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マリアンヌの婚約 ②

「最近、頑張ってるんだな?」


「あんたが褒めるなんてどう言う風の吹き回しよ、明日嵐でも来るんじゃないの?」


「辛辣だな、言葉のままだよ」


「そりゃあ…」


 もうすぐしたら、フリードリッヒ様がここを出て行くからだなんて言えないし…。そうだ、


「クロエ達ももうすぐしたらお嫁に行くかもしれないでしょう?その前には、どうにか一人でお嬢様を守れる位にはなりたいのよ!」


 今後連絡を取り合い、お互いに協力をして行く為には、クロエ達には是非力を持った家へ嫁いで貰いたいものだわ。そのための協力は惜しみませんよ!


「え、お前も縁談を探してるんじゃあないのか?実家の借金は片付いたんだろ?」


 セルロスも私が結婚相手を探してると思ってるのね。まあ、仕方ないわね、ここにいる若い侍女は多分みんなそうだし…


「そうもいかないのよ。弟には騎士学校に行って貰いたいしね。合格が貰えたの、私が仕送りをすれば通えるのよ。今、結婚なんてできないわよ、どっちみち持参金額も用意出来ないしね」


 セルロスも当然知っているよね、騎士学校や魔法学園に通った者とそうでない者の差を、一生それは付き纏うことを。シンが騎士学校を卒業して家督を継げばお父様が貰ってくる給金よりだいぶ増える。シンが騎士学校を無事卒業することが我が家の悲願なのよ。


「お前も苦労してんだな。モーガン公子のことを調べてたから、てっきりお前もかと思ったんだよ」


「この前、ルーキン伯爵と共にフリードリッヒ様の剣を新調する為にいらっしゃったでしょう?あの時、ハンナが声を掛けられたのよ。で、どんな方か調べてたわけ、ハンナには良い家に嫁いで貰いたいじゃない?で、セルロスはどう思う、モーガン公子?」


 セルロスは少しホッとしたような表情をした。


「なんだ、ハンナさんの相手かよ。今ある武器屋の中でダントツだな。かなりのやり手だよ」


 あら、珍しいじゃない、セルロスが私が尋ねた貴族を褒めるなんて。


「なら、質問を変えるわ。モーガン公子と懇意にすることはお嬢様の利益になる?」


 セルロスが声を荒げる。


「おい、モーガン公子と懇意にするってどういう意味だ!」


「何を興奮しているの?ハンナは私の親友よ、その彼女が嫁ぐんだもの必然的にモーガン家と懇意になるじゃない」


 あーもう、こいつ本当最悪!私を何だと思ってるのよ!私が親友を口説いている人間に粉をかけるような最低な人間だとでも思ってるの?


「ああ、そ、そうだな。普通に考えたらそうだ」


 セルロスの口を手で押さえてモゴモゴと言い繕う姿にも軽く苛立ちを覚えながら睨み付ける。


「で、どうなのよ?」


「武器を扱っているだけあって、情報網は申し分無いよ。騎士から冒険者、貴族のお抱えの暗部にまで精通してらっしゃる」


 お嬢様の為になる方ね。ご実家を出られて男爵として陞爵されても、それだけやり手ならハンナもお金で苦労することは無さそうね。いくら爵位が高くてもお金がなきゃ、さもしい生活になってしまいがちですものね。


「ありがとう、ハンナに良い相手よって、伝えておくわ」


「お前、クロエさんの相手もこうやって聞いて回ってるのかよ」


 セルロスは天井を仰ぎながら、溜息混じりに肩を落とした。


「まあね。ねえ、奥様、領地へはいつお戻りになるか聞いてない?」

 

 奥様はお嬢様がお嫌いではない、寧ろ、大好きでいらっしゃるんだけど、いまいち扱い方がわからないでいらっしゃるから、なるべく仲良くなるお手伝いをして差し上げたいのよね。


「来月には、戻られるっておじさんが言ってたし。また、奥様に手紙を書くのか?」


「そうよ、お嬢様の普段の様子と、今一番喜ばれるプレゼントと、是非お褒め頂きたいことを。でね、お嬢様がクロエと作った押し花の栞を同封するの!」


 お嬢様には奥様から愛されているって実感して頂かないとね!


「今回のお戻りは、リフリード様とお嬢様の顔合わせも兼ねてらしい。久しぶりに旦那様もご一緒だよ」


「なら、お嬢様、お喜びになるわね」


 ウキウキしていると、セルロスの顔が曇る。


「そうも言ってられないな。リフリード様との顔合わせということはフリップ第一夫人もいらっしゃるってことだ」


 フリップ第一夫人、リフリードの母で、旦那様と結婚したいと渇望した人。浮気をしてリフリードを産んで、まあ、なんというかトラブルメーカな人ね。この人がお嬢様の婚約相手にリフリードを押さなかったら、フリードリッヒ様と婚約できたかもしれないのに、ああ、全ての元凶に見えてくるわ。


 セルロスも嫌いなんだ、フリップ第一夫人のこと。


「会ったことあるの?」


「ああ」


 セルロスの顔が険しくなる。フリップ第一夫人に対して良い思いがらないのがありありと伝わってくる。


 良い方ではないことだけは確かね。


「どんな方?」


「ざ、貴族様だよ。赤い髪のすごく美しい方であるのは間違いないな。今でも旦那様を愛していらっしゃるのがこっちにまでひしひしと伝わってくるよ。第二の夫人、それも叶わないなら愛人でもいいって何度も旦那様に仰っていたよ」


 なんと言うか、可哀想な方ね。そんなに旦那家のことがお好きなんだ…。


「お綺麗な方なんでしょう?旦那様は一切靡かれなかったの?」


「そう、皇女様であられた奥様一筋だったって聞いているよ。せめて、シードル様が旦那様と同じフリップ家の色だったら良かったんだけど、ほら、ご夫人の色だったからね。その上、フリードリッヒ様が旦那様と同じ色でさ」


 こればかりは仕方ないとはいえ、なんと報われない方。だから、フリードリッヒ様が此方で暮らしてらっしゃるのね。


 その第一夫人がいらっしゃるのか、セルロスが嫌がるのも無理はないわ…。で、そのドロドロの愛憎劇の主役が一同に会するのが今回の顔合わせと、うわー、確かに使用人としては気が滅入るわ。


 この婚約じたい上手く行く要素が無いんだけど…。なんとなく、リフリードがジュリェッタに惹かれる理由の鱗片が垣間見えた気がするよ。


今週中に一度更新してしたい。←希望

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