魔動列車にて ―相談― 4人組視点
「さて、みんなさっきのローレルさん、どう思う?」
「私は正直怪しいと思うよレーン。最初の挨拶、話の内容どれも普通じゃない」
「でっでも!私たちを気遣っているようにも見えましたし、私がアンデッドと知っても全然態度を変えなかったし、いい人だと思います!」
「レティシア、世の中には顔色一つ変えずに騙す者もいるんだ。その言葉だけでは信用はできないと私は思うな」
(アグネアのいうことは正しい、平然と人をだます人もいるし、さっきのローレルと名乗った人は明らかにおかしい人だった。だけど・・・)
「個人的には嘘はついていないと思う。そして、嘘をついていないのなら奴らと敵対している可能性が高いから一応味方と考えていいと思うわ」
「やれやれ、2体1か、それで?レーン、君がそう言う根拠を聞かせてもらえないかな?」
「根拠と言えるほどのものでもないわ。ただ、色々な嘘つきを見てきた経験からの勘よ」
「勘か・・・帝国貴族である君の言葉ならある程度信用はできると思うが・・・」
(貴族という立場なら確かにそういった判別は得手としているのかもしれないが根拠としては弱いか、信用するには他にも何か欲しいが、ん?そういえば・・・)
「そういえばベル?ずっと静かだが、体調でも悪いのかい?」
「そうね、様子がおかしいから見ていたけど、大きな怪我はないし、毒は解毒もしたから何が原因かわからなかったわ、ベル何かあるのなら教えてくれない?」
「えっベルさん体調悪いんですか?大丈夫ですか?横になりますか?」
「あーうん、大丈夫大丈夫、今は調子いいし怪我とかもしてないよ。ただ、ローレルさんについてみんなに伝えておきたいことがあるんだ」
「教えて、感覚が鋭い貴方が何を感じたかというのは重要よ」
「うん、結論から言うとあの人はヤバい。こびりついた血の匂いと死の気配。沢山の戦士を見てきたけどあんなの私は知らない。」
「そんなにヤバいのかい?確かに言動とかは怪しかったがそこまでには見えなかったけれど」
「ヤバいよ。あれに比べたら私たちがさっき倒したジャイアントゾンビや信奉者どもなんかその辺にいる虫けらレベルかな。」
「歴戦の戦士からは血の匂いがするんだ。新鮮な血の匂いじゃない体にこびりついた血の匂い、その匂いが濃いということは過酷な戦場を生き抜いてきた証でもある。ローレルさんはむせ返るほどの匂いがした。それに伴う強者の気配ももう強者を示す者ではなくて、死を連想させるものになってた。」
「だからあの人とは絶対に戦っちゃいけない。私たちが挑んでも多分一瞬でやられる」
「なるほど、獣人の中でも特に感覚が鋭いベルがそこまで言うならそうなのでしょうね。なら私は彼女に同行することにするわ」
「なんでそうなるんだい。彼女が危険な存在ならそれを避けるというのは当たり前だと思うのだけれど?」
「言ったでしょ?私は帝国貴族。無辜の民に危険が及ぶのならそれを守るのも強者たる我が一族の役目よ。危険を及ぼすのかはまだわからないけどね」
「私もレーンに賛成。一瞬でやられるかもしれないけど、それ前提で戦うなら逃げる時間位は稼げるかもしれないし」
「私もレーンさんに賛成です。でも私は悪い人じゃないと思うから同行を選びました。」
「やれやれ・・・君たちは本当に・・・わかったよ私も同行しよう。」
「あら、貴方だけでも先に行って他の人たちに話をしてきてもいいのよ?」
「それだけ強い存在がもし乗客を皆殺しにしようとしているのなら話をして逃げても結果は変わらないと思うよ。それにこんな話信じてもらえるとは思えないし、何よりせっかくできた友人たちだけを危険な場所に向かわせるというのは私の流儀に反する」
「ありがとうアグネア。私が言うのもなんだけど、貴方も大概変人よね。」
「礼を言った後に言う言葉がそれかい?まあ自覚はしているよ。そうじゃないと嬉々として故郷を離れたりしないしね」
「あはは!二人とも仲良いねえ。それじゃ方針が決まったなら向かおうよ」
「そうね同行理由としては、気になったからとか心配になったからでいいわ。嘘ではないから嘘を見破るのが得意だったとしても気付きにくいわ。突っ込まれそうなら改めて目的を聞いたりして濁しましょう」
「いっそ直球で聞いてみるかい?貴方は奴らの仲間ですか?とか」
「場合によってはそれも正解だけど、完全に性格をつかんでない今の状態ではちょっと怖いわね」
「ははは、だろうね。それじゃ出発しようか」