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『元カイロプラクターのおっさんが、チート能力「構造把握」で異世界を「調整」します ~聖剣も、英雄の骨も、大地の歪みも、俺の神技で正しく組み直す~』  作者: ナタネ
聖都アルドール編

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聖都アルドール編 第二話:剣士の誓いと英雄のさらなる調整

サトシの言葉は、五年間、諦めと後悔の中に沈んでいたライオスの魂に、真っ直ぐに突き刺さった。

「…私の本職は、『調整師』です。あなたという『人』の構造を、最高の状態に『再調整』してみせましょう」

ライオスは、その真剣な眼差しに、かつて戦場で感じた、命懸けの覚悟と同じ種類の熱を感じた。

「…好きにしろ。ただし、無駄だとわかったら、二度と俺に触れるな」

ライオスが吐き捨てた言葉には、もはや虚勢はなかった。

サトシは再び、ライオスの右肩に手を当てる。彼の能力**『構造把握』は、砕けて再結合された骨の構造、癒着した腱の繊維、そして、その深部にわずかに残る『歪曲の魔力』《ディストーション・マナ》(謎の魔力)までを、鮮明な設計図のように描き出していた。

(『歪曲の魔力』は、謎の魔力を認識できるようになったサトシのビジョンに映し出された名前だ)


「痛みはありますか?」

「ない。不思議なことに、あんたに触れられてから、長年の鈍痛が少し引いた」

サトシは頷いた。彼は、施術の前に、周囲の過度に緊張した筋肉と腱に対して、手技による丁寧な**『リリース』**を施していた。これは、異世界のヒーリング術ではなく、彼が地球で培った熟練のカイロプラクティック技術だった。

「これから、**『本丸』**を直します」

サトシはライオスを、自作の頑丈な治療台に座らせた。肩関節の可動域を確保するため、慎重に角度を調整する。

「この調整は、一瞬で終わります。しかし、少しの衝撃が走ります。過去の事故を思い出して、反射的に力を入れないでください。あなたの身体の、最も適切な位置に組み直します」

ライオスは、固唾を飲んで頷いた。

サトシは集中力を極限まで高める。彼の視界では、ズレた関節と腱が、**蛍光色に光る『歪み』**として見えていた。彼は、その『歪み』を打ち消すための、最適な『角度』と『速度』、そして『コンタクト・ポイント』を、脳内でミリ単位で計算し尽くした。

「今です」

ライオスが息を吸い込む、その一瞬。

サトシの右手が、まるで神の定規のように正確に、**肩甲骨と上腕骨の接合部にある、コンマ数ミリの『ズレの核心』**に触れた。そして、長年の臨床経験で磨き上げられた、**方向に最大の効率を生む『プレッシャー』**を、一撃で加えた。

カッ!

静かな、しかし、骨の深部まで響くような澄んだ音が、作業場に響き渡った。

ライオスの全身から、長年の痛みが抜け落ち、代わりに、血の巡りが一気に良くなったような熱が広がる。

「…くそ」

ライオスは、呻きながら、右腕をゆっくりと動かした。腕は、まるで五年前の全盛期に戻ったかのように、滑らかに、何の抵抗もなく、頭上まで上がった。

「本当に…治したのか…!」

「骨格のズレは解消しました」サトシは汗を拭った。「しかし、これで終わりではありません。これからが**『本当の剣士』**にするための『調整』です。」

サトシは、自作のサポーターを取り出した。それは、彼のDIYの経験に基づき、人体の構造力学を計算し尽くして作られた、この世界には存在しない**『補強具』**だった。

「これは何だ?」

「あなたの肩関節を、動かしながら正しい位置で安定させるための**『添え木の様な物』です。次に、剣を振ってみてください。全てを治したわけではありません。『歪み』**が残っています」

サトシは能力を発動した


ライオスは、壁に立てかけてあった、ロングソードを握った。


シャキン!

ライオスは、軽く一閃する。その剣筋は、かつて『聖都の剣』と呼ばれた英雄の片鱗を見せる、鋭いものだった。

しかし、サトシの目には、全く違うものが映っていた。


ライオスの骨格の連動キネティック・チェーンが可視化される。剣を振るう際、腰椎と胸椎の連動にわずかな『タイムラグ』があり、その負担が、調整したばかりの肩に、不必要な『摩擦』を生み出している。さらに、剣に流れる魔力マナのルートが、彼の骨格の歪みに引きずられ、最適な効率で伝達されていないのが見えた。

「無駄が多い」サトシは即座に指摘した。

「なんだと?」ライオスが顔をしかめる。

「あなたの剣筋は、確かに速く、強力です。しかし、本来持っている力の二割を、無駄な抵抗に使っています。特に、剣を振り下ろす瞬間の**『腰の回転』**。コンマ数秒、遅れている」

サトシは、床にチョークで一本の線を引き、ライオスの立ち位置と足の角度を指示した。

「その線に、コンマ数ミリ、体重を移動させてください。そして、骨盤の傾きを、あと二度…こちらに」

ライオスは半信半疑で指示に従い、再び剣を振った。

ヒュッ!

剣が空気抵抗を斬り裂く音が、先ほどとは全く違う、鋭く澄んだ音に変わった。その一撃は、ライオス自身が驚くほどの速度と威力を帯びていた。

「バカな…たった、足の位置と腰の角度を直しただけで、こんな力が…」

「あなたの身体は、ポテンシャルの塊です。ただ、その**『設計図』**が、少しずれていただけです。このフォームなら、五年前の全盛期を超えられる」

ライオスは、剣を両手で握り締め、深く、長く息を吐いた。彼の曇っていた瞳が、かつての英雄の光を完全に回復し、サトシを真っ直ぐに見据える。

「サトシ…あんたは、俺の身体を、**『最高の状態』**に調整した。これ以上、何を望む?」

ライオスは剣を鞘に収め、一歩前に進み出た。

「俺は、五年前、負けたのではない。**『壊れた』のだ。あんたは、その俺を完璧に『修復』してくれた。

あんたが困った時、オレを呼んでくれ!

いついかなる時でも必ず駆けつける!

ライオス・ガルディウス――聖都の英雄は、**『伝説の調整師』**の隣に立つ、最強の剣となることを、ここで誓った。

「あなたの好意は受けとります、ライオス」サトシは微笑んだ。「しかし、私は戦いには向いていません。私の仕事は、人々を健康に導く事です。あなたの力をお借りせずに済む事を祈ります。」

こうして、サトシは、元英雄を『調整』し、異世界での冒険と**『歪み』**に立ち向かう、最初の仲間を手に入れたのだった。

歪曲の魔力』(ディストーションマナ)

この世界の自然界に存在する生命エネルギーである「マナ」が、何らかの強い衝撃、あるいは異質な干渉を受けた際に発生する、**「構造を歪ませる力」を持った特殊な魔力。通常の魔力とは異なり、生命体や物質の持つ「あるべき設計図」**を破壊・変質させ、不調和ディストーションを生じさせる。



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