表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/7

■第3章:タイムラグ■

 その日、0時を過ぎても彼女は現れなかった。


 最初は「忙しいのかな」と思った。

 あるいは、寝落ち。珍しいけど、ない話じゃない。


 でも、翌日もそのまた翌日も、彼女からの返信は来なかった。

 僕の送ったメッセージは既読にならず、時間だけが過ぎていった。




 いつものように現れる通知音が、あの頃の僕にとって、どれほど大事だったのか。


 それは失ってからでないと、気づけないものだった。




 4日目の夜、ようやく返信が来た。


 《mofurun_》:ごめん、ちょっと体調崩してた…でも

 大丈夫、すぐ治るから。


 短く、いつもよりもどこかよそよそしい文面だった。

 それでも僕は、胸の奥に小さな安堵を感じて、深くは訊かなかった。




 それから、彼女の返信は少しずつ“遅れる”ようになった。

 以前は秒単位で返ってきていたメッセージも、いまは数時間後、あるいは翌日になることもあった。


 彼女のSNS投稿も、徐々に変わっていった。

 どこか詩的で、意味の取りづらい言葉が増えていく。




 《mofurun_》(投稿)


 いつか、私が私でなくなっても

 私が生きた証はここにあるようにって思ってる。




 投稿の背景画像は、無機質なカーテン越しに差し込む夕陽だった。




 《saito_r》:もふるん、大丈夫?無理してない?

 メッセージを送ったけれど、返事は来なかった。

 ただ、“既読”のマークだけが、ひっそりと点いた。




 それが、彼女からの、最後の“既読”だった。




 次の夜から、彼女のアカウントはずっとオフラインのままだった。


 そしてその夜、僕は、“夢の中で彼女の声を聞く”ことになる。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ