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冥土♰エスコート  作者: 蒲生竜哉
コーディネーター
13/42

コーディネーター(1)

(……んん、ここは、どこ?)

 

 わたしは目を開くと、見知らぬ天井を見上げた。

 蛍光灯の点いた天井は白く、そして明るい。

 ゆっくり周囲を見回してみる。

 見たこともない機械。周りには医療機器と思われる機械が整然と並べられている。点滴台、エコー検査に使う超音波器具、手術用具の置かれた銀色のトレー、ポータブル・レントゲン。


 不意に、横から綺麗な女性が覗き込んだ。


「あら、起きた? ねえねえ、ちゃんとお師様に会えた?」

 美百合さんだ。緑色の手術着を着ている。

 緑色の手術着は少し血で赤く染まっていた。

「……はい、会えました。でも、これは一体……」

 まだ少し頭がぼんやりとする。

「まだ、麻酔が抜けていないみたいね。笑気ガス使ったから少しぼんやりするかも。しばらくそのまま酸素吸入を続けて」

 引っ張って見てみると、わたしの口には透明なマスクが当てられていた。

 壁の透明なボトルが沸騰したお鍋のように泡立っている。

 どうやら、あそこから酸素が送られているみたい。

「そうだ、わたし、美百合さんに撃たれて……」

 徐々に記憶が蘇ってくる。

「それで、死んだはず。なんで?」

「あのね、」

 いたずらっぽく美百合さんが笑う。

「それは私もあなたと同じ、魔眼持ちだからよ。私は生まれつきだし、ちょっと性質が違うみたいだけど」

 美百合さんは事もなげに言うと、右目からカラーコンタクトを外した。

 綺麗な緑色。エメラルド色に輝いている。

「ほら」

 人差し指で右目を指差す。

「目立っちゃうからいつもはカラコンで隠しているの。私の魔眼は心霊外科能力みたい。子供の頃はこの目でよくからかわれたんだけど、手をかざすだけで人の怪我を治す事が出来たのよ。面白くなっちゃって、いろいろ頑張っていたらこんなになっちゃった」

 片手で周囲を示す。

「ここはね、あなたがいた居間の隣に作った処置室なの。大概の外科手術ならここでできるわ。まあ、実際には器具なんてほとんどいらないんだけどね。さっきの弾もここであなたの心臓から取り出したの。見る?」

「ええ〜」

 お腹に力が入らない。

 わたしはセーラー服の胸元からお腹を覗いてみた。

 わたしの肌には傷一つ付いていない。

 だが、制服の胸当てには穴が空いていた。周りが茶色く焼け焦げている。

 この胸当てはもう、ダメだ。

「でも、どうやって……」

「そりゃ心霊外科だからね。こー、指でつまんでグリグリーッと」

 事もなげにグロいことをいう。だから手術着が血で汚れているんだ。

「ついでに、乳癌になっちゃいそうな乳腺のしこりがあったからそれも取っておいたわ。これはアフターサービス。それにしてもあなた、すごい筋肉ね。まるでバレリーナみたい。弾を取り出すのはちょっと骨だったわ」

「あ、ありがとうございます」


 いいんだか悪いんだかわからない。


「私の治療は高価いのよー。でも今日はタダにしておいてあげる」


 その後、美百合さんに聞いたところでは、彼女はここで主にヤクザのおじさんやおまわりさんの治療をしているらしい。

「ほら、このへん物騒じゃない? お腹が穴々になっちゃった人とかが来るのよう。時には一刻を争うこともあるから、ここに開院したの」

「でも、看板とかって」

「そんなの出せるわけないじゃない。心霊外科医なんて書いたらそれこそドン引きだわ。だいたい、私、医師免許持ってないし。全部、口コミ」


 え? それって闇医師? ブラック・ジャックみたいな?


「それとね」──と言いながら美百合さんは左目からもカラーコンタクトを外した──「あなたとはいいコンビになれると思うの。私、冥土♰コーディネーターだから」


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