趣味を理由に婚約破棄されてしまいましたが、後に、その趣味によって大成功することができました!
私は服を作ることが好きだ。
物心ついた時から興味があった。
小さい頃、私は、私用の服を作ってくれている母にいつも寄っていっていたらしい。もしかしたらそれに影響を受けていたのかもしれない。母は服を作ることが得意だった、だから、その姿に憧れていたという要素もあったのかもしれない。もっとも、憧れていた意識があったわけではないのだけれど。今思えば、母が素敵な服をよく作ってくれたことも恐らく無関係ではなかったのだろう。
……だが、婚約者である彼リゼルは、私の趣味を良く思っていなくて。
「お前との婚約だが、破棄とすることとした」
服作りを好む私を彼は分かりやすく嫌っていた。
「え」
その日、彼は自ら私の家へやって来て、関係の終わりを告げてきたのだった。
「どうせお前はこれからも服作りをやめないのだろう」
「それは……そう、ですね、やめるつもりはありません」
「だから終わりにすることにした」
「リゼルさんはどうしてそんなにも服作りを嫌うのですか?」
「馬鹿か! 高貴な女性は服など作らない! 俺に相応しいのは高貴で忠実な女だ、服を作ることを趣味としているような安っぽい女は俺には相応しくない!」
リゼルはすぐに怒り出す。
いつものことだから驚きはしない。
ほんの少しでも気に食わないことがあると声を荒くするのが彼の特徴的なところだ。
「楽しいですよ、服作り」
「黙れ!!」
「あの……リゼルさん、落ち着いてください。そうやって大声を出せばすべてが思い通りになると考えていらっしゃるのならそれは間違いです」
「うるさい!! お前のような安い女に物申す権利はない。お前はな! 黙って! 言いなりになっていればいいんだ!」
……駄目だ、話にならない。
話し合いができれば少しは分かり合えたかもしれない。けれども今の彼とではそれができない。こちらが話し合おうとしてもあちらがそれを拒むから。私一人がどれだけ頑張ったとしても、向こうがその気になっていない以上どうしようもない。
「今さらあれこれ話し合う気はない。お前のような安っぽい女は要らん、それがすべてだ。ということで、話はここまでとする。……さらば」
こうして私たちの関係は終わりを迎えた。
だが個人的にはそれで良かったと思っている。お互いを理解するには時間がかかりそうだったから。否、きっと無理だっただろう。彼も、私も、だが。多分、このまま進んでも、相手を完全に理解することはできなかったと思う。ならば早めに別れるというのも一つの道だろう。分かり合えないままで、寄り添い合えないままで、共に生きていくのは至難の業だ。
◆
あれから数年が経った。
私は成功した。婚約破棄された後より一層熱心に服作りに取り組むようになった私は、やがて服作りの道で大成功し、光の速さで時の人となった。今では引っ張りだこ。服作り界のスターとして、自分でも驚くくらいの人気者になっている。
毎日物凄く忙しい。
けれどもやりがいがあることに打ち込めているので不快感はない。
むしろ非常に前向きに働けている。
私はこれからもこの道を突き進んでゆくつもりだ。
光り輝く頂へたどり着けた私とは対照的に、元婚約者である彼リゼルは暗闇へと堕ちていった。
女遊びのし過ぎで多額の借金を抱えたリゼルは、お金を回収しようと迫ってくる物騒な男たちから逃げ回っていたそうだが、逃げきれずやがて捕まってしまったそうで。
リゼルに光ある未来はなかった。
彼はこれから先ずっと奴隷のように扱われて生きていくのだろう。
地獄のような世界で苦しみながら歩んでゆくこととなるに違いない。
◆終わり◆




