カルヴァリ帝国・クロノス和國編
【十五日目】
シャバドゥス攻略が終わってすぐに邪神が来た。なにやら■■■と呼ばれる存在がいることを言うだけ言って去っていったが、結局何がしたかったのやら。
とりあえずシャバドゥス攻略は終了したのでシャバドゥスに残る人の残党狩りに勤しむこととする。といっても虫たちに侵略させるだけだが。それと今回の攻略で得たものを改めて思い出していこう。
シャバドゥスには本やらの知識を目的としていたのだが、残念ながら本は見つかったが文字は読めなかった。ただ最低限地図は確保したので良しとする。
その地図を見てわかったのは、シャバドゥスは大陸で言えば一番西にある国であるということ。そしてそこから一番近いのは大陸の真ん中の北にあるカルヴァリ帝国と南にあるクロノス和國ということだった。
次に進行するのは、北南のどちらかになるだろう。
次は迷宮産と思わしきアイテムの数々。ポーションなんかは攻略の騒動で壊れたり零したりしてしまったので、確保できた数は少ない。しかしそれを踏まえても装備やらもあったのでそれが収穫か。
ちなみに一度持ってこさせはしたが、その後使い所がなさそうなものは全て一箇所に保管させている。かなりの人数が住んでいたこともあってアイテムの数も多いからな。しかしそれが有り余るほどに広大な土地、シャバドゥスだったこの場所は巣を広げて使おうと思う。
あぁ、あとミッションを達成したことで首飾りが貰えた。これは邪神曰く■■■からの贈り物だそうだが……その■■■には害はないらしいので、有効に使わせてもらおう。
信じて良いものか、とは思っているが。
ちなみに首飾りの効果は死の否定だそうな。強い。
残党狩りは散り散りに逃げられたので、しばらく掛かりそうだ。
【十六日目】
属性付与をやっていなかったので、やっていこうと思う。
で、その結果わかったのは、この属性付与はいわゆる七つの大罪をモチーフとした属性を虫に付与するものだということだった。
レベルⅠの虫を使って検証したので、順番に説明していこう。
まず【傲慢】。こいつを付与された虫は賢くなって戦闘力が1.1倍ほど上昇する。ただし賢くなったはいいが、戦わせてみると自分に有利なほど油断するようになっていた。
次に【憤怒】。これは単純に戦闘力が1.5倍上昇していた。しかし細かい命令は聞かなくなったのが欠点。「止まれ」「やめろ」や「殺せ」「壊せ」くらいしか聞かない。
次は【嫉妬】。こいつは……他者を甚振るようになる。苗床部屋にいる女とか特に。戦闘能力の向上こそなかったものの、試しにレベルアップさせてみたら人型に変化したので、そういうことが目的の属性なのだろう。
今度は【暴食】。成虫になってもよく食べるようになる。代わりに戦闘力は1.2倍で、食べた分だけ一定時間戦闘力がブーストされるようだった。恐らくこいつが一番使い易い。
次は【強欲】。戦闘力は1.1倍で、アイテムを自主的に集めるようになる。だがこちらにくれるわけではなく、ただ集めて保管するようになるだけだった。物々交換なら集めたものをくれたので、使い様だろう。
【怠惰】は怠けるようになる。戦闘力も上がらない。しかしレベル次第ではあるが、周りの生物から自動的に生命力やら魔力やらをドレインする能力が付与されるようだった。レベルが高いほど効力と効果範囲が上昇する。
最後に【色欲】。こいつは苗床相手に役立つ。簡単に言えばエロ同人みたいな能力がある。発情させたりとか快楽が増幅するとか。もちろん色欲なので性欲が大きく増すようだが、苗床部屋に入れておけば問題ないだろう。
─────というのが、属性付与で得た情報だ。ちなみに何を付与するかによってレベルアップ先も変わることは検証済みだ。【嫉妬】が特にわかりやすいだろう。
しかし、検証に丸一日使い込んだので今日はもう何も出来そうにない。いや、虫たちにはシャバドゥスに残る村への襲撃やらをさせているので現在進行形で『している』と言えるのか。
とにかく、他の国への侵略工作や情報収集は明日以降になる。それも、シャバドゥス内にいる残党を完全排除してから。進行していたのに後ろから刺されるのは面倒だからな。
【十七日目】
そういえば言い忘れていたので、虫達の生殖事情をざっくりまとめておく。
虫の生殖速度は、一つの苗床に付きだいたい約十匹が目安となる。それより多ければ良質、少なければ粗質であるということがわかる。
さらに胎内に入り、そこから幼虫に成長するまでの速度も母体の質によって変化する。普通なら四時間、良質なら一時間弱、粗質なら八時間は掛かる。
もちろん男には適用できない。だって子宮がないし。必要ないのならTSなんて面倒な作業はしない。
話は変わるが、しばらく残党狩りに時間が掛かりそうなので手付かずだった残りの迷宮と、新たに見つけた迷宮を回ることにした。
既に見つけてある狼、ゴーレム、屍の迷宮に加え、今度はリビングアーマーとキノコの迷宮の二つで、合計九つ。それがシャバドゥスで見つけることの出来た迷宮の全てだった。
で、既に攻略したので周回装置として生まれ変わってもらった。これで一日のポイント獲得数が大きく上昇することだろう。
ちなみに一番難易度が高かったのは五十層に及ぶゴーレム迷宮だった。硬いし強いしで、かなり厄介だった。だが得られるポイントも破格だったのでレベルⅤを中心に周回させている。
シャバドゥス攻略で得たポイントもあれば、俺自身のレベルアップももうすぐ……なのではと思っていたが、前回の十倍以上ポイントが必要なようなので、しばらくは虫たちのレベルアップに費やそう。
【十八日目】
このシャバドゥスにはエルフと思われる者たちが大量にいたが、中には獣耳や獣頭、角やら翼やら鱗やらを持つ者もいた。人間と思わしき者は、今のところ見ていない。他の国にいるのだろうか。
今日は暇だったこともあり虫たちを従えてシャバドゥスを回っていたら、なんと襲撃を受けた。どうやらシャバドゥスの生き残りのようだった。まぁ捕獲したが。
しかし手強かった。レベルⅤの虫でなければ相手にならない猛者たちであり、何匹かレベルⅤが死んでしまう激戦だった。他の虫たちを使って削れなければ負けていたのはこちらかもしれない。数の暴力は偉大だと改めて思う。
死んでしまった虫の分は、しっかり産んで貰おう。大丈夫、死にはしない。最近色欲の虫がレベルアップしたおかげで能力が増強されたので、もしかしたら快楽で頭がアレになるかもしれないが、その時はまぁ、その時で。
今日はそれ以外に語れるようなことは起こらなかったので、終わりとする。
疲れた。
【十九日目】
残党狩りを、今日を以って終了とする。
正直まだいるのではないかと思っているのだが、探したところで切りが無いので諦めることにした。流石に後ろから刺されて致命傷になるほどの戦力もないと踏んでのことだ。
ところで俺は五つの国を侵略し攻略しなければならない。そこに時間制限はないし守らなければならないルールもない。なのでやり方はいくらでも考えつくものだ。
しかし、そもそもの前提として『浮いている国』を相手にするにはどうすれば良いのだろうか。そう、スルバーン天空都市のことである。
実はこの国、地図に載っていない。いや正確には大陸には名前がなく、地図の端にスルバーンと、この国の進む方向である矢印だけが描かれている。
動くのだ、この国。天空都市と言うだけあって一定の場所に留まらない。しかも浮いているものだから空を飛べなければ戦いにすらならない。そして当然ながら対空兵器などがあっても不思議ではない。
いずれ、ではあるし、戦力が足りないので攻略は最後になるだろうが……いつかは、スルバーンも攻略できるようにしなければならないだろう。
【二十日目】
今日は情報収集に虫を向かわせて暇なので、ダンジョンを壊せないか試してみた。
で、わかったのは……
地面は壊せた。壁は無理だった。最下層の地面は壊せなかった。
ということである。
つまり最下層の地面と途中のダンジョンを構成する壁は壊すことはできず、地面は破壊可能である。しかし、時間が経過すると修復されていくので壊してもさほど意味はないだろう。
……でも対処が困難な敵を引き込んで地面を破壊すれば、深い迷宮であれば自由落下で死ぬのではないだろうか。でも死ななそう。耐久力が高いイメージがある。
試しに強い迷宮のボスで落下死するか試してみよう。
試してみた。ゴーレムだと普通に耐える。ゴーレムが特別硬いだけかもしれないが、他もそうである可能性が出てきたのでこれは使えないな。
水攻めとかも試してみるか……?
【二十一日目】
情報収集してわかったのだが、カルヴァリ帝国とクロノス和國は戦争中らしい。
兵士と思わしき存在が大量に平野や森の中で死んでいた。
……漁夫るか? 漁夫ろう。
そのためにも情報収集である。昨日は軽く見て回ることを目的とした情報収集だったので、今回は詳しく探っていこう。
行かせる虫は……隠れるのが上手いやつにしよう。