魔動列車にて ―合流―
「あ~結構へこむな~」
挨拶もおかしくなかったし、質問にも答えたし丁寧に接したつもりだった。
でも結果は警戒されて終わり。
「何がまずかったかなあ。何かがわかったら次に生かせるんだけど、次聞く機会があったら聞いてみようかな」
まあ、警戒されてたから次があるかはわからないんだけどと思いつつ自分がいた列車内に着いた。
人の気配は先の列車か、まだ動きはないみたい。
そこより先は・・・まあ後でいいかとりあえず近くの気配に向かおう
と、その前に着替えしないと
「さっきも服に血がついていることに対しての質問があったし警戒されないためにも着替えは必須かな」
持ってきたバッグの中にはあと一つしか着替えはなく、収納用に使っている空間魔法の中には
そもそも着替えは入れていない。一応探したがやっぱりなかった。
ここでも師匠の修行に付き合った余波がでたか、用意してた荷物吹き飛ばされたもんなあ
王都に着いたら着替えの購入も考えないといけないか
そんなことを考えていると来た方向の列車のドアが開いた。振り向くと
「え?」
そこにはさっきの4人組がいた。
列車の外から向かうと言っていたから会わないと思っていたけど、どうしたのかな?
もしかして心配して付いて来てくれたとか!
「皆さんは外から向かうと言っていたと思うのですが、なぜ列車内に?」
「ローレルさん一人だと心配だったので、私たちも同行しようと思い来ました。それより」
「そうだったのですか!うれしいです!ぜひ一緒に行きましょう!」
まだ警戒されている感じはあるけどやっぱり心配で来てくれたんだ!優しい!好き!
テンションが一気に最高潮となった。いやーやっぱり誠実に接していたら相手にも伝わるんだなー
「あの、なぜ上半身裸なのですか?」
ん?ああ、着替えの途中だった。確か普通はあまり人には裸を見せないんだったな失敗失敗。
「ごめんなさい。服を着替えてから行動しようと思っていたものですから。今すぐ着ますね」
「いえ、こちらも着替えの途中に入るなど不躾でした。申し訳ありません。」
「私としては眼福だからもう少しそのままでもよかったのだけれどね」
「アグネア!すみません仲間が変なことを」
「いえいえお気になさらず。それより同行してくださるということでしたら改めて皆さんの名前を伺いたいのですが」
「そうですね、先ほどは自己紹介もせず矢継ぎ早に質問をしてしまい申し訳ありませんでした。私はレーンと申します。以後よろしくお願いいたします。」
「私はアグネアという。よろしく頼むよ美しいお嬢さん」
「私はベル・・・です・・・よろしくお願いします。」
「私はレティシアです。よろしくお願いします」
「改めましてローレルです。よろしくお願いいたします。それで」
「ローレルさん!お聞きしたいことがあるのですが、ローレルさんは信奉者なのですか!?」
「レティシア!?」 「おやおや」 「えっ」
ん?信奉者?何のことだ?ああ、神を信仰しているかということか
「私は別に特定の神々を信仰しているということはありませんよ?それがどうかしたのですか?」
「そうではなくて!イブツの信奉者かどうかということです!」
イブツ?遺物か?わかった墓荒らしのことか!確かにそんなことしている人とはお近づきにはなりたくないな
「ええと、墓荒らしということでしたらそういったことを賛美したことはありませんよ」
「はぐらかさないでください!私ローレルさんはいい人だと思っているんです!だから」
「ちょっと待ってレティシア、話が嚙み合ってない気がする。ローレルさん、イブツの信奉者という言葉を聞いたことはありますか?」
違ったらしい、それだけ分かった。うーんイブツの信奉者か、聞いたことないな
「いえ、ありません墓荒らしのことではないのなら何のことなのですか?」
「ああ、やっぱり、まずイブツというのは遠い昔に世界の滅びをかけて神々と戦い、敗北した者達の総称です。異質なるものという意味での異物と過去の存在という意味で遺物を併せて呼ばれています。」
「そしてイブツの信奉者というのはそのイブツを信仰している者たちの事を指します。」
「なぜ敗北した負け犬たちをわざわざ信仰するのですか?」
「理由は人それぞれと言われていますが、共通しているのはこの世界を滅ぼしたいと思っていることでしょうか、神々はそういった願いは聞き届けない、だからイブツを信仰して力を借りようと思っている、らしいです。」
「負け犬たちの力を借りてもたかが知れていると思うのですが・・・まあそういう人たちがいるのですね。当然私は違います。自分がしたいことは自分の力でしたいと思っているので」
「ええ、今のやり取りでイブツの信奉者でないことはよくわかりました。これでいい?レティシア」
「うん。ありがとうレーン。それとごめんなさいローレルさんいきなり変なことを言ってしまって」
「気にしなくていいですよ。私を信用しようと思って言ってくれたことみたいですし、おかげでイブツの信奉者という存在について知ることができました、ありがとうございます」
「うんうん良いね、ローレルさんが信奉者どもじゃないことが分かって私もうれしいよ。それと疑っていて申し訳ない。今回の列車騒動も奴らの仕業のようだからつい警戒してしまっていたんだ。」
「そうなのですか、そういった事情があるなら警戒するのもしょうがないと思うので気にしないでくださいね?」
なるほど、その信奉者どもとやらを警戒しているところに血の付いた服を着た私が来たから警戒が強まったということか。つまり私に間違いはなかったということだねよかったよかった
とと、よく見たら皆小さいけど何かしらの怪我をしているな。治しておこう
『癒しの・・力よ、かの者たちの傷を癒し体を整えたまえ』
癒しの術をかける。レティシアさんはアンデッドだからちゃんとそれに適用もさせた。
・・・直前に気づいてよかったよ
「ローレルさん!レティシアはアンデッドで・・・あれ?レティシア大丈夫?」
「うん、最初は少し驚いたけど大丈夫それどころか体の調子が良くなった気がするよ」
「私もだ、傷が治り、調子が良くなった。ローレルさんは癒し手だったんだね」
「私もだ。すごい、私たちだけじゃなくてレティシアにまで効く癒しの術を使えるなんて・・・」
「ちょっと調整をしたらそのくらいはできますよ。さあ、それでは皆さん出発しましょうか」
誤解も解けて、傷も治して、服も着替えた。
さあ!列車内の捜索に行こう!