決戦?
残酷な描写があります。ご注意ください。
――1942年5月3日、大本営 戦争指導室、従軍服、高田あき
よばれちゃった。おかしいな。ゴールデンウィークだし私の仕事は終わった気分でいたんだけど。スクリーンに情勢が表示されていてリアルタイムで動いてる。眠い。
情勢は想定シナリオ内。英は批難をだしてくれている。仏中の動きはなし。モンゴルはソよりで参戦している。
航空機による侵攻は戦闘機で対応。B17でどうにかなるわけがなかろう。戦力比4対1ぐらいは維持されているので余裕。空爆は被害を出したが、限定的。ただし壊滅もさせていない。
米艦隊は誘導兵器の前に数時間で壊滅。海軍は端末を消費、スクリューなどの限定的破壊が可能な兵器を多用して、死亡者を減らそうとしてる。
潜水艦は、さしあたり脅威にならないのは放置。まだ200隻ぐらい残ってる。
ソの満州侵攻部隊は複数方面から国境においてあった電動カカシ部隊を突破して侵攻したけど、50kmほど侵攻させたところで地雷原爆破からの火力制圧。敵は1時間あたり数万を失っている。リテラルに屍山血河。空を飛ぶものすべて落とし、トランジスタ使用の誘導ロケットを投入して10cm以上の弾を撃っている砲全部、電波をだしてるものすべて撃破。軍管区司令部は事前情報で殲滅。もちろん全部じゃないけど大隊司令部から軍司令部ぐらいまで一通りつぶしてるはず。部隊によっては中隊がクレムリン直轄、もちろん報告も命令も通らないけどね。
こちらの部隊も予定通り機能している。タイミングを見て大隊単位で後退して第2線部隊と交代していく。防衛ラインにギャップができそうになると軍予備で対応している。すばらしい。
樺太は海軍が使えるから余裕。千島は防空戦だけだね。北海道や朝鮮半島は何も起きていない。
どっか抜かれるかもってことで中央直轄の予備兵力を用意してたみたいだけど出番はなかった。新設師団ばかりなので安心。参謀たちは分析やシミュレーションをし続けてるけれど、だれも命令は出してない。防空が完璧なので補給ラインは順調。一部でゲリラ活動があったけれど、これも大体は補足されてた。
報道班は忙しそう、一日中特別番組流してる。さすがにこの画面流すわけにもいかないから手動で矢印動かして状況表示ね。時々死傷者のリストも流れる。え、なんかしゃべれ? 私そういうのやってないんですけど。ちょっと隅の方で仮眠させてもらいます。
――同日夕方、大本営 戦争指導室、従軍服、高田あき
特別番組で仮眠中の私が放送されていたらしい。ひどくない? 不休の事前調整の疲れでお休みになる動員局次長てな、一応好意的キャプションだったけどさ、なんだかねえ。
海軍は溺者救助を続けている。戦艦、空母各数隻鹵獲し多数の捕虜を確保した。艦隊の様子の動画は米国で流す予定。
空襲は止まった。まあ送り出した部隊があれだけ削られれば多少は考えるよね。
対ソ対米放送も短波ラジオから始めている。淡々とした状況報告と、確認できた死者や捕虜の名前、所属など。こっちの損害も放送してるよ。満州の後方向けにはソ連のラジオ局潰したうえで同じ周波数で放送かけている。
夜になって大勢は決した感がある。それでも満州の陸戦は続くよ。前がどうなってるかわからないので事前計画どおり第2陣部隊が前進してきて、第1陣と同じ様に溶けていく。電波出してないので位置不明だった司令部も、伝令の動きで発見できたので叩く。
また放送されるとやだからっていってお家帰りました。まあなんかあったら呼ばれるでしょ。
――1942年5月4日、大本営 戦争指導室、従軍服、高田あき
2日目
予定外のことは起きなかったらしい。
特別番組はやることなくなって、初期の死傷者のエピソードとか掘り出し始めてる。向こうは前線でまだ時速1万人以上溶けてるのに。
前線に余裕が出てきたので、LORAN網で誘導した無人機を使って、シベリア鉄道はイルクーツクあたりまで細かく切断。樺太も安定したから沿海州は艦砲射撃。
前線は朝鮮半島を除き国境から100kmほど後退した。チチハル、北安、ジャムスあたりが防衛拠点。予定通り。それでもこちらにも万単位の被害が出ている。特に満州の陸軍。頭数でみると戦力比7対1だったからね。死傷者も多いけど、メンタルが崩壊する人も多い。交代はしてもらってるし、機関銃とか地雷とかトーチカとかあるにせよ、果てしなく続いてくる敵兵を何時間も撃ち続けるとか人間にはできないよ。死体の山の陰から撃ってくるんだし。映像でもつらい。戦車のほうが機械だから怖くないらしい。これはシミュレーションじゃ体験できないね。これさすがにどこにも流せないな。
参謀どもが士気が足りんだの何だの言ってたので、前線で小銃撃ってきますか、それとも軍刀ですかといったらだまった。おかしいな。軍刀抜かないの?
旧型中心に陸軍の航空機の損害も激しい。敵機が多すぎる。北太平洋で防空戦やってた海軍機の一部が満州に移動。
海軍は、潜水艦掃除を始めている。全部位置わかってるから被害はでないんだけど、ほっとくと商船動かせないからね。まだ100隻ぐらい残ってる。
――1942年5月5日、大本営 戦争指導室、従軍服、高田あき
3日目
敵はまだくるけど、満州の前線は安定。戦場掃除させたくないからちょっとずつ後退している程度。メンタルの維持重要。米側はたまに偵察くるぐらい。無理だってば。
捕虜が多い。ソから10万単位、米1万前後。あらかじめ収容所は用意してあったけれど、早めに解放しないと維持コスト高すぎ。
海軍は余裕ができた。ウラジオストク近辺、グアム、ルソン島、カムチャッカ南部、アリューシャン西部など近すぎるところは降伏勧告。モンゴルには一応停戦交渉。どれも通らないけど。
――1942年5月6日、大本営 戦争指導室、従軍服、高田あき
4日目
満州の攻勢もほとんどの前線で停止。戦場掃除させたくないからちょっと後退して可能な範囲で予備部隊と交代。バイオハザード怖いので、前線近くの屍山は空爆で燃やす。野戦病院も余裕があるので、メンタルの危なそうな人は収容してカウンセリング。余裕ありまくり。参謀たちは勲章の話してる。
もう終わりでよくない? ねえ。
――1942年6月、大本営 情報局、従軍服、高田あき
攻勢も来ないけど停戦も降伏もなんにも通らないよ。
外務省は英国の仲介で米ソとの停戦交渉をはじめている。
海軍はグアム、カムチャッカ南部、アリューシャン西部を押さえていく。もちろん全部上陸するわけではない。艦砲射撃して封鎖して放置。アリューシャンのアッツ島は上陸して補給基地と飛行場を建設。
ウランバートルとウラジオストクにはビラを撒いてみる。
ソ捕虜は到底収容しきれないので、搭乗員や士官などをのぞき、トルコ経由で解放すべく送り出している。米捕虜も早めに解放予定。
陸軍はちょっとずつ失地回復。北樺太も占領。
――1942年7月、大本営 情報局、従軍服、高田あき
ダッチハーバーを押さえてニコルスキー島に上陸。
満州は旧国境線を概ね回復。シベリア鉄道の一部を確保。ウラジオストク包囲。ウランバートル侵攻。
捕虜解放が進んでいる。
――1942年8月、大本営 情報局、従軍服、高田あき
中間選挙、戦時だから中止だって。米国内の反戦感情は爆発。だまされた感を誘導する工作をしています。真空管が切れてテレビやラジオが動作しなくなって激怒してる人もいる。交換用の真空管にプレミアがつきはじめてる。米国で生産できないからね。
モンゴルとの停戦成立。ウラジオストーク降伏。
プリンスオブウェールズ島ハイダに上陸。現地の人はエスキモーが多くて日本人とよく似ているらしい。ここから南はカナダなので使えない。西海岸封鎖のために港、航空基地と潜水艦基地がほしいらしい。
――1942年9月、大本営 情報局、従軍服、高田あき
モンゴル経由でイルクーツク侵攻。海軍が忙しくなってきた。米西海岸封鎖。空母対陸上機の戦いが繰り広げられる。米軍は偵察機を目の敵にしている。端末の損耗が激しい。無線も使わなくなってるし、いろいろばれてるね。これでこちらの被害を押さえられてる面もあるし、しょうがないのでネットから端末を引き抜いて海軍に補充。このペースが続いたら維持できないかも。そろそろ端末の現物が米に確保されていてもおかしくないし。
――1942年10月、大本営 情報局、従軍服、高田あき
米ワシントン州ラプッシュ上陸。オリンピック半島西部は実質島みたいなものなので、こちらの制海権下で大攻勢をかけるのは無理。それでもいっぱいくるね。空母はりつけて防衛。マカー政府とポトラッチを繰り広げる。うーんお正月までに終わってほしいな。
米捕虜の様子をテレビ放送。どんどん解放。無事宣伝要員になってくれてる。
ハワイは独立中立を宣言。ここの工作はうまくいった。アラスカもジュノー、ケチカンなど道路でつながってないところは降伏。冬越せないからね。
ここまでやっても停戦交渉通らないの。どっちも国内暴動寸前だよ。
――1942年12月、大本営 情報局、従軍服、高田あき
ワシントン州の拠点は安定したけれど、人も兵器も端末も損失は多い。カリフォルニアもノボシビルスクも遥かに遠いよ。ここからどうするの。逆バルチック艦隊とか無理だから。パナマには大増援が送られてる。メキシコにも工作かけてるけど、米陸軍がけずれてないので通らないね。
えーお正月までに戦争終わらないじゃん。
57/4700/4130/1113
最後の数字は 端末の、 在庫/ネットと産業/部隊配備/損害 となっています。
なおNetNews回からあと、台数に誤りがありましたので修正いたしました。失礼いたしました。