国の崩壊と見る者たち
シャバドゥス王国・首都ランブルギル。
王国と言われながらも、この国に王はいない。かつての名残で名が残されているが、今では共和制となり互いに協力し合って国を運営している商業都市国家─────表向きは、そういうことになっていた。
その正体は、陰謀渦巻く闇の都市国家。一度でも踏み入れれば派閥争いに巻き込まれ駒として使い潰されるか、稀有な人材として重宝されるか、はたまた成り上がって自身も闇の一部となるかのいずれかしか選べず、それが出来ないものは闇に飲まれ死ぬ他無い。
一部の例外としてあまりに絶えず終わりのない争いに嫌気が差し、首都から出る者もいる。しかしそれが出来るのは圧倒的な力を持ち実質的な退場を望まれる者か、もしくは逆に何の力も持たない弱者だけ。
そういった例外がありながらも頂点が決まらず、見えない争いが絶えないのは誰もが求めるものがあるから。そしてそれを得られる場所がランブルギルだからだ。
シャバドゥス王国は商業が盛んだ。それ故に首都であるこの場所には揃わないものはないとまで言われている。
その、目的のものを得るために日夜透明な刃を突きつけ合っているのがこの国の権力者たちだった。
権力を、財力を、実力を、あらゆる力を持つ者だけが栄光を得られる混沌の都。それがランブルギル。延々と終わりのない戦いが、それこそ限りなく続けられる。
現在、最も覇権に近いとされている三つの派閥がある。
一つはこの国の総人口の8割を占めるエルフのみで構成され、輸入と輸出を一手に担う『碧眼のメリウス』率いる《白羊》
一つは自分の身体を武器に成り上がり、ついには夜の女たちを纏め上げ一大派閥を作り上げた、『舞狼のアタンナ』率いる《銀の夜蝶》
一つは単純な武力とカリスマ性、そして持ち前の豪運でもってカジノを運営し邪魔する敵は全て排除してきたランブルギル一番の金持ち『黄金のドッコ』率いる《太陽の一雫》
これらの三派がランブルギルを運行し、争いを加速させている元凶と言っても過言ではない。
シャバドゥス王国が建国されて約千年。
王権制度が廃止されてから、約八百年。
覇権を巡る争いは、未だに終わらないと……そう思われた。
─────しかし。
終わりの見えない争いは、今日を以って終結した。
誰が覇権を勝ち取ったわけでもなく─────
何の関係もない侵略者によって、全てが転覆した。
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《シャバドゥス王国の崩壊を確認しました》
《ミッション達成》
《報酬:十万ポイント&神樹の首飾り》
シャバドゥス王国攻略は、思っていた以上に簡単に終わった。
水源に流した毒は、実に有効に働いた。人が生きるには水は必要不可欠であり、飲まない者は三日と保たない。だからこれは通じるとは思っていた。
しかし、まさか全滅するとは思ってもみなかった。
水源での毒はあくまで弱体化を目的としたもの。殺すためでも、戦わずに勝つためでもない。
だってこの世界には魔法と思われる力があり、迷宮があり、故に解毒など容易いのだと思っていた。
その解毒が間に合わないほどに被毒者を増やしてしまえばいいとは、思っていたが。そのために毒を超遅効性にして約三日間も潜伏させていたのだから。
そんなことを、人がいなくなり静寂に包まれた都の中、虫の上に乗りながら考える。
もはや首都からは人はいなくなり、全て地下の苗床部屋か、肉団子にでもされている頃だろう。
あまりに呆気なく終えてしまって、だからこそ考える。
毒を感知する技術はなかったのだろうか。
あったとしても常に水質を調べたりはしなかったのだろうか。
少しでも異変を感じたのなら誰かに教えたりしなかったのだろうか。
─────全てが仮定の話でしか無い。今のこの状況が現実だ。
「国一つ壊す度に、こういうのが貰えるのか」
気持ちを切り替える目的もあって、手に持っていたそれへと意識を向ける。
シャバドゥスを攻略したことで達成したミッションの報酬だというそれは、今までのポイントだけではなく現物も貰えた。
樹のみで造られた首飾り。随分と凝った装飾をしていることしか、見た目ではわからない。
鑑定もしてみた。しかし詳しいことはわからず、わかったのはこの首飾りには特殊な効果があるということだけ。
『一日に一度、死を否定する』
それが、この首飾りの能力だった。
「めっちゃ強い装備、ってことか」
感想はそんなものだった。念のため、効果がわかってからは常に肌身離さず持ち歩いている。
足をぶらぶらさせながら、首飾りを眺める。暇そうにしているかもしれないが、ついさっき男のTS化を終わらせたばかりなので休憩も兼ねているのだ。肉体に疲れはないが、精神的に疲れている。
あとは……虫たちを待っている。迷宮産と思わしき特殊な効果を持つアイテムを持ってくるよう命じているので、しばらく待てば俺のいる大通りはアイテムだらけになるだろう。
そうして、待っている最中。
「やぁ、元気かな」
あの邪神が現れた。
思わず顔を顰める。見たくもない顔を見た。
「……何の用だ」
「用はないよ。ただ、幸先良く国を一つ滅ぼしたみたいだからね。褒めてあげようかと思って」
「いらない。帰れ」
しっしっと手を振る。まさか、国を一つ滅ぼす度に顔を出してくる気かこいつ。滅ぼしてほしいのなら見守るだけにしろ。
そんなことを思うが、口には出さない。こいつにとってはあらゆるものが娯楽でしかないのだろうから、結局は喜ばせるだけだ。
「ひどいなぁ。でも、その様子だと■■■も手を出してるみたいだし、君との契約を果たすのも時間の問題になりそうかな」
「……■■■?」
邪神が何かを言っている。ある一単語だけ、まるで外国の言葉でも聞いているみたいに理解できなかった。こいつは何を言った?
「そう、■■■。見るだけ見て、たまに干渉する上位存在。今もこっちを見て楽しんでるんじゃないかな。その首飾りも、■■■からの贈り物だろう」
「お前が造ったわけではないと」
「そう。私が与えたのはあくまで力と身体と契約。それを君が何の苦労もなく使い熟しているのは、■■■が力をわかりやすい形で修正したから。その首飾りだって、力とは言い難いだろう?」
……なるほど。どうやら俺が今まで使ってきたウィンドウとかも、その■■■とやらが手を加えたことによるもの。ポイントやミッションも同じものか。虫の使役と生成は……与えられた力、と見るべきだろうな。
つまりその■■■は、世界の滅亡を望んでいると。そうでなければ贈り物なんてしないだろう普通は。
「なんであれ、害はないと見ていいのか」
「ないだろうね。代わりに迂遠な支援しか出来ないだろうけど」
「十分だ」
なんであれ、俺のやるべきことは変わりない。
この邪神の望んだ通りに国を滅ぼす。それが俺のやらなくてはならない役割だ。他の諸々のことは、契約を果たした後に考えればいい。
「おっと、どうやら時間だ。仕方ない、そろそろお暇させてもらうよ」
「もう終わるまで来るなよ」
「ふふ、じゃあね」
「おい」
─────結局、邪神は時間が来たからという理由で現れた時と同じように忽然と姿を消した。空間、次元、世界を跳んだもしくは転移したとか、そういう手段だろう。
しかし、有益な情報は得られた。常に見ていると言っていた■■■という、あの邪神が上位存在と言い切った『ナニカ』。幸い害はないらしいが、今は利用できるだけ利用するとしよう。
「……まずは」
遠目に見ていた虫たちが一斉にアイテムを持ってこちらに押し寄せて来てるので、それの対処から始めようか。
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《第33457709651放棄小世界:魔神と使徒の異世界侵略譚》
366:一般観測者
相変わらずの虫戦略……というか今回虫使いませんでしたね
367:一般観測者
数の暴力と見せかけた毒殺とはこのRIHAKUの眼をもってしても
368:一般観測者
大半は苗床行きなんだよなぁ
369:一般観測者
イヤでござるイヤでござる! かわいそうは見たくないでござる!
快楽堕ちなら許します
370:一般観測者
忍びのフリした畜生オタク
371:一般観測者
美少女が虫を率いて侵略虐殺苗床化させてる姿……良い
372:一般観測者
中身元男だけどそこはええんか
373:一般観測者
死んで数時間放置された魂なんて元の自我とか希薄だし実質女でしょ
374:一般観測者
なんだぁてめぇ
375:一般観測者
TSは元が男なのが良いんだろうがい!
376:一般観測者
者による
377:一般観測者
それはそう
378:一般観測者
ところで属性付与って今回使わなかったけど、アレなんなの?
379:一般観測者
前回の安価で決めたぞggrks
380:一般観測者
ここggrないんですがそれは
381:一般観測者
五行とか四属性とか七曜とか出てくる中で勝者となったのが七大罪というね
382:一般観測者
マジ?
383:一般観測者
なんか使いづらそう
384:一般観測者
でも色欲とか付与したら機械的な虫に性欲が生まれて快楽堕ちとかさせられるんじゃない?
385:一般観測者
天才
386:一般観測者
僕は最初からそう思ってましたよ
387:一般観測者
それ最初は気付いてなかったやつが言うやーつ
388:一般観測者
でも反逆されそう
389:一般観測者
流石にソレは無粋だからないんじゃね?
390:一般観測者
やるとしても一旦攻略してからだろうなぁ
391:一般観測者
相変わらずの鬼畜で草
392:一般観測者
でも見たいんでしょう?
393:一般観測者
見たい
394:一般観測者
いぇーい使徒ちゃん見ってるー?
395:一般観測者
マジレスするけどどう足掻いても気付けないでしょ。物理的に




