表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1万ポイント超え

令嬢は周りがなぜか忘れているので思い出させる〜皆様どうやらうちの商品はいらないようですので購入不可とさせてもらいますね〜

作者: リーシャ

ハルラナの名前はハルラナ・ミル・カスキュイン。子爵家の娘。これといって、なにか特別な容姿もなく、目立った特技などもない。

静かに読書をすることを好む少女。将来は公爵家の御曹司、タタルトと結婚することになっていた。


幼い頃からの婚約で、まわりからは「素敵なご縁ね」などと、うらやましがられていたのだ。でも、タタルトが王都の貴族学園に入ってから、様子がおかしくなった。


例えば、手紙の返事は来なくなり、会っても上の空。学園でシトリーンという伯爵令嬢と恋仲になった、という噂がハルラナの耳にも届いた。


恐れていたことだ。最初は信じたくなかった。でも、学園の交流会で見たタタルトの隣には、シトリーンが笑顔で寄り添っていた。顔は青ざめる。


意気消沈気味のハルラナを見ても、タタルトは顔色一つ変えなかった。シトリーンはハルラナをちらりと見て、勝ち誇ったように微笑んだ。余計に惨めで。


「ハルラナ様、ごきげんよう。タタルトとは、最近は学園でご一緒することが多いのです」


シトリーンの言葉に、ハルラナの胸はズキズキ痛んだ。学園の生徒たちは、ハルラナを「恋人を引き裂く女」として冷たい視線を向けた。おかしい、と何度も心の中で唱える。


「あの人、まだタタルトの婚約者面してるわよ」


「厚かましいったらありゃしない」


婚約者面の意味を、辞書で引きもしない人達。ハイドマークという学友が、心配そうにこちらをみている。

彼は数少ない友人で、今回の事態に深く心配をかけていた。彼は、うちの家に関連しているもので、素材の情報を仕入れては楽しそうに教えてくれたりしている。


支えとなってくれている一人。ひそひそ声が、ハルラナの耳に届く。なぜ、そんなことを周りが思うのかと言うと、今現在、似た設定の短編ショートストーリーがあり。


それが、どうやら流行っていて、そこに当てはめて恋愛の病にかかっているらしかった。悔しくて、悲しくて、毎日泣く。

でも、泣いているだけじゃ何も変わらない。そう思った時、ふと、ある考えが浮かんだ。


「このまま泣いているだけじゃ、何も解決しない。この婚約を破棄するためには、証拠が必要」


ハルラナは決意した。タタルトの裏切りを、両親にきちんと示すための証拠を集めようと。悪役にしたところで、大人は誤魔化せない。


そこから、ハルラナの地道な証拠集めが始まった。学園では、目立たないようにタタルトとシトリーンを観察。

彼らが二人で歩いているところ、楽しそうに話しているところ、手紙を交換しているところ。

全てを、ハルラナは小さな手帳に記録していった。日付、時間、場所。二人の様子を、細かく書き留める。辛抱強く。


ある日の午後。図書室で、彼らの会話が偶然聞こえてきた。


「ねぇ、タタルト。来週末、一緒に王都の劇場に行きませんか?」


と、シトリーンが甘えた声で言った。


「ああ、いいよ。君と一緒なら楽しいだろうな」


タタルトが応える声も聞こえた。ハルラナは慌てて手帳に書き留めた。


「○月○日、午後○時、劇場へ行く約束」


また別の日。学園の庭園で、二人が寄り添って話しているのが見えた。シトリーンがタタルトの腕にそっと手を伸ばし、タタルトはそれを振り払わない。明らかなる変な距離感だ。


「タタルト、このお花をくださる?」


シトリーンが庭に咲く花を指差した。甘ったるい。


「ああ、もちろん。君に似合うよ」


そう言って、タタルトは花を摘んでシトリーンに手渡した。じっと見つめる。ハルラナは離れた場所から様子を絵に描いた。


二人の間の距離感、触れ合う手。甘い視線。絵なら、より具体的に状況を伝えられると思ったから。死んだ目で見続ける。

もちろん、学園の生徒たちには、相変わらず冷たい視線を浴びせられた。だから、見る方向が可笑しいのに。


「まだタタルトの周りをうろついてるの? いい加減にしなさいよ」


そんな言葉も耳にしたけれど、ハルラナはもう気にしなかった。目的があったから。


数週間後。手元には、証拠となる記録や絵がたくさん集まっていた。どっさり、たんまり。もう十分だろうか。


週末。実家に戻り、両親の前にそれらを広げた。父様は、ハルラナの顔を見るなり言う。


「ハルラナ、どうした? 何か辛いことでもあったのか?」


母様も心配そうに娘を見つめる。深呼吸をして、話し始めた。


「父様、母様。実はタタルトが、学園で他の令嬢と恋仲になっているのです」


父様は驚きで目を見開いた。母様は心配そうな顔で、隣に座る。


「何を言っているんだ、ハルラナ。そのような噂は聞いたことがないぞ」


学校の噂など簡単に親の耳に簡単に入るわけがない。密偵や間者も入れてないだろうに。


「ですが、これは全て、わたくしがこの目で見て、耳で聞いた真実です」


ハルラナは、手帳に記した記録を差し出した。


「これは、タタルトとシトリーンが二人で会っていた日時や場所、会話の内容を書き留めたものです。劇場に行く約束や、互いに贈り物を受け渡していたことも」


次に、絵を見せた。


「これは、二人が庭園で親密そうにしていた時の様子です。タタルトがシトリーンに花を渡す姿も描きました」


父様は、一枚一枚。真剣な顔で証拠を確認していく。その顔は次第に怒りと失望の色に染まっていった。怒るだろう、普通は。

母様も絵を見てはため息をつき、ハルラナの肩をそっと抱きしめてくれた。


「これほどの証拠があるとは」


父様は、深くうなだれた。


「子爵家に対して、このような裏切り行為は許されるものではない。ハルラナ、よくぞ、ここまで集めてくれた」


父様の言葉に、ハルラナの胸の奥にたまっていたものが、すっと軽くなるのを感じた。


「わたくしは、もうこの婚約を続けたくありません」


ハルラナの言葉に、両親は静かに頷いた。


「わかった。これは、お前だけの問題ではない。カスキュイン家の誇りに関わることだ。我々が、公爵家にしかるべき対処を求めよう。この絵の様子を元に証言を集めて、証拠を固める」


父様の力強い言葉に、ハルラナは初めて心から安堵した。やっと解放されるのだ。


長かったトンネルの先に、ようやく光が見えたような気がした。

父様と母様は、ハルラナが集めた証拠を携え、すぐさま公爵家へと向かった。公爵家は、代々続く名門中の名門。その当主であるタタルトの父君、公爵様は、厳格で知られる方。


数日後。公爵家から使いの者が来た。ハルラナは応接室で、両親と、公爵家の執事、公爵様ご自身が書かれたという書状を受け取った。

父様は書状を読み進めるにつれて、その顔がみるみるうちに厳しくなっていく。


「これは公爵様直筆の書状か」


書状には、タタルトとハルラナの婚約破棄の関与。公爵家からカスキュイン家への謝罪の意が記されていた。

さらに、タタルトには謹慎処分が言い渡され。シトリーンも学園を退学させられる、という内容だった。


「公爵様は、この件を非常に重く受け止めていらっしゃるようだ」


父が言った。母は、ハルラナの手を取り、優しく微笑んだ。


「よく頑張ったわね。これで、あなたは自由よ」


安堵と、少しの寂しさで胸がいっぱいになった。長年の婚約が、こんな形で終わるなんて。でも、これで、やっとハルラナはタタルトの婚約者という重荷から解放される。

悪女として扱われた日々からも。公爵家からのお達しは、すぐに学園にも伝えられた。


「タタルトとハルラナが、婚約を破棄したって!」


「シトリーン、学園を退学させられるらしいわよ」


「タタルトも謹慎だって。公爵様、相当お怒りだったみたい」


噂はあっという間に広まった。同時に、ハルラナを見る周囲の目も変わり始める。今までハルラナを冷たい視線で見ていた生徒たちは、ぎこちなく目を逸らすようになった。

今更感がする。中には、申し訳なさそうに謝ってくる生徒もいた。


「ハルラナ様、ごめんなさい噂を真に受けてしまって」


内心、手のひら返しがすごいわねと思う。


「私たちは、タタルトがあなた様を裏切ったなんて、知りませんでした」


知らなかったもなにも、婚約者だと知っていたはずだ。彼らの知らなかったの部分は、どの部分なのか一生理解できないだろう。説明させたら、きっと言えない。


ハルラナは、ただ静かに頷いた。許せない気持ちが全くないわけではなかったけれど、もう過ぎたことだ。

彼らもまた、きっと男の口八丁に丸め込まれたところもある、とまあ考えてみる。学園生活の中で、変わらずにいてくれたのは、ハイドマークだけ。

彼は、いつものように図書室の窓際で本を読んでいた。彼の隣に座った。


「ハイドマーク、いろいろと、ありがとうございました。おかげで、婚約は破棄になりました」


ハイドマークは、本から目を離さず、短く言った。


「そうか」


「公爵家からのお達しで、タタルトは謹慎、シトリーンは退学になりました」


少し複雑な気持ちで伝えた。確かに、ハルラナを苦しめた相手ではあるけれど、彼らの未来が、大きく変わってしまうことに、戸惑いも感じていた。

ハイドマークはゆっくりと本を閉じ、ハルラナを見た。


「当然の報いだろう。だが、君は、自分の力でこの状況を切り開いた。誇りに思うべきだ」


その言葉に、胸は温かくなった。誰にも理解されず、一人で証拠を集め続けた日々。ハイドマークはそんなときに出会った一人。かけがえのない友達。辛かったけれど、それが報われたのだ。


「これからは、わたくしらしく生きていきたいと思います。誰の目も気にせず、わたくしが本当にやりたいことを見つけたい」


ほんの少しだけ口角を上げた。それは、彼にしては珍しい、はっきりとした微笑み。


「いい選択だ。君は、そうするべきだ」


ハルラナの心には、もう悲しみや後悔はなかった。


婚約破棄が学園中に知れ渡ってから、ハルラナの学園生活は大きく変わった。以前は冷たかった生徒たちは、今では申し訳なさそうに、あるいは腫れ物に触るように接してくる。


もう誰も、ハルラナを「恋人を引き裂く悪女」とは呼ばない。同情や、ハルラナのことを誤解していたことへの後悔の視線を感じるようになった。


タタルトは謹慎処分で学園には来ておらず、シトリーンは退学処分。ハルラナを傷つけたはずの二人がいなくなった学園は、少しばかり静かになる。

それが心地よかった。もう、誰かの顔色を窺う必要はない。


新しい趣味を見つけたり、以前は話せなかった友人を作ったりと。自分らしく学園生活を送るようになった。そんな中で、いつも隣にいてくれたのは、やはりハイドマークだ。


ある日の放課後。いつものように図書室で二人で本を読んでいた。彼は静かにハルラナの変化を見守ってくれている。


「ハイドマーク、最近、学園が少しずつ楽しくなってきました。今まで見えなかったものが見えてきた気がします」


ハルラナがそう言うと、ハイドマークはゆっくりと本を閉じた。


「それは良かった。だが、君を傷つけた者たちを、簡単に許す必要はない」


彼の言葉にハルラナは少し驚いた。ハルラナはもう、過去を水に流し、前に進みたいと思っていたからだ。


「でも、公爵家からの処分も受けましたし」


ハイドマークはハルラナの目を真っ直ぐ見た。どきりと高鳴った胸。その瞳には、穏やかさの中に、強い意志が宿っている。


「処分は、あくまで公爵家の都合によるものだ。彼らが本当に罪を償ったわけではない。君を苦しめた事実が消えるわけじゃないだろう」


彼の言葉は、ハルラナの心の奥底に眠っていた、まだ癒えきっていない痛みを呼び起こした。

そうだ。いくら彼らが罰を受けたとしても、ハルラナが受けた心の傷は、簡単には消えない。


「それに、君を侮辱し、悪意ある噂を流した者たちもいる。彼らも、決して許されるべきではない」


ハイドマークの声は、普段よりも冷たく響いた。彼が、ハルラナを傷つけた人々に対してこれほどの怒りを抱いていたことに、ハルラナは初めて気づいた。


「わたくしは、もうあまり気にしないようにしていますけれど」


こわばる顔。


「それは君の優しさだ。だが、優しさが、自分を傷つけることになってはいけない」


ハイドマークは、立ち上がって窓の外を見た。


「あのタタルトも、シトリーンも、君を軽蔑した学園の生徒たちも、おれは決して許さない。君が許したとしても、おれは忘れはしない」


彼の言葉は、まるで誓いのようだった。うっとりと見上げる。ハルラナのために、彼がそこまで怒ってくれていることに、ハルラナの胸は熱くなった。


彼は、ハルラナがどれほど傷つけられたかを、誰よりも理解してくれていたのだ。ハイドマークは、ハルラナの方を振り返り、静かに言った。


「君は、これから自由に、君らしく生きればいい。後ろは、おれが守るから」


その言葉に、ハルラナは涙が止まらなくなった。


「はい」


もう一人じゃない。


ハルラナには、誰よりも理解し、守ってくれるハイドマークがいる。ハイドマークがハルラナの隣で誓った言葉は、静かながらも、彼の底知れない怒りを感じさせた。

ハルラナを傷つけた者たちを決して許さない、と。それは、ただの感情論ではない、もっと冷徹で、具体的な決意のように思えた。それほどまで、大切に思ってくれている。


学園では、ハルラナの周りの空気はすっかり変わった。やはり、手のひら返しが熱い。以前ハルラナを避けていた生徒たちは、ぎこちなく話しかけてきたり、何かと気遣ってくれるようになった。


それもそれで、媚を感じる。でも、ハイドマークは、そんな彼らにも一切の感情を向けなかった。彼の目は、まるで全てを見通す氷のように冷たく。

彼らの表面的な優しさや、後悔すらも、見透かしているようだ。


ある日の昼食時。食堂でハルラナが友人と話していると、元々タタルトやシトリーンと親しかったらしい別の生徒が話しかけてきた。


「ハルラナ様、先日は本当に申し訳ありませんでした。事情を知らずに」


彼が深々と頭を下げた、その時。


「謝罪するなら、もっと早くできたはずだ」


背後からハイドマークの低い声が響いた。驚くことはない。いつの間にか、ハルラナのすぐ後ろに立っていた。

ハルラナたちの会話を聞いていたのだろう。その生徒は、びくりと肩をすくめた。


「ハイドマーク、様」


「今更、そのような言葉で、君たちがハルラナ様を傷つけた事実が消えるわけではない。後付けでならば小さな子供にだってできる」


ハイドマークの声は、凍てつくように冷たかった。彼の視線は、謝罪する生徒の顔から、その周囲にいるかつてハルラナを嘲笑した者たちへと。

ゆっくりと向けられた。睥睨される。瞳は、彼らの心の内まで見透かすかのように、一切の容赦を含んでいなかった。


「今後、ハルラナ様に近づくことは許さない。もし、君たちが彼女の目に入る場所で、不快な行動を一つでも起こせば、それ相応の報いを受けることになる」


その言葉には、明確な脅しが含まれていた。周囲はシーンとなる。食堂にいた全員が、その場の空気に凍りつき、彼らの間に緊張が走った。


「あ……」


謝罪に来た生徒は顔を真っ青にして、何も言えずに逃げ去った。ハルラナは、驚いてハイドマークを見上げる。


「ハイドマーク、そこまでされずとも、私は」


「必要だ。君がまた傷つけられることのないように。彼らは一度、君の優しさに付け込み、君を貶めた。二度と、同じ過ちを繰り返させない」


彼の言葉には、揺るぎない覚悟があった。視中には、ハルラナを傷つけた者たちへの、一切の容赦が含まれていないことが明らかだ。


彼らはもう二度とハルラナと関わることを許されない。それは、彼らの学園生活において、大きな枷となるだろう。友人関係や今後の人脈に、悪影響を及ぼすことは避けられない。親だって。


ハイドマークはハルラナの手にそっと触れた指先は、ひんやりとしていたがその手のひらからは、確かな温もりが伝わってきた。


「君は、君の道を歩めばいい。過去を振り返る必要はない。彼らが君の未来を汚すことも、決して許さない」


ハイドマークが宣言した静かなる制裁は、学園の空気を一変させた。ハルラナを傷つけた者たちを許さないという彼の強い意志は、目に見えない圧力となる。


彼らの行動を、制限しているようだった。ハルラナに近づこうとする者たちは、ハイドマークの冷たい視線に射抜かれ。

すぐに退散していく。ハルラナ自身も、ハイドマークの影響を受け、少しずつ変わっていった。


以前は、誰かに悪意を向けられると、すぐに落ち込んでしまう性格だったけれど、今は違う。


ハイドマークがハルラナの後ろ盾となってくれているという安心感が、ハルラナに新しい強さを与えてくれた。ハルラナはハイドマークの言葉を胸に刻んだ。


「君が許したとしても、おれは忘れはしない」


そうだった。ハルラナが許すかどうかは別として、彼らがハルラナを傷つけた事実は決して消えない。

ハルラナは、謝罪に来た生徒たちだけでなく、一切謝ろうとしない。あるいは顔を合わせようとしない生徒たちのことも、しっかりと心に留めるようになった。

彼らの名前と顔、ハルラナに冷たい視線を向けた時のことを、小さな手帳にこっそり書き記していく。この方法は性に合っている。


ある日の午後、廊下を歩いていると、以前ハルラナを「厚かましい」と陰口を叩いていた令嬢たちがいた。目が合うなり、慌てて顔を背ける。


「彼の方の」


「行きましょう」


彼女たちは、ハイドマークの目を避けるように、ハルラナの視界からすぐに消えた。小物感丸出し。ハルラナは、そんな彼女たちの名前を、そっと手帳に書き加えた。


また別の日。食堂で一人で食事をしていると、隣のテーブルから囁きが聞こえる。


「ハルラナ様、本当にひどい女だわ」


「結局、公爵様を惑わしたのね」


という、ひそひそ声が聞こえてきた。声の主は、ハルラナが以前から警戒していた、タタルトの取り巻きだった生徒たち。


彼女たちは、まだハルラナへの悪意を捨てていないようだ。人を貶める快感を知ってしまい、抜け出せなくなったのかもしれない。


ハルラナは顔色一つ変えず、食事を続けた。哀れな人達だ。しかし、心の中では彼女たちの名前と今聞こえた会話の内容を、しっかりと記憶した。


その夜。手帳に彼女たちの名前を追記し、具体的な言動も書き加えた。

週末になり、実家に戻ったハルラナは、両親に学園での出来事を報告。


「父様、母様。この度、タタルトとの婚約を破棄することとなり、安堵しております。公爵家から処分が下されたこと、彼らが反省していること、全てお話ししました」


父様は頷いた。


「うむ。お前が穏やかに過ごせているのなら、それで良い」


「まだ、わたくしに謝罪をしていない生徒たちがおります。未だにわたくしへの悪意を隠そうとしない者たちもおります」


ハルラナはそう言って、手帳を取り出した。父様と母様は、ハルラナが手帳を取り出すことに驚いたようだ。どうしてだろう?


「これは、その生徒たちの名前と、彼らがわたくしに対して行った言動を記録したものです」


ハルラナは、手帳を開き、両親に差し出した。そこには以前、嘲笑した生徒たちの名前。陰口を叩いた者たちの名前、今日の食堂での会話の内容まで、細かく記されていた。

父様は、ハルラナの手帳に記された名前と内容を、険しい表情で確認。母様も、隣でそれを覗き込み、眉をひそめた。


「これは公爵家からの処分が下された後も、このような無礼な振る舞いを続けている者がいるのか」


父様の声には、怒りがにじんでいた。


「はい。中には、公爵家とカスキュイン家との間にわだかまりが残ると考えているのか、形ばかりの謝罪をしようとする者もおりますが、心からの反省が見られない者もおります。そのような者たちは、この手帳に記してございます」


母様は、ハルラナの肩をそっと抱いた。


「ハルラナ、あなたは本当に強くなったわね。このような証拠を、よく集めてくれたわ」


父様は手帳を閉じ、深く息を吐いた。


「分かった。お前を傷つけた者を、このまま見過ごすわけにはいかない。このリストは、我々がしかるべき対処を行う際の重要な資料となるだろう」


父様の言葉に、ハルラナは初めて、心からの満足感を覚えた。もう、ハルラナは一人で傷つく必要はない。ハルラナには、ハイドマークという心強い味方がいる。


両親もまた味方として、ハルラナを傷つけた者たちに立ち向かってくれる。父様と母様は、ハルラナの手帳に記された名前のリストを真剣な顔で確認。


カスキュイン家は、子爵家としての地位だけでなく、母様の実家が経営するリンドーラ商会という大きな商会と深く関わっていた。

リンドーラ商会は、質の高い石鹸を全国に販売しており、石鹸は貴族たちの間でも肌に優しい、や香りが良いと評判なのだ。


「この者たちは、決して許すべきではない」


父様がリストを閉じ、静かに言った。


母様もまた、決然とした表情で頷いた。


「ええ。ハルラナを傷つけた者たちに、甘い顔をする必要はありません」


母様は、どこか悪戯っぽい笑みを浮かべた。


「彼らが最も困る方法で、報いを受けさせましょう。リンドーラ商会の石鹸を使ってね」


ハルラナは驚いて母様を見た。


「石鹸、ですか?」


「ええ。彼らが普段使いしているあの石鹸をね」


数日後。制裁は、学園全体に静かに広がり始めた。まず、学園の御用達の商店。

次いで、貴族たちが利用する王都の高級店から、リンドーラ商会の石鹸の値段が突然、跳ね上がった。などという、噂が流れ始めたのだ。


特に、ハルラナの手帳に名前が載っている生徒たちが購入しようとすると、価格は異常なほど高騰。

以前ハルラナを「厚かましい」と陰口を叩いていた令嬢が、学園内の購買部で石鹸を購入しようとした時のこと。


「すみません、このリンドーラ商会のメナザアローズの香り、一ついただけますか?」


購買部の店員は、にこやかに対応した。


「はい、かしこまりました。こちらは金貨五枚でございます」


令嬢は目を丸くした。


「えっ?! 金貨五枚ですって?! いつもは銀貨二枚だったはずよ!」


店員は表情一つ変えはしない。


「申し訳ございません、最近、仕入れ値が高騰しまして。特に、メナザアローズの香りのものは、特別なルートでしか手に入らなくなってしまいましたので」


令嬢は、他に客がいないか周りを見回した。彼女は、他の貴族たちが使っているあの石鹸を、自分が使えないなどということは許されない、とばかりに焦っていた。


「そ、そんな馬鹿な! じゃあ、違う香りのものなら?」


「他の香りも、少々値上がりしておりますが、メナザアローズの香りのものほどではございません」


結局、その令嬢はしぶしぶ金貨五枚を支払い。石鹸を購入していった。彼女は、明らかに不満そうな顔をする。

どうして、とぶつぶつ呟きながら。同様のことが、次々と起こった。今までハルラナに謝ろうとしなかった生徒たちが、学園の購買部や王都の店などで、リンドーラ商会の石鹸を購入しようとすると。


通常の何倍ものぼったくり価格を提示されるようになったのだ。彼らは、リンドーラ商会の石鹸の品質をよく知っているからこそ。


他に替えがたい。だが、かといってこの法外な価格を支払うのも辛い。彼らは、どこかおかしいと気づき始めたようだ。なぜ自分たちだけが、こんなに高い値段をつけられるのか。


理由を問いただしても、店員は「仕入れ値の高騰」としか答えない。まさか、子爵家の娘であるハルラナの両親が、自分たちに制裁を加えているなどとは、夢にも思わないだろう。

恐らく、経営者が誰かということが頭から抜け落ちているのかも、しれない。


ある日、ハイドマークがハルラナに言った。


「君を傷つけた者たちは、今、石鹸一つ買うのにも苦労しているらしいな」


少し複雑な気持ちで答えた。彼は薄く口角が上がり上機嫌らしい。


「はいでも、本当に良いのでしょうか」


ハイドマークは、いつものように静かに言う。


「これは、彼らが君に与えた苦痛に比べれば、微々たるものだ。彼らは、自分たちの行動が、どれほど他者を傷つけるかを知るべきだ。これは、そのための対価だ」


ハルラナを傷つけた者たちは、これから先も、彼ら自身が蒔いた種を刈り取っていくことになる。

リンドーラ商会の石鹸は、彼らにとって、単なる日用品ではなく、過去の過ちを思い知らせる。静かで、確実に効く制裁の象徴となった。


リンドーラ商会の石鹸によるぼったくり価格の制裁。ハルラナの手帳に、名を連ねた生徒たちにとって、静かなる呪縛。彼らは、リンドーラ商会の石鹸を使い続けていた貴族の子女たち。


品質も香りも、他の追随を許さない。それまで当たり前に使っていたものが、突然法外な値段になったことで、彼らは大きな困惑と焦りを感じていた。

学園の購買部では、彼らが石鹸の値段に驚き。店員と言い争う姿が頻繁に見られるようになった。


「なぜ私だけこんなに高いのですか!?」


「これは、どう考えてもおかしいでしょう!」


彼らがいくら訴えても店員は「仕入れ値が高騰しまして」「特別なルートでしか手に入らなくなりましたので」と、ただ同じ言葉を繰り返すばかり。


貴族の彼らが、いちいちリンドーラ商会に問い合わせることもみっともないことだ。自分たちの過去の言動が原因だなどとは、思いもしない。


彼らは、ただ理不尽な値上げに苦しむ、としか考えていなかった。そこで、胸に手を当てていれば。結果として、ハルラナの手帳に名前のあった生徒たちは、二つの選択を迫られた。


一つは、プライドを捨てて他社の品質の劣る石鹸を使うこと。もう一つは、法外な価格を支払ってリンドーラ商会の石鹸を買い続けることだ。どちらを選んでも、彼らにとっては屈辱的。


彼らは、日ごとに疲弊していった。肌荒れを気にして粗悪な石鹸を使う生徒もいれば。家計を圧迫しながら、高値で石鹸を買い続ける生徒もいた。

学園の噂話は、いつの間にか、ハルラナ様の婚約破棄から「あの人たち、最近リンドーラ商会の石鹸が買えないらしいわよ」という話に変わっていく。


ある日、図書室でハイドマークが、新聞を広げながら言った。


「リンドーラ商会の石鹸が、一部の顧客に限り異常な高値で取引されているという噂が、王都の裏社会で囁かれているそうだ」


ハルラナは新聞を覗き込んだ。確かに、経済欄の片隅に、それらしき記事が小さく載っていた。


「これが、その報いなのですね」


ハルラナは、彼らが苦しんでいることに、もはや罪悪感は抱かなかった。皆が、身内が怒ったのだ。彼らは、ハルラナを傷つけた。その事実を忘れず、自分たちが蒔いた種を刈り取っているだけ。ハイドマークは、静かに新聞を畳んだ。


「ああ。だが、これはまだ序章に過ぎない」


彼の言葉に、ハルラナは少し身震いした。


ハイドマークは、謝罪しなかった者たちに対して、単に石鹸の値段を上げるだけでは終わらないだろう。

彼らは、学園を卒業し、社会に出てからも、リンドーラ商会が関わるビジネスや人脈から静かに静かに、排除されていくことになる。


それは、彼らの未来の選択肢を狭め、社会的地位にも影響を及ぼす、より長期的な制裁となるだろう。ハルラナの学園生活は、以前よりもはるかに穏やかで、充実したものになっていた。


(今日はしおりを作ったわ)


ハルラナは、新しい友人を作り、学園の活動にも積極的に参加するようになった。冷たく扱った者たちが、今や静かに苦しんでいることを知っても心は揺るがない。


ハルラナの隣には、いつも彼が。新しい一歩を踏み出すたびに、静かに見守り、ハルラナを傷つけるものから常に守ってくれた。彼と過ごす時間は、ハルラナにとって何よりも大切なものになっていく。


「ハイドマーク、本当にありがとうございます」


「そうか」


彼はいつものように、ほんの少しだけ口角を上げた。

リンドーラ商会の石鹸による価格の制裁は、学園の生徒たちだけでなく親たちにも、じわりと影響を及ぼし始めていた。

貴族社会において日用品、特にリンドーラ商会の石鹸のような必需品の入手が困難になったり法外な価格を支払わされることは、家計の問題だけでなく家柄の権威や社交界での評判にも関わってくる。


「最近、どうもリンドーラ商会の石鹸が手に入りにくくて困るわ」


「ええ、うちもそうなの。なぜかしら、特定の店ではとんでもない値段を言われるのよ」


「あなた達も?うちもよ」


貴族夫人たちの間の午後のサロンや茶会では、そうした話題が持ち上がるようになった。


「どうしてなのかしら?」


「一定のものがそうなのよね」


最初は単なる不運か、単なる商会の都合だと思っていた。特定の令嬢たちが、なぜか常に高値で石鹸を購入しているという事実が、少しずつ彼女たちの耳にも入り始めたのだ。


ある日のこと。以前ハルラナに「厚かましい」と陰口を叩いた令嬢の母親が、リンドーラ商会に直接問い合わせた。


「なぜ、うちの娘が購入するリンドーラ商会の石鹸だけ、こんなに高値なのですか?!」


リンドーラ商会の担当者は、にこやかに、一切の感情を見せずに答えた。


「誠に申し訳ございません、奥様。商会の経営方針に関する詳細はお答えできかねます。ただ、弊社の製品は、お客様一人ひとりの、これまでのご利用状況や、弊社への貢献度を鑑み、販売価格を決定させていただいております」


貢献度という曖昧な言葉に、母親は困惑した。言葉に詰まる。商会の担当者は、それ以上は何も語らなかった。


「そんなっ」


それが何度か続くと、さすがに勘の良い貴族の親たちは、何か裏があることを察し始めた。

ハルラナの手帳に記された生徒たちの親たちが、共通してリンドーラ商会の石鹸で困っていることに気づく。

ある夫人が、ハルラナの母様と偶然顔を合わせた際、恐る恐る尋ねた。


「あの、カスキュイン子爵夫人。最近、リンドーラ商会の石鹸の件で、どうも奇妙なことがありまして」


よく聞けたものだ。母様は、にこやかに答えた。


「あら、そうでございますか。リンドーラ商会も、近年、色々と方針を見直しているようですから」


母様の意味深な言葉に、夫人はハッとした。夫人が、自らの娘がかつてハルラナに対して行った無礼な言動を思い出した時。点と点が線でつながったのだ。遅すぎる。


「まさか娘が、ハルラナ様に無礼を働いたことが、原因で?!」


生徒の親である夫人は、血の気が引くのを感じた。逆にそれ以外なにがあるのかと、笑みを深くする。

その日のうちに、彼女は帰宅し、娘を問い詰めた。娘は、最初はしらを切ろうとしたが、母親の迫力に負けハルラナに冷たい態度を取ったり、陰口を叩いたりしたことを白状した。


「な、なんてことをしてくれたの?! お前の身勝手な行動のせいで、私たちの家まで恥をかくことになったのよ! リンドーラ商会は、私たち子爵家にとって、どれほど重要な取引先だと思っているの!?一つの繋がりは全てに繋がっているのよっ!」


母親の激しい怒りの声が、屋敷中に響き渡った。実際、頭を掻きむしりたくなるような失態だろう。

同様のことが、ハルラナの手帳に記された他の生徒たちの家庭でも起こっていた。子どもたちの身勝手な行動が原因で、家全体の評価やひいては経済状況にまで影響が出ていることを知り親たちは激怒した。


彼らは、リンドーラ商会の貢献度という言葉の裏に、カスキュイン家のハルラナ自身の静かなる報復が隠されていることに気づいたのだ。

ハルラナをいじめた生徒たちの親たちは、慌ててカスキュイン家に謝罪に訪れるようになった。中には、土下座せんばかりの勢いで謝罪する者もいたほど。


「ハルラナ様、この度は、娘が大変申し訳ございませんでした!」


「どうか、この愚かな娘を、我が家をお許しください!」


謝罪をしている顔には、もはや傲慢さや軽蔑の影はなく。ただただ、恐怖と焦りが滲み出ていた。

彼らは、リンドーラ商会の石鹸という、一見すると些細な日用品を通して、自分たちの子どもが犯した過ちの重みをカスキュイン家の隠れた影響力を、痛感させられていた。


「……」


ハルラナは、彼らの謝罪を静かに受け止めた。許したかどうかは、ハルラナの心だけが知っている。

彼らが心から反省しているかどうかは、これからの行動で示すしかない。まだ、判断するには時間が経過しえない。


両親がリンドーラ商会の石鹸で、謝罪しない生徒たちとその親たちに制裁を下して以来、学園の空気は一変。

以前はハルラナを侮蔑の目で見ていた令嬢たちが今ではハルラナに会うと、おずおずと頭を下げたりぎこちない笑顔を向けたりする。


社交界でも、ハルラナをが参加する茶会では、以前のようなひそひそ話は聞こえなくなった。

むしろ、一部の夫人たちが、ハルラナに近づいては「ハルラナ様は聡明でいらっしゃるわね」と、やたらとお世辞を言うようになった。


父様と母様が、リンドーラ商会を通じて行った静かな報復は、貴族社会においてカスキュイン家の影響力が決して小さくないことを知らしめたのだ。


公爵家との婚約が破棄されてもなおカスキュイン家が、社交界で確固たる地位を築いていることを示すものだった。

ハルラナは、以前よりもずっと、胸を張って学園生活を送れるようになったことを、喜ぶ。


そんなある日の放課後。


いつものように図書室でハイドマークと二人きりで過ごしていた。


彼は、静かに書物をめくっている。


「ハイドマーク、最近、学園で私に話しかけてくる人が増えました。謝罪に来てくれる方もいて」


ハルラナをがそう言うと、ハイドマークはゆっくりと顔を上げる。瞳には、どこか冷徹な光がある。


「それは、彼らが君の価値を再認識したからだろう。だが、彼らが君を傷つけた事実は消えない。君が彼らを受け入れるかは、君自身の問題だ。彼らが君の未来を汚すような真似は、二度とさせない」


彼の言葉には、一切の妥協も許さない、揺るぎない覚悟が感じられた。ハルラナは、ハイドマークが心底から守ろうとしてくれていることを、改めて感じる。


彼が少しだけ視線を逸らし、珍しく言葉を探すように間を空けた。


「ハルラナ」


彼の少し低めの声が、図書室の静寂に響いた。


「もし、よければだが今度の週末、王都の植物園に行かないか?」


ハルラナは驚いて、ハイドマークを見た。彼がハルラナを外へ誘うなんて、初めてのことだったからだ。彼はいつも、図書室か学園の庭園で、静かに過ごすことを好んでいたから。


「植物園、ですか?」


ハイドマークの頬が、ほんのわずかに赤らんだように見えた。彼は視線を泳がせながら言葉を続ける。


「ああ。珍しい花や植物が豊富に集められている。君なら、きっと楽しめるだろうと思って」


彼の誘いは、普段の彼からは想像もつかない優しい響きを帯びていた。

それは、彼がハルラナに、学園の外での新しい世界を見せてくれようとしているようにも感じられハルラナは、彼の不器用な優しさに胸の奥が温かくなる。


「はい! ぜひ、ご一緒させてください、ハイドマーク!」


ハイドマークは、ほんの少しだけ、口角を上げた。それは、これまで見た中で、最も穏やかで、嬉しそうな微笑み。


自身も、つられて笑みを浮かべふんわりとした休日に頬を綻ばせた。

⭐︎の評価をしていただければ幸いです。

拙宅をお気に入りユーザーにすると最新作がいち早く読めます。長編【雇われ令嬢】もどうぞ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
少し説明足りないかな?って所もありましたが、楽しく読ませて頂きました。 親御さんがすんなり信じてくれるほどの信頼をハルラナは持っている、と想像できるけど、そこを汲み取るのは少し難しかった。 ハルラナが…
色々わかり辛い所がありましたが、面白かったです。 確かにハイドマークはいらないかも? ハイドマーク出すなら、ハイドマークが商会のオーナーとかで 復讐に協力するとかが良かったと思います。
ハイドマークさん、実在していてε-(´∀`*)ホッ あまりな存在感無さに、途中イマジナリーフレンド?て思いましたw 正体が気になります♪
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ