一章~可愛い転校生~
俺にも春が来た。ついに…ついにだ。
高一に何もできなかった俺にやっと青の文字が見えてきた。
高二の春に転校生が来た。
やけにうるさい教室内で騒いでいるのはクラスの男子達だった。
それを見て少しどころか結構引いている女子達。
それもそうだろう、今日転校してくるのは女子らしい。
昨日サッカー部の奴が職員室で見たんだとよ。
しかも“かわいい„というおまけ付
その話題で友達と話している俺、春波 快も内心緊張している…
「快、どうするよ。告白しちゃうか。」と、ニヤつきながら声をかけてくる
こいつは南 陽斗俺の幼馴染である。
「しないよ、俺はしない、絶対、多分、少しも…」
「まぁ、そうだよなぁ、昔からそうだもんなぁ快は。」
好きな人ができても告白はしない。
それが、いつもの俺である。
そしてHR
「はいはーい!皆さんちゅーもーく!今日はななななんと、転入生が来ます!てか、来てます!」
このビーフシチューを三日三晩煮込んで濃すぎるわ!とクレームが来そうなぐらい濃いキャラの人は
この二年三組の担任 成瀬 華先生だ。
「相変わらずだねぇハナちゃん先生、可愛すぎんだろ…」
俺は陽斗の涎を見逃さなかった。
「そこまで好きなら告白しちゃえば?俺のことよりもお前の恋事情を発展させろよ」
「俺だってしたいと思うよ。けどな、涎と鼻血はさすがにやばいだろ?」
確かに、と頷いてしまった。てか、鼻血もでんのかよ。
「それに俺は、卒業の時に思い伝えてボタン渡すの。」
そこまで考えてんのかこいつ。幼馴染ながらして少し引いた。
「それじゃあ、登場してもらいまーす!どぞー!」
先生の言葉に続いて扉が開く
その途端、ざわついていた教室が静まり返った。
それもそうだろう、可愛すぎるのだ。
何もかも可愛い。髪はさらさらしていて、瞳は黄金のように光っている。
顔立ちは最高に整っている。
しかし、静かになったのはこれだけじゃない。
学ランを着ているのだ。でも可愛いのは確かだ。
「風宮 凛です。男です。よろしくお願いします。」
淡々とした挨拶をする風宮。
「風宮君の席はうーんとね、そうそう!クラス委員の春波君の横!」
クラス全員の視線が俺に向く。とても痛い。
「皆、仲良くしてね!」
完璧なウィンクをする成瀬先生
「かわよいな」と陽斗が呟く。
「なんなんだこいつ」思わず声に出た。
俺の横に座る風宮に挨拶をすると、さっきと変わって少し緊張しているのか
「よ、よろしく」と少し下手な笑顔で返事をしてくれた。(可愛い)
俺は一目惚れしてしまった。風宮は男だとわかっているはずなのにどうしても可愛いと思ってしまう。
一時間目終了後、お決まりの通り風宮の前に人が集まった。
あれやこれやと質問攻めを受けている風宮。
あたふたしているのも可愛い。
俺は、邪魔になるので陽斗と一緒に飲み物を買いに行った。
「それにしても驚いたよな、あの見た目で男って」
「それ、めっちゃ可愛い」
「恋した?」
「うん…は?」
陽斗の質問にうんと答えてしまった。
言い訳を考えている俺に陽斗が
「へぇ、そっかまぁ、頑張れよ!」
笑顔で背中を叩かれた。馬鹿にしてるのか?
教室に戻り早速、陽斗が風宮に話しかけた。
「ねえ、風宮君こいつが連絡先知りたいって言ってんだけどいいかな?」
(こいつ、本当ついていけねぇ。)
「う、うん。いいけど。どうして?」
「こいつ、快は、クラスの委員長なんだよ。」
「それで快がクラスの連絡を回してるからさ何かあったとき連絡つかなかったら不便だし」
「そ、そうなんだ。それじゃあこれ…」
その手があったか陽斗、感謝するよ。俺は風宮の連絡先を登録して礼を言う。
「わからないことは、快に聞きな。こいつ何でも知ってから」
わかったと俺にキラキラした目を向けて返事をする。
(何期待してんだ…俺)
二時間目、さっきのHRと違い騒いでいるのは女子達になった。
そりゃあ、男子と分かれば女子達が騒ぐのも無理はない。
先生が注意しても一向に静まらない、半分先生も諦めているのが現実。
実際、女子の痛い視線が俺に向いている気がする…
「なぁ、すまんが助けてくれんか?」
「快、今は授業中だ。静かにするのが当たり前だろ」
まじかこいつ、いつも話しかけてくるのに今日に限ってこんなことを。
ちょんちょんと、肩を叩かれる。
「すみません、ノート見せてくれませんか?写し遅れしまって」と声を少し小さくして
俺を呼ぶのは風宮だった。
少し不愛想な対応で、ノートを渡す。陽斗が伏せながら笑っているのが少し腹が立った。
ノートを返された時のありがとうという言葉と笑顔に気絶しかけた。
いや、気絶しない方がおかしい。つまり、俺はおかしいのか?
「…み…は…み、春…春波。大丈夫か?おい」
先生の声でハッと意識を戻る。まぁ、俺が正常だというのは確認できた。
「すみません、少し考え事をしてました。」
教室内に笑いが起こる。その笑いとは違う笑いが前の席の陽斗から聞こえる。
陽斗はいつもこんな感じだが今日はやけに笑っている。
「まぁ、ほどほどにな」と、ほぼ心が折れている先生は言った。
そして、昼休み
風宮は俺と陽斗のとこに来た。ちなみに今食べてるのはハムのサンドイッチである。とてもうまい。
「お弁当、一緒に食べてもいいですか?」少し照れる風宮。
「どーぞどーぞ、一緒に食べましょうぜ、風宮君」あっさり了承する陽斗。
俺はもう食べ終わるのだが、お茶でその場を濁す。
「春波君、食べるの早いね。いつもこんな感じなんですか?」
俺が少し気にしていることをあっさりと聞いてくる。
「ま、まぁ。昼はそんなに食べないんだ」
「だからお前はもやしって言われるんだよ」
(はい、今の一言で今日で削られたメンタルが壊れました。先生同情するよ…)
「そうなんだね。けど、しっかりした身体だよね春波君。」
「快は何でもできるからなぁなんでかは知らんが」
「何でもは出来ない、出来ることだけだ。」
聞いたことがあるフレーズを言ってみる。
「すごいね、春波君。僕何も出来ないから憧れるよ」風宮が少し俯く。
「ちなみに、風宮君は何かやってるの?」
「中学生の時に書道と茶道を少しと去年まで剣道をしてました。
そのせいで、男らしくないって言われることが多くてからかわれることが毎日でしたけど」
「そうか、すまんな嫌なこと思い出させてしまったか?」
「大丈夫ですよ、皆さん良い方ですし。剣道を続けたおかげでほんの少しの人が言ってるだけですから」
おかしい、陽斗と風宮が画になっている。(とてもうら…裏山に行きたい気分だ。)
ちなみに、俺は風宮と全然話せていない。陽斗とは盛り上がっているが、俺は話を振る事が出来ない。
そんな俺を見て風宮が声をかけてきた。
「僕、邪魔ですかね?だったらごめんなさい」
「い、いや。大丈夫。俺が少し人見知りなだけだから。風宮が謝る事じゃないよ」
風宮の表情が少し変わった。
「凛でいいよ、僕も快君って呼ぶから」
(んんんんんんんん?なんで?うれしいけどなぜなんだ?)
「ダメかな?」
最強にかわいい上目遣いで俺を見る。
「わかったよ、凛」
「快君と仲良くなれるよう頑張るね!」
多分、風宮は俺が人見知りだと知って仲良くなろうとしてくれてるんだろう。(優しいかよ)
「俺も凛って呼んでいい?君付けって慣れてなくってさ」
「もちろんいいよ!陽斗君だから陽君だね!」
風宮は意外と元気な奴だ。挨拶の時とは印象が少し変わった。
皆から質問されているときは緊張していたのか、俺達とは普通に話せている。
「てか、凛はなぜ俺達のところで、ご飯を食べようと思ったんだ?」俺はふと疑問に思った。
「快君、委員長だからこの学校のこと教えてもらおうと思って。
それに、初めて声をかけてくれた男子が快君と陽君だし」
そういえば、質問してたの女子ばっかだったもんな。
「凛、放課後空いてるか?」
「空いてるけど、どうして?」
「この学校広いからな、学校案内だ。今日は移動教室がないから困らなかっただろうけど」
「そ、それもそうだね。お願いするよ。」
そして、俺は凛と放課後に学校案内する約束をして、昼休みを終えた。
テルナと申します。
私は、男の娘というのが大変好きでございまして。
ラブコメに出てくる男の娘って主人公の親しい友達でしかないと思うんですよ。
その男の娘は今後どうなるか知りたいんですけど。
ラブコメって主人公とヒロインが付き合ったらそこで話って完結すると思うんです。
なら、いっそヒロインを男の娘にしちゃえばという考えで書いたものです。
一応、BLなんですけど普通のラブコメと変わりなく進んでいくと思うのでよろしくお願いします。