった。紺色の作業着の男が、少し離れたところに立っていた。顔はやはり見えなかった。


男は今度は腕時計を見なかった。問いかけもしなかった。ただ俺の方を向いて立っていた。


「言いましたよ」


俺は言った。


「現実でも、ちゃんと答えました。あなたのせいじゃないって。娘さんにも、謝りました」


男はしばらく動かなかった。


それから、何か言おうとするように顔のない顔を少し上げた。口が動いたように見えた。けれど声は聞こえなかった。


男はもう一度口を開いた。やはり何も聞こえない。男は言葉を探すように、左の手首を右の手で握りしめた。そこにあるはずの腕時計は、もうなかった。


やがて男はゆっくりとうなだれた。


そして背を向けて、白の中へ消えていった。


許してくれたのだ、と俺は思った。


それきり、あの夢を見ることはなかった。


六


墓地へ続く坂道は、まだところどころに雪が残っていた。


日陰の雪は灰色に汚れて固くなり、日向のところだけが溶けて黒い土がのぞいている。わたしはその土の上を選んで歩いた。右手には花を、左手にはコンビニのレジ袋を提げていた。


父の墓は母の墓でもある。十年前に母が入って、今年の冬、父がそこに加わった。墓石(ぼせき)の横の墓誌(ぼし)には、まだ彫ったばかりの父の名前が白っぽく浮き上がって見えた。


宮内正志。享年五十四。


花を生け、線香に火をつけた。煙が風のない空気の中をまっすぐに立ちのぼっていく。わたしは墓石の前にしゃがみ、手を合わせた。


それから、レジ袋の中の缶を取り出した。


缶ビール。父がいつも飲んでいた銀色のやつ。五百ミリの、一番大きい缶。


「お父さん」


わたしは墓石に向かって話しかけた。


「示談、まとまったよ」


線香の煙が少しだけ揺れた。


「あの人、自分のせいだって言ってくれたよ。警察にも、保険の人にも、弁護士さんにも。自分の車が滑って、はみ出したんだって」


口に出してみると、それはひどく簡単なことのように聞こえた。


「だから、慰謝料、払わなくてすみそう。むしろ、こっちがもらえるんだって。保険の人が、そう言ってた」


わたしは小さく笑った。


「よかったね。お父さんのせいになってたら、うち、どうなってたか分かんないもん」


言いながら、あの夜のことを思い出していた。


電車が止まったというアナウンスを聞いたのは十時半ごろだった。駅の待合室は帰れなくなった人でいっぱいだった。タクシー乗り場には長い列ができていて、いつ乗れるか分からなかった。


だから父に電話した。


——お父さん、ごめん、駅まで迎えに来てもらえない?


父は少し間を置いてから、「そうか」と言った。


その声を聞いた瞬間に分かった。語尾が少しだけ甘く、いつもよりもゆっくりだった。母が死んでから、父は毎晩のようにビールを飲むようになった。量は多くなかった。それでも酒を口にしたあとの声がどんなものか、わたしには分かった。十年ずっと聞いてきた声だったから。


——お父さん、もしかして、飲んでる?


そう聞けばよかったのだ。


でも、わたしは聞かなかった。寒かったし、疲れていたし、早く帰りたかった。父は雪道に慣れているし、少しくらい大丈夫だろうと思った。そう思うことにした。


——そうか、待ってろ。


それが最後に聞いた父の声だった。


十二時を過ぎても父は来なかった。電話をかけてもつながらなかった。一時を過ぎてようやく乗れたタクシーの中でも、何度もかけた。そのたびに、電波の届かない場所にいるか、というアナウンスが流れた。


峠のあたりは電波が悪い。それは知っていた。


通報しようか、と一度だけ思った。


でも、もし父がどこかで車を止めて、酒が抜けるのを待っているだけだったら。警察がそこに行ったら。そう思うと指が動かなかった。


家に着いたのは二時半ごろだったと思う。


台所のテーブルの上に、飲みかけの缶ビールが一本置かれていた。この銀色の、五百ミリの缶。半分ほど残っていた。父はわたしの電話を切って、その缶を置いたまま、コートをつかんで出ていったのだ。


わたしは缶の中身を流しに捨ててから洗った。空になった缶を潰してスーパーのレジ袋に入れ、口を固く結んだ。そしてその袋を自分の部屋の押し入れの奥にしまった。


どうしてそんなことをしたのか、自分でもよく分からない。まだ何も分かっていなかったのに。ただ、これを誰かに見られたら終わりだということだけは、はっきり分かっていた。


それから台所の椅子に座って、朝まで携帯を握っていた。


警察から電話がかかってきたのは九時前だった。


それから後のことは、だいたい全部うまくいった。


父の血からは何も出なかった。父は明け方まで生きていたから。それを警察から聞いたとき、わたしは自分がどんな顔をしているのか分からなかった。安心したのか、泣きそうになったのか。たぶん両方だった。


あとは、あの人が何を覚えているかだけだった。


だから病院に行った。


「あの人ね、いい人だったよ」


わたしは墓石に向かって言った。


「わたしが泣いたら、すみませんって謝ったの。自分も大けがしてるのに。弁護士さんのところでも、すごく深く頭下げてた」


お父さんはお酒なんか飲まない人でした。病室でそう言ったとき、わたしはあの人の顔を見られなかった。父の時計だけをずっと見ていた。


あの人がなぜあんなにあっさりと自分のせいだと言ったのか、わたしには分からない。分からないままでいいと思っている。ただ、病室で父の時計を見せたとき、あの人が幽霊でも見たような顔をしたことだけは、ときどき思い出す。


わたしは左の手首に目を落とした。


父の腕時計がそこにあった。父の太い手首に合わせたバンドはわたしにはぶかぶかで、歩くたびに手首の上を滑った。文字盤の針は十一時四十七分を指したままだ。修理に出すつもりはなかった。


この時計は、あの夜からもう動かなくていい。


わたしは缶ビールのプルタブに指を掛けた。


ぷしっ、という音が静かな墓地に響いた。缶の口から白い泡がふくらんだ。


十年間、毎晩台所で聞いていた音だった。


「ごめんね、お父さん」


わたしは缶を墓石の上に掲げた。


「もう、だれにも何も言われないよ。だから、好きなだけ飲んでいいよ」


缶を傾けると、金色の液体が墓石の上を流れ落ちていった。母の名前と父の名前が並んだ石の表面を伝い、花立てを濡らし、足元に残った雪をゆっくりと溶かしていく。


うっすらと、あの匂いがした。甘いような、つんとするような。


「さあ、飲んで」


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