おねぇ聖女が凄すぎて、歴史書には残すことができません!10.二人目の聖女
私はエドガー・バルマー。王命により重要な任務を遂行中だ。
「ヴァルヴァラ様は聖女であり、王国に貢献できると考えております」
隣国の一つが聖女を見つけたと報告にきたのだ。少し表情に影のある女性だが神具は確かに聖女だと示している。
「そうは言われてもな……」
王が私に目配せをしてきたので軽く頷く。真偽を確認するのが私の役目だ。
「王国には聖女を護られる家筋があると聞いておりますので宜しくお願い致します」
なんだ? 使者は逃げるように謁見の間から立ち去ろうと……おいっ待て! 聖女を置いていく気か?
「なぜ私を置いて行くの! 行き遅れだから? 28にもなって貰い手もないからなのね! もう嫌ー!!」
な、なんだ? ヴァルヴァラ様がいきなり叫び出した? あ……手首切った……
ブシュー!
まずい! いくら聖女様の血とはいえ、謁見の間を血で染めるわけにはいかん!
「王様、聖女様は少々疲れているようです。退場させて頂いてもよろしいでしょうか?」
ふう……間に合った。仕方が無いとはいえ、聖女様の手首を掴み、血が滴らないように体を密着させてしまった。
「あなた誰?」
ヴァルヴァラ様が私の顔をずっと見ている。何か気になる事でもあるのか?
「私はエドガー・バルマー。聖女様の護衛の者です」
いや、そんな事はどうでもいい。今は謁見の間から出なければ……
「独身?」
ヴァルヴァラ様は何を聞いているのだ? 確かに父からは見合いはどうかと勧められているが……って、それどころではない! さっさと答えて連れ出そう。
「はい、独身です」
その瞬間、青白い光が溢れた。聖女の奇跡だ……手首の傷が治っていく。
「私、決めました。この王国でお世話になりたいと思います」
よくわからないが、本人も薄っすらと笑っているし、落ち着いたようなので、さっさと連れ出そう。
◇
私は今、ヴァルヴァラ様に両肩を掴まれて揺すられてる。様付けも疲れてきた……ヴァルヴァラでいいかな……
「どういう事! 他に女いないって言ったじゃない!」
そんな台詞は言った覚えないし、ヴァルヴァラが指さす先に居るのはマリアだ。どうして、あれが女に見える……
「あらー? なにその聖女?」
マリアはヴァルヴァラが聖女だとわかるのか……
「しかも他の男の匂いもするわ! 聖女のくせに、このビッチ!」
王国に聖女が増えたのは喜ばしいが……何故、こんなのしか現れないのだ!
「大丈夫よ。彼とは何にもないわ。そんなに心配?」
心配? マリアは何を言っているのだ?
登場人物が揃ってきました! あと少し!