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取り調べ

――1934年4月22日、横須賀海軍工廠造船部応接室、端末2台とラップトップ、高田あき


横須賀海軍工廠造船部? なにそれ。船作ってる工場? 広いな。工場入ってからのほうが長い。

軍人っぽい制服の人は少ないな。女の人は少しだけいるけど、着物にスモックとかだ。

あ、こちらが昨日お世話になった事務の方?


「高田さんが責任者ということでよろしいのですね」

「昨日は大野がお世話になりました。この件については私が責任をもって対応させていただきます」

「了解いたしました。申し訳ないのですが、予算執行の都合上、身分の確認をせねばなりません」

「運転免許証でよろしいですか」

「運転免許証をお持ちとはまた。高田あきさん。東京都にお住まい。昭和63年にお生まれ。なるほど。この令和というのは昭和の次の元号ですか」

「いいえ、あいだに平成があります」

「大野さんにもお願いしたのですが、本籍、学歴、所属をこちらに書いていただけますか」

「はい、これで」

「わかりました。これらをちょっとお預かりして確認させていただきますので。少々お待ちください」


やらかしたかも。まいいか、どうせばれるし。どんどんいっちゃえ。


「高田さん、昭和生まれだったんですね」

「そっち!?」


制服の人がきた。


「造船少佐 佐藤大と申します。この計算機、これはなんですか」

「半導体素子を使用した計算完備な計算機と記憶装置、発光素子による表示装置、静電容量感知による操作機構、マイクロ波暗号通信機、カメラ、測距機、光源、時計、加速度計、リチウム二次電池などを統合した機械です。計算能力は毎秒10の13乗回程度、記憶容量は10の12乗文字程度、通信速度は毎秒10の9乗文字程度、電池容量は50万ジュール程度です」


あ、黙った。優秀そうなのに。ちょっと情報量多かったかな? デモでつなごう。


「こちらは、昨日お渡ししたものの中身ですが、前面ほぼ全体で表示と操作が可能です。このように動画を撮影しその加工ができます。また物体の表面を3次元の点群として記録し、回転して見ることもできます。さらにこれらをもう1台に転送することもできます」


復旧しないな。セールスしてみるか。


「こちら100台を、5年契約、1台1日十円、ソフトウェア、ハードウェアの保守、開発支援、充電装置つきでお貸しすることができます。こちらでソフトウェアすべての変更・更新が可能です。いかがですか?」


OSとファームウェアのビルド環境ローカルに用意してるからね。会社のセキュリティルール違反だけど。

あ、佐藤さんいきかえった。


「技術的内容については、各項について書面にまとめていただいた上で、質問させてください。で、その

ソフトウェアというのはなんですか」

「先程申しました計算完備、すなわち時間や容量の制限がありますが計算可能な問題をすべて計算する能力を実現するために書かれる命令の列の集合体です。計算装置は記憶装置に格納された命令の列を参照し演算や、次に実行すべき命令を選択できます。物理的には記憶装置に書かれた値でしかありませんので、ハードウェアに対比されるものとしてソフトウェアと呼んでいます」

「要はソフトウェアがあれば、何でもできる機械であると」

「おおむねそうですね。たとえば設計情報があれば、有限要素法によって構造力学や流体力学の問題を数値的に解くことができます」


あ、また止まった。造船だとこのあたりやってるはずだよね。もしかして計算機で代替されて仕事なくなる人? あ、派手な制服の人がきた。


「悪いが話は聞かせてもらった。造船部長の黒田だ。無許可の無線機の設置と使用により無線電信法違反の現行犯で逮捕する。山中の車や搭載する無線機はすべて押収、1000円以下の罰金か1年以下の懲役になるだろう」


えー、ここでまた電波法? 


「それがいやなら、工廠の計算士として住み込みで働けば、さしあたりこの件はこの場にとどめてやってもよい。工廠で働くのを承知すれば、無線機についてはいずれ補償する。さしあたりは部内かぎり判任官あつかいの雇員だが、大学もでておるようだし、勤務に励めば奏任官になれるよう上申する。そうなればこの佐藤とほぼ同格だ。奏任官になる頃には外に出せるようにもする」


あのスモックとか着せられて外出禁止? そーにんかんて何? 懲役はありえないから一択だけど。


9997/3/0/0


無許可のラジオ受信も犯罪なので、実は昨日の時点でアウトです。

女子の服装については、堀元実著、「鳶色の襟章」を参考にさせていただきましたが、こちらは呉の話で、横須賀でどうだったかはわかりません。

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この時代のアナログ通信機で現代のデジタル(衝撃波)通信を受信できるのだろうか
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