誰モ知ラナイ歌を② 「白い矢の片思い編」
五十年越しの想いを歌にした、初めての“誰モ知ラナイ歌”から少し後。
セラとルカは、翠葉学園高等学校の高体連応援企画に招かれる。
地区大会の当番校となった学園には、各競技の生徒たちが集まり、校内は初夏の熱気に包まれていた。
そんな中、セラは弓道場の裏手で、ひとりの女子生徒の小さな言葉を聞く。
「届かなくてもいい。それでも私は、この想いを矢にこめる」
弓道部三年、白石千弦。
彼女が想いを寄せるのは、同じく高体連に挑むサッカー部の幼なじみ、夏目晴翔だった。
告白したい。
けれど、大事な試合を前にした彼の背中を乱したくない。
だから千弦は、自分の恋を告白ではなく応援に変えようとする。
セラには言葉が落ち、ルカには旋律が落ちる。
ふたりが奏でる二つ目の“誰モ知ラナイ歌”は、届かないはずの片想いを、白い矢のように初夏の空へ放っていく。
これは、叶えるためではなく、好きな人の背中を押すために放たれた恋の歌。
届かなくてもいい。
それでも私は、この想いを矢にこめる。
世界にはまだ、誰にも聴かれていない歌が眠っている。
誰かの胸の奥で、言葉になれないまま。
誰かの背中へ、届かなくてもいいと願いながら。
高体連の季節だった。
翠葉学園高等学校は、その年の地区大会の当番校になっていた。
朝から校門には他校のバスが並び、ジャージ姿の生徒たちが行き交い、校舎の窓という窓に、いつもとは違うざわめきが映っていた。
グラウンドからは、サッカー部の掛け声。
体育館からは、バスケットボールの床を叩く音。
少し離れた弓道場からは、弦音が静かに響いている。
同じ学校の中に、いくつもの青春が重なっていた。
セラとルカは、合唱部の応援企画に呼ばれていた。
高体連の当番校として、昼休みに中庭で小さな応援演奏を行うことになっていたのだ。
まだ大きな名前を持つ前のZESTIASにとって、それは小さなステージだった。
けれどセラは、朝からどこか落ち着かなかった。
「……聞こえる」
中庭の機材を確認していたルカが、ギターケースの金具を留めながら顔を上げる。
「何が?」
セラはすぐには答えなかった。
風の向こうを見ていた。
校舎の奥。
弓道場へ続く渡り廊下の向こうから、細い声が聞こえた気がした。
歌ではない。
けれど、歌になる前の言葉だった。
セラは、導かれるように歩き出した。
「セラ?」
ルカが呼ぶ。
セラは振り向かずに言った。
「ちょっとだけ」
ルカは小さく息をつき、ギターケースを肩に掛け直した。
「また、何か拾った顔してる」
「拾ったんじゃない。落ちてきたの」
「同じでしょ」
「違う」
そんな軽いやり取りを交わしながら、ふたりは弓道場の方へ向かった。
弓道場の裏手には、小さな木陰があった。
道場の外壁に沿って白い日差しが落ち、足元には細い草が揺れている。
近くの木々の葉が、初夏の風にさわさわと鳴っていた。
そこに、弓道着姿の女子生徒がひとり立っていた。
黒い袴。
白い上衣。
凛とした横顔。
彼女は弓を持っていなかった。
ただ、遠くのグラウンドを見つめていた。
サッカー部の試合が始まるところだった。
白線の上を走る選手たちの中に、彼女の視線だけが追いかけている男子がいる。
女子生徒は、小さく息を吸った。
「……勝って」
その声は、応援というにはあまりにも静かだった。
「私のことなんか見なくていいから」
セラは足を止めた。
女子生徒は、誰にも聞こえないと思っている。
だからこそ、その言葉は真っ直ぐだった。
「ただ、前だけ見て。走って」
風が吹いた。
女子生徒の指が、胸元の紐をそっと握る。
それから、もう一度だけグラウンドを見た。
「届かなくてもいい」
セラの胸が、かすかに震えた。
「それでも私は、この想いを矢にこめる」
その瞬間、言葉がセラの中へ落ちた。
歌になる。
そう思った。
背後で、ギターの弦が小さく鳴った。
振り返ると、ルカが立っていた。
「……今の」
ルカは弓道場の方を見たまま、静かに言う。
「今、旋律が落ちてきた」
セラはうなずいた。
「でも、これは私たちの歌じゃない」
ルカも小さくうなずく。
「誰かの、まだ届いていない歌だね」
女子生徒の名前は、白石千弦といった。
弓道部三年生。
今日が、高校最後の高体連だった。
彼女が見つめていた相手は、同じ三年のサッカー部員、夏目晴翔。
小学校からの幼なじみで、中学までは同じ帰り道を歩いていた。
けれど高校に入ってから、ふたりの距離は少しずつ変わった。
千弦は弓道場へ。
晴翔はグラウンドへ。
放課後に聞こえる音も違った。
千弦の世界には弦音が増え、晴翔の世界にはホイッスルが増えた。
それでも千弦は、晴翔が走る姿を見るのが好きだった。
誰より速いわけではない。
誰より目立つわけでもない。
それでも、最後まで足を止めない。
転びそうになっても、息が切れても、前を見る。
その背中を見るたび、千弦は思ってしまう。
好きだ、と。
けれど、その言葉を口に出すことはできなかった。
高体連前の彼に、余計なことを背負わせたくなかった。
自分の想いで、彼の集中を乱したくなかった。
そして何より、千弦自身にも試合があった。
最後の一射。
最後の夏。
最後かもしれない今日。
自分の心さえ定まらないまま、誰かに想いを渡すことなどできない気がした。
だから彼女は、告白ではなく、応援を選んだ。
好きだから、振り向いてほしい。
でも、好きだから、振り向かないでほしい。
その矛盾を、千弦はずっと胸の奥にしまっていた。
その日の朝、千弦はスマホの画面を何度も閉じたり開いたりしていた。
サッカー部の連絡用アカウントに、昨日の練習写真が上がっていた。
グラウンドの端で、晴翔が笑っている。
その隣には、女子マネージャーがいた。
タオルを渡しているだけ。
ドリンクを確認しているだけ。
試合前の当たり前の風景だと、千弦にも分かっていた。
分かっているのに、胸の奥が小さく鳴る。
目をそらせない。
君の名前が光るたび、胸の奥がまた鳴った。
画面の中の晴翔は、千弦の知らない顔で笑っていた。
サッカー部の中にいる晴翔。
仲間に囲まれている晴翔。
自分のいない場所で、ちゃんと前へ進んでいる晴翔。
それが嬉しいはずなのに、少しだけ痛かった。
タイムラインに、知らない君が増えていく。
そんな言葉が、胸の奥で勝手に形になった。
千弦はスマホを伏せた。
「……大丈夫」
誰に聞かせるわけでもなく、そう呟く。
大丈夫なんて、嘘だった。
けれど今日も、平気な顔で笑わなければならない。
自分には、自分の試合がある。
送れない言葉が、手の中で震えている。
好きです。
たったそれだけの言葉が、どうしてこんなにも遠いのだろう。
弓道場の方から、誰かが弦を鳴らす音がした。
千弦は顔を上げる。
届かなくてもいい。
そう思えば、少しだけ息ができた。
届かなくてもいい。
それでも私は、この想いを矢にこめる。
昼休み。
中庭には、各競技の合間を縫って生徒たちが集まっていた。
制服の生徒。
ジャージ姿の生徒。
袴姿の弓道部員。
泥のついたサッカー部員。
翠葉学園高合唱部が並び、その前にセラとルカが立つ。
ルカはギターを抱え、静かにチューニングをした。
セラはマイクの前に立たなかった。
声を、そのまま空へ放つように立っていた。
風が、中庭を抜ける。
セラは目を閉じた。
朝、弓道場の裏で聞いた言葉が、まだ胸の奥に残っている。
届かなくてもいい。
その諦めに似た優しさ。
それでも放とうとする強さ。
ルカの指が、最初の音を鳴らした。
それは、弓の弦を引く前の静けさに似ていた。
セラは歌い出す。
目をそらせない
君の名前が光るたび
Fragile heart
胸の奥がまた鳴った
中庭にいた生徒たちが、少しずつ静かになっていく。
それは、大きな声で勝利を叫ぶ応援歌ではなかった。
誰かの背中を叩く歌でもなかった。
ただ、言えない想いが、白い矢になって空へ放たれていく歌だった。
既読のまま止まった夜も
笑い声が遠い朝も
One step, one more step
好きだけが増えてゆく
弓道場では、千弦が弓を構えていた。
的の向こうには何もない。
ただ白い円がある。
けれど千弦の耳には、遠くからギターの音が届いていた。
中庭の歌声が、風に混じってかすかに流れてくる。
「大丈夫」なんて嘘をついて
平気な顔で今日も笑う
In my trembling hands
送れない言葉が震えてる
千弦は息を吸った。
弓を引く。
肩に力が入る。
指先が震える。
その時、グラウンドから大きな歓声が上がった。
晴翔の試合だ。
千弦の心が、一瞬だけ揺れた。
見に行きたい。
走っていきたい。
彼が今どうしているのか知りたい。
でも、できない。
自分には、自分の的がある。
千弦は目を伏せ、もう一度だけ息を整えた。
好きです。
胸の奥で、言葉が形になる。
でも、今は言わない。
どうか勝って。
どうか前へ進んで。
私のことなんか、今は見なくていい。
Like a white arrow
君の空へ放った
Fading away
届かないまま
その歌声に背中を押されるように、千弦は矢を放った。
弦音が響く。
白い矢が、空気を裂いて飛んだ。
的の中心に、音が立った。
同じ頃、グラウンドでは晴翔が走っていた。
同点のまま迎えた終了間際。
味方からのパスが少し長く流れる。
届かない。
誰もがそう思った。
けれど晴翔は、足を止めなかった。
風の中で、かすかに歌が聞こえた気がした。
Will it reach someday?
その瞳の先で
Set my heart free
White arrow…
晴翔は歯を食いしばる。
届かないと思ったボールに、爪先が触れた。
転びそうになりながら、もう一歩踏み出す。
ゴール前へ折り返す。
仲間が走り込む。
歓声が爆発した。
ホイッスルが鳴る。
誰かが晴翔の背中に飛びついた。
彼は地面に膝をつき、息を切らしながら空を見上げた。
何かに押された気がした。
見えない何かに。
けれど確かに、背中を押された。
試合が終わった後、千弦は弓道場の外からグラウンドを見ていた。
晴翔たちが勝ったことは、歓声で分かった。
胸の奥が、ほっとゆるむ。
よかった。
本当に、そう思った。
その時、晴翔のもとへ女子マネージャーが走っていくのが見えた。
タオルを渡し、何かを話している。
晴翔は息を切らしながら笑っていた。
何でもない光景だった。
部活の中では、きっと毎日あるような一場面だった。
それなのに、千弦は足を止めたまま動けなかった。
誰かの隣にいる君を、笑って見送れるほど、私は強くない。
胸の奥で、言葉にならない痛みが揺れる。
千弦はそっと目を伏せた。
まだ好きで痛い。
そう思った。
中庭では、セラが二番の歌詞へ入っていた。
タイムラインに
知らない君が増えていく
昨日の傷を
スクロールで隠した
Other voices fade
君の声だけが
イヤホンの奥で
まだ消えてくれない
ルカのギターが低く鳴る。
まるで、胸の奥にしまった言葉をなぞるように。
Faraway feelings
近くにいるほど遠くて
Fading love
それでも守ってしまう
千弦は弓を抱え直した。
自分の想いが、情けなく思えた。
応援したいと思ったのに。
前へ進んでほしいと願ったのに。
彼が誰かと話しているだけで、こんなに苦しくなる。
好きという気持ちは、思っていたよりずっと綺麗ではなかった。
まっすぐで、優しくて、強いものだけではなかった。
胸の奥で勝手に膨らみ、勝手に傷つき、勝手に痛む。
それでも消えてくれない。
「友達」のふりが上手くなって
本音だけが下手になった
In my trembling hands
押せない送信が残ってる
セラの声が、中庭から空へ伸びていく。
誰かの隣にいる君を
笑って見送れるほど
Not strong enough, not yet
まだ好きで痛い
千弦は唇を噛んだ。
泣きたくなかった。
今日だけは、泣きたくなかった。
弓道場の中から、次の立ちの呼び出しが聞こえる。
千弦は顔を上げた。
自分には、自分の的がある。
そう言い聞かせるように、道場へ戻る。
近づくほどに
言えないことが増えて
This fragile love
胸の奥で折れそうになる
千弦は二射目を構えた。
さっきよりも、心は乱れていた。
指先が冷たい。
的が少し滲んで見える。
No ending yet
ただ、片道のまま
Wounded heart
君へ飛んで消えてゆく
片道のままでいい。
千弦は思った。
この想いが返ってこなくてもいい。
自分の名前を呼んでくれなくてもいい。
誰かの隣で笑っていてもいい。
それでも。
それでも、好きな人の背中を押す矢でありたかった。
弓を引き切る。
呼吸が静かになる。
世界から、余計な音が消えていく。
ただ、弦の張りだけがあった。
ただ、胸の奥の痛みだけがあった。
千弦は矢を放った。
弦音。
白い矢が、真っ直ぐに飛ぶ。
的の中央、黒い星のような一点に吸い込まれる。
その音を聞いた瞬間、千弦はようやく息をした。
中庭で、セラは最後のサビを歌っていた。
Like a white arrow
君の空へ放った
Fading away
光になって
Will it reach someday?
報われなくても
Last love I release
White arrow…
合唱部の声が重なる。
それは悲しいだけの歌ではなかった。
報われないかもしれない想いを、ただ嘆く歌ではなかった。
届かないと知りながら、それでも手放す歌だった。
好きな人の明日を照らすために、自分の胸から白い矢を放つ歌だった。
ルカのギターが高く鳴る。
それは弦音のようであり、ホイッスルのようでもあり、誰かが胸の奥でずっと鳴らしていた小さな勇気の音のようでもあった。
歌が終わる。
風が戻る。
中庭に、拍手が広がった。
セラは息を吐き、弓道場の方角を見た。
ルカも同じ方を見る。
そこには何も見えない。
けれど、セラには分かった。
今、どこかで矢が放たれた。
そしてその矢は、きっと真っ直ぐ飛んだ。
__________
その日の夕方。
サッカー部の片づけが終わり、晴翔はグラウンド脇でスパイクの泥を落としていた。
女子マネージャーが、記録用紙を持って隣に立つ。
「勝ったね」
「うん」
晴翔は短く答えた。
まだ息が完全には戻っていない。
けれど、その顔にはどこか落ち着かないものがあった。
女子マネージャーは、そんな晴翔を見て小さく笑った。
「で、言うの?」
晴翔の手が止まる。
「……何を」
「白石さんに」
晴翔は顔をそらした。
女子マネージャーは、記録用紙で軽く晴翔の肩を叩く。
「分かりやすすぎ」
「うるさいな」
「今日勝ったら言うって、自分で言ってたじゃん」
晴翔は黙った。
グラウンドの向こう、弓道場の屋根が見える。
千弦の試合は、もう終わったのだろうか。
会場が同じ学校なのに、結局見に行くことはできなかった。
すぐ近くにいたのに。
応援したかったのに。
「……弓道ってさ」
晴翔がぽつりと言う。
「音、遠くまで響くよな」
女子マネージャーは少し驚いたように目を瞬かせた。
それから、呆れたように笑う。
「それ、白石さんのこと考えてたってことでいい?」
晴翔は答えなかった。
ただ、少しだけ耳が赤かった。
翌日の放課後。
高体連のざわめきが嘘のように、翠葉学園はいつもの学校に戻っていた。
グラウンドにはまだ白線の跡が残っている。
弓道場の前には、昨日より少し静かな風が吹いている。
セラとルカは、機材を片づけた帰りに校舎裏の渡り廊下を歩いていた。
「昨日の曲」
ルカが言う。
「まだ、指に残ってる」
「私も」
セラは小さく笑った。
「喉じゃなくて、胸に残ってる」
その時だった。
校門へ続く並木道の下を、二人の生徒が歩いているのが見えた。
千弦と晴翔だった。
ふたりは並んでいた。
少しだけ距離を空けて。
けれど、その距離は昨日までとは違って見えた。
晴翔が何かを言う。
千弦が立ち止まる。
セラとルカは、思わず足を止めた。
風に乗って、晴翔の声が少しだけ届く。
「昨日、勝ったら言おうと思ってたんだ」
千弦の目が大きくなる。
晴翔は照れたように笑って、頭をかいた。
「ずっと言えなかった。高体連が終わったらって決めてた」
千弦は何も言えなかった。
ただ、制服の胸元を、ぎゅっと握る。
晴翔が続ける。
「昨日の試合中さ、変なんだけど……誰かに背中を押された気がした」
千弦の目が揺れる。
「だから、走れた」
晴翔はまっすぐ彼女を見た。
「千弦のことが好きです」
風が止まった気がした。
千弦は、しばらく下を向いていた。
それから、泣きそうな顔で笑った。
「……私も」
その声はとても小さかった。
けれど、昨日のどんな声援よりも、たしかに届いた。
セラは何も言わなかった。
ただ、ふたりを優しく見守っていた。
ルカが、ギターケースの肩紐をそっと直す。
「……届いてたんだね」
セラはうなずく。
弓道場の方角から、弦音がひとつ響いた。
的へ向かって放たれたはずの白い矢。
誰にも見えないまま、風を越えて、好きな人の背中を押した矢。
届かなくてもいいと願った想いほど、
案外、いちばん深く届いてしまうのかもしれない。
並木道の向こうで、千弦と晴翔がまた歩き出す。
今度は、さっきより少しだけ近い距離で。
セラはその背中を見送りながら、ぽつりと言った。
「片想いじゃ、なかったんだ」
ルカは少し考えてから、やわらかく首を振った。
「でも、片想いだった時間も、きっと嘘じゃないよ」
セラはルカを見る。
ルカは、並木道の先を見つめていた。
「届かないと思っていたから、あんなに真っ直ぐだったんだと思う」
セラは、その言葉を胸の中で繰り返した。
届かないと思っていたから。
見返りを求めなかったから。
ただ、前へ進んでほしかったから。
白い矢は、あんなにも綺麗に飛んだのだ。
風が吹く。
初夏の光の中で、校庭の木々が揺れる。
グラウンドの白線が薄く光り、弓道場の屋根の向こうに、青い空が広がっていた。
世界にはまだ、誰にも聴かれていない歌が眠っている。
誰かの胸の奥で、言葉になれないまま。
誰かの背中へ、届かなくてもいいと願いながら。
セラは静かに息を吸った。
ルカのギターケースが、かすかに鳴る。
それが、『White Arrow』の始まりだった。
Even if it never reaches you,
I’ll still pour this feeling into my arrow.
届かなくてもいい。
それでも私は、この想いを矢にこめる。
ZESTIASの二人が見つけた、二つ目の“誰モ知ラナイ歌”。
白い矢の片想い 編
(終わり)
ED曲
White Arrow / ZESTIAS
https://youtu.be/xnChaGd40-A
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
前作「よつばのクローバー編」に続き、今回はZESTIASが見つけた二つ目の“誰モ知ラナイ歌”として、弓道部の少女・千弦の片想いを描きました。
届かなくてもいい。
それでも私は、この想いを矢にこめる。
好きだから伝えたい。
けれど、好きだからこそ相手の邪魔をしたくない。
そんな矛盾した気持ちは、青春の中ではとても切実で、そしてとてもまっすぐなものだと思います。
千弦の矢は、告白のためではなく、晴翔の背中を押すために放たれました。
けれど、届かなくてもいいと願った想いほど、案外いちばん深く届いてしまうのかもしれません。
あるいは、セラとルカが奏でたZESTIASの旋律が、その想いに軌道を与えてくれたのかもしれません。
千弦が矢を放ち、晴翔が走り、二人が自分の言葉で気持ちを伝える。
ZESTIASはその恋の主役ではありません。
けれど、言葉にならなかった片想いがまっすぐ飛ぶために、そっと音で背中を押した。
そういう意味では、今回のZESTIASは“ナイスアシスト”だったのだと思います。
セラには言葉が落ち、ルカには旋律が落ちる。
二人はまたひとつ、誰にも聴かれていなかった歌を見つけました。
ZESTIASが次にどんな歌と出会うのか、また見守っていただけると嬉しいです。
※本作品の主たる本文の作成については、作者自身が収集した資料、アイデア及び独自の基礎設定をもとに、自身が考案設計した文章や詩の校正並びに部分的な英訳についてのみ、その創作上の補助的支援の範囲を超えないものとしてAIを利用するに留めており、その独自性を著しく欠くものではありません。但し対象外の部分(世界観を演出する補助的要素となるリンク先楽曲、挿絵についてはこの限りではありません。)




