シャバドゥス王国編 2
【八日目】
村の襲撃に成功。大量の苗床とポイントを得ることが出来た。しかしこんなものでは足りない。まだまだポイントが必要だ。
とりあえずは試しで村を襲撃してみたが、正直な所リスクが高い。倒すことが、ではなく、倒したことで発見されるリスクがある。
最低でも国一つを落とすまでは、誰にもバレておらず警戒されていない状態にしておきたい。そのため他の村を襲うのはリスキーだ。
だから、遭遇の危険を考えて村を探しつつも最優先なのは迷宮。あそこなら無限ポップだから延々とポイントが得られる。ゴブリン迷宮の分も合わせて最低二倍だ。
というわけで少し遠出して見つけた迷宮が三つほど。見つけた順に蜥蜴、植物、触手の迷宮だった。ポイントは得られるが、ゴブリンのように苗床には適していない。最初にゴブリン迷宮を見つけられたのは運が良かったようだ。
蜥蜴は十層、植物は五層、触手に至っては二十層もの階層があった。しかも触手は十を超えると得られるポイントが増える。とても良い。
しばらくは迷宮攻略に勤しむとしよう。
ちなみに、迷宮のボスは蜥蜴迷宮は巨大なサンショウウオ、植物迷宮は巨大な肉食ラフレシア、触手迷宮は触手部屋がボスだった。
【九日目】
迷宮攻略しているとアイテムが貯まりに貯まる。使い道がないもので巣に作られた倉庫を圧迫している。武装系が多いので処分にも困る。ポーション系も出るが、使い道が分からないので放置するしかない。
どうにか出来ないものかと思っていたら、どうやら異世界定番の一つ、鑑定が出来るらしいということがわかった。ただしポイントがいる。一つにつき100ほど。永久取得も出来るが、その千倍はいる。
迷宮が増えたこともあって多少我慢すれば取得も可能だが、今のところポーションはともかく武器に需要がない。取得する意味も薄いだろう。ポーションも数えるほどしかないので鑑定の永久取得はしばらくお預けだ。
まぁ、どうやら武装をポイントに変換できるようなので貯めようと思えばすぐにでも貯められるかもしれないが……念のため、今は変換しないでおく。代わりに倉庫を増やすことで対処しよう。
それと、保有しているポーションを鑑定してみることにしたわけだが、その内の一つがこれだった。
『若化のポーション』
触手迷宮から出たポーションだが、こういうのってもっとレベルが高い迷宮に出るものなのではないだろうか。迷宮事情なんて知らないからなんとも言えないが。
【十日目】
迷宮攻略をしていると、アイテムがダブることがある。そういうアイテムは実験も兼ねてポイントに変換する。
正直、ないよりマシ程度だった。今後は緊急でも無い限り溜め込んでおくことにしよう。
巣の増築も常に行われている。肉団子の作り置き部屋や栄養液を出す虫の液を貯める部屋、倉庫なんかも増やしている。
あと苗床部屋で思い出したが、捕まえている苗床たちは非常に優秀だ。壊れやすい部分はあれど、そこをしっかり守れば生まれてくる虫も良質なものになっている。一部は炎やら電気やらを扱える個体も生まれている。
ポイントでの召喚ではレベルⅠしか呼べないが、苗床の質によっては最初からレベルⅡの虫もいる。やはり戦力を増強したいなら強い苗床が必要だ。
それと迷宮攻略をしている内に気付いたのだが、虫たちはポイントを使わなくてもレベルアップするらしい。どういった条件かは知らないが、迷宮攻略から帰ってきた虫の何体かがポイントを使っていないにも関わらずレベルアップしているのを確認したので間違いない。
多分レベルが低い個体ほど上がりやすいとは思うので、迷宮攻略には攻略可能な程度にレベルの低い虫をどんどん投入するとしよう。
【十一日目】
ポイントは順調に貯まっている。しかし全ての虫をレベルⅤにするには圧倒的に足りないので日進月歩である。
ポイントを使わずに虫を強化できる方法が見つかってから、他にポイントの使い道はないものかと探していた時のこと。どうやら強化とは虫だけに出来るものではないらしいと気が付いた。
虫だけではなく、自身のレベルアップが可能である。しかし必要となるポイントは膨大だ。虫をレベルⅤにするよりもなお多い。
しかし、ここ最近はポイントを使わずに貯めておいたおかげで、あと数日もすれば俺自身のレベルアップが可能となるポイントに到達する。虫のレベルアップもしておきたいが、もしものために俺も強くしておきたい。
今まで放置しておくしかなかった迷宮のアイテムも、これで使い道ができるかもしれない。俺の強化が単純な戦闘能力であれば、の話だが。
【十二日目】
幾つも村を見つけてきたが、ついにこの国の首都と思わしき場所を見つけた。ここを落とせばこの国……シャバドゥス王国を落とした判定になるのだろう。多分。
あの邪神曰く一番簡単らしいし、攻略自体は出来るだろう。それでこちらにどれだけの被害が出るのか、それが問題だ。
俺が壊さねばならない国は五つ。その中で一番簡単だとはいえ、乗り越えられなければ意味がない。
とにかく戦力の充実と、あとは立地の確認。戦力は言うまでもなく、立地は場所によっては最初の村の時と同じようなことができるかもしれないから。
……いや、後のことを考えて出来る限り建物などには被害を及ぼさないようにしよう。書類や本がある場所は特に。
俺にはこの世界の知識がない。何が出来て何が出来ないのか知るべきだ。もちろん異世界人の俺に読めるかどうかは別として、最低でも地図はあるはずだ。なかったら困る。
地図があるだけでも、何処に行けばいいのかわかるし攻め方にバリエーションが生まれる。建物を出来る限り壊さずに、となると籠城戦をさせて戦力を集中させて少しずつ削るか……? もしくは兵糧攻め……いやどれだけ溜め込んでるかわからないし、何より外から敵が来たら困る。やるなら迅速に行うべきだろう。
爆弾を落とす……建物に被害が及ぶし、そもそもそんなものがない。
巨大な穴を作る……村の時は小規模だから出来たが、首都は大きすぎる。
毒ガス散布……毒が身体に回る前に気付かれるが、工夫次第ではやれるな。本物の毒ガスではないが、似たようなものはある。
兵糧攻め……さっきも言ったが戦いになったら時間はこちらの敵だ。迅速に勝たなくてはならない。
あーだこーだと考え続ける1日になってしまったが……幸い、寝なくても良い体質なので考え続けた。
結果、ある一つの案が思い浮かんだ。先程挙げた兵糧攻めに近いものだろう。
どんな生物であれ、俺の知る生物と似た構造をしているのであれば、通じるはずだ。問題はこの世界の人に耐性があるのかどうかだが……村での様子を思い返してみるに、恐らく大丈夫だろう。
よし、では地下を掘って水源を探るか。
【十三日目】
実のところ、迷宮自体は他にも何個か見つけてある。最初の一つに、後の三つ。さらに狼、ゴーレム、屍の迷宮を見つけて合計七つとなる。
が、少々問題がある。後半の三つ、拠点としている場所から遠いのだ。
全ての迷宮は物量でゴリ押しつつも罠やモンスターハウスもあったので、それらを踏まえてどういう風に周回するかを考えながら攻略している。というかそうしないと被害を増やしてしまうのだ。虫たちは、決して賢くはないから。
そのため、一度は俺自身も攻略に付き合わないと周回に適した攻略方法が思いつかない。そして首都攻略を控えている中で遠出をするわけにもいかない。だから残り三つの迷宮は首都を攻略した後になるだろう。
その首都も、地下を掘らせて水源を確認して仕込みをしているのでもう少しで侵略出来るようになるだろう。それまでは、迷宮周回と虫の強化に勤しもう。
というところで、ついにポイントが一定値に達した。これで俺もレベルアップできる。
どんな強化になるかは知らないが、まさか弱体化するなんてことは無いだろう。ちょっと楽しみになってきたのでレベルアップは明日に回そう。
俺の望む通りの強化をしてくれると有り難いが……明日に期待しよう。
【十四日目】
今日、俺はレベルアップを果たした。
ウィンドウを操作して俺自身のレベルアップを実行したら突如ウィンドウが重ねて現れ、それにはこう書かれていた。
《存在昇華を確認しました》
《眷属の能力が大幅に向上しました》
《属性付与、ステータス閲覧の権限が開放されました》
《肉体を最適化します》
この四行である。俺からすれば何が何やら、という感じだったが意味は分かる。使役獣が強くなって、新しい機能が開放されて、肉体が成長した。つまりはそういうことだろう。
眷属……使役獣がどれだけ強くなったのかは現時点では不明だが、今は一番わかりやすく変化した自分の体をよく見てみることにした。
身長は伸びた。多分、150前後。絶壁だった胸も少女らしい豊かさを備えているし、髪も大幅に伸びた。ショートヘアからロングヘアくらいか。
試しに走ったり運動してみたりしたが、なるほど肉体の最適化とか言うだけあってかなり動けるようになっていた。ただ動けるようになっただけで超人的な力を得たわけではないらしい。岩は砕けなかった。痛い。
自分の体の確認が終われば、次は虫たちの番である。
ざっくり言うと、見た目は大して変わっていない。ただ能力は向上しているだろう。レベルⅡでⅢに匹敵するくらいには強くなっていた。
虫の種類が増えることはなかったが、俺のレベルをもう1段階上げれば増えるだろうか。楽しみだ。
……虫が増えることを楽しみだと思っている時点で、もう手遅れかもしれない。
次は……属性付与とステータス閲覧か。属性付与は見た感じ虫に属性を与えるものなようなので検証は後にして、まずはステータス閲覧から。
結論、生物限定の鑑定。鑑定は生物には出来ないがこちらは可能で、しかし得られる情報が名前と戦闘力とかいうよくわからないものだった。
例えば俺自身を閲覧するとこうなる。
《 》
戦闘力:702
あまりに簡潔過ぎる。というか名前すらない。今世の俺には名前が付けられていないから、なのだろう。
では次にレベルⅠからⅤまでの虫たち。
《ワーカーアント》
戦闘力:349
《トラップスパイダー》
戦闘力:680
《ポイズンフライ》
戦闘力:1001
《ダークマンティス》
戦闘力:1671
《インペリアルセンチピード・ラビュタント》
戦闘力:4231
と、こうなっている。ちなみに上から下にレベルが上がっているが、そのレベルの中で一番高い戦闘力を持つ虫を選出しているので実はアテにならない。だってレベルⅤの百足なんか他のⅤの1.5倍近く離れているんだぞ? こいつだけ強すぎないだろうか。
まぁ多分、名前の後ろについてるのが原因なんだろうが。なんでついてるのかは知らない。迷宮攻略しまくってた個体だからだと思うが……そこはいいか。
虫も増え、仕込みも終わり、レベルアップもだいたい終わった。確認に時間を使いたいのと、まだ仕込みが表に出てないので今日はやめておくが……
そろそろ、攻め込むとしよう。
現在装備・保有中アイテム
魔鉄の毒短剣(毒付与)
幻惑外套(認識阻害)
若化のポーション
治癒のポーション
老化のポーション
猛毒のポーション
解毒のポーション
麻痺のポーション
etc