聖都アルドール編 第四話:大地の歪曲と、魔力の鉄槌
祭壇の地下。
ライオスは再調整された剣をもって、残りのロック・ゴーレムと対峙する。
彼の剣は、岩の巨人の最も弱い弱点を狙い、正確に、そして容赦なく核を砕いていく。
「急げ、サトシ!こいつらは復活する!」ライオスが叫んだ。
ライオスの剣閃が、三体のロック・ゴーレムの分厚い岩の装甲を切り裂く。
彼は踏み込みの力を剣筋に乗せ、装甲が薄くなった関節部を容赦なくえぐり取るが、歪曲の魔力ですぐにその傷を塞ぎ。
一体を打ち砕く間に、別の二体が、唸り声を上げて彼に迫った。
一方、サトシは魔杖の根元、大地に突き刺さっている場所に膝をつき、集中していた。
『精密なる構造把握』!
彼の視界には、魔杖から大地へ流れる**『歪曲の魔力』が、数千もの張り巡らされた根のように絡みつき、岩盤の構造を物理的に変形させている様子が、鮮明な図面として映し出される。
「これほどの巨大な『歪み』を、この細い杖一本で作り出しているのか…」
ライオスは、迫り来るゴーレムをその場で跳躍し、直下でぶつかり合う二体のゴーレムの頭上を通過した。彼は背後の壁に一瞬、剣を突き立てて踏ん張り、反動を利用して一体の首筋を深々と切り裂く、しかし、ゴーレムは首が半分砕けてもなお、鈍重な拳を振り上げてライオスを叩き潰そうとした。
岩の破片が飛び散り、サトシの側にも砂利が降る。
サトシは悟った。
単に杖を引き抜いても、ねじれて固着した大地は元には戻らない、そこで、彼は杖が持つ『歪曲の魔力』を逆転させ、大地の構造を『正しい状態』へ誘導する必要があると判断した、しかし、大地という巨大な構造物に対して、彼の肉体の力が及ぶはずがない。
「サトシ解析はまだか!」ライオスが焦りの声を上げた。
サトシは滲み出る汗を手で拭い取りながらフィーナを呼んだ。
「フィーナさん!あなたの力が必要です!」
サトシの指示が飛んだ。
「この杖の魔力の**『流れ』を解析し、魔力線の『最も流れの悪い所』を割り出して、そこに『鋭い一瞬の力強い魔力の塊』を叩き込んでください!私の『構造把握』を信じて、あなたの『魔力操作』**ならできるはずです!」
「私の魔力操作で?」フィーナは驚いたが、サトシの目は、かつてないほど冷静だった。
【ライオスの最終防御】
ライオスは、残るゴーレムを、狭い祭壇の中央で引き付けていた。
彼の剣技はもはや、正確な『点』を狙う作業ではなく、ひたすら時間を稼ぐための『面』を形成していた。
彼の動きは剣の軌跡で結界を張っているかのようで、疲労を悟られないよう、鋭い呼吸で体勢を立て直した。
岩の拳が彼の頬をかすめる。もう、限界だった。
【サトシとフィーナの連携】
「そうです!私は、大地の構造の**『ズレ』を把握する。あなたは、そのズレを解消するための『魔力の流れ』**を調整する。私の手は『構造の定規』。あなたの魔力操作は『大地を動かすハンマー』です!」
フィーナはゴーグルの奥の目を輝かせた。
「わかりました!やってみせます!錬金術師の意地にかけて!」
フィーナは即座に、周囲の魔力ラインから魔力を集め、その全てを一点に集中させ始めた。
サトシは、再び杖に触れる。彼の**『構造把握』は、大地が『正しい構造』に戻るために必要な魔力の『角度』と『時間』、そして『圧力』**を、フィーナにフィードバックした。
「フィーナさん、今だ!魔力の流れを、この一点に深く!強い一撃を!」
ライオスの剣が最後のゴーレムを砕く、その刹那。
フィーナの前方に、眩いばかりの青い光が放たれた。その魔力は、サトシが指示した**『大地の魔力ラインの歪み』に正確に、そして『力強く』**、まるでガラス細工を扱うように優しく、しかし確実に叩き込まれた。
**直後、ゴォン!と、大地の奥底から響く鈍い音が、砦の地下全体を揺るがした。魔杖から噴き出していた『歪曲の魔力』が逆流し、サトシの視界にあった岩盤の『ねじれ』が、まるでスローモーションのように、数万年の時を逆行するかのように、自らの力で『正しい位置』**へと戻っていくのが見えた。
大地が、**調整**されたのだ。
魔杖は光を失い、単なる古びた棒に戻った。そして、周囲を覆っていた**『歪みの魔力』**が霧散し、地下水路の澄んだ音が静かに響き渡った。
「やった…大地の構造が、完全に…**再調整**された!」フィーナは興奮してサトシに抱きついた。
「サトシ…」ライオスは汗を拭い、「あんたは本当に、たいしたもんだ!」
サトシは、杖が突き立てられていた場所に手を置いた。岩盤は、もうどこにも**『歪み』**がない。
「これで、リーフ村の不作は止まるでしょう」
しかし、サトシの視線は、杖が突き立てられていた場所に釘付けになった。その岩盤の奥には、わずかに光る、極めて微細な『彫り込み』**が見える。
サトシは、慎重にその微細な痕跡を**『構造把握』した**。それは、この杖を設置した者が、この岩盤の**『正確な構造』と『魔力の流れ』を、サトシと同じかそれ以上に完全に理解していたことをサトシは感じたった。
「この歪みを作り出したのは、ただの魔術師ではない…」サトシは顔を上げた。「私と**『同じ構造理解』を持つ、何者かだ!」
新たな敵、それは、サトシと同じ**『構造』を専門とし、その技術を『世界を歪ませる』ために使っている、『歪曲の使徒』**の存在を、サトシは予感した。彼の異世界での真の戦いは、今、始まったばかりだった。




