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ラティーナからの手紙

 ラティーナ様からの手紙には、スミス伯爵令嬢の治癒魔法の相手がフリードリッヒ様だったこと、ミハイロビッチ様が急いで帰られた事が書かれていた。また、マダムの店の予約のお礼と、ドレスの仮縫いが無事終わったことが書かれていた。ドレスに合わせた装身具と靴を手配して欲しいと言うものだった。その請求書の全てをクラン子爵家へとまわす。


 ラティーナ様が魔法学園に入学されてから、クラン子爵家は大変なことになっているに違いない。マダムのドレスにローディア商会とフール商会からの請求書。全て名高い店からのものだ、踏み倒すことも、突っ撥ねることもできないだろう。


 クラン子爵夫妻の青い顔が頭に浮かぶ。散財と言うには足りない金額というのがミソだ。購入先がこの3店舗だけだから、散財だと騒ぎ立てれば、自分達がラティーナ様を蔑ろにしていると世間から冷たい目で見られる。ラティーナ様が冒険者をしていたのだって、本当は、クラン子爵夫妻が彼女に生活費を与えて居なかったからでは?という憶測まで飛び交うだろう。


 ラティーナ様の治癒魔法の相手は、ソコロフ侯爵家の三男らしい。ラティーナ様は母親は侯爵家の出身だけれど、お父様は子爵家の人物だから、治癒魔法の力はそこまで強く無いらしく。ソコロフ侯爵家の三男は将軍となるには若干懸念が残るとのことだった。


 スミスご令嬢が治癒魔法を習得されたら、王太子殿下とご婚約され、半年後の婚姻と共に、陛下が交代する。フリードリッヒ様とソコロフ侯爵家の三男は近衛騎士として、城住まいとなるのよね。


 はあ、まずは、シュトラウス子爵家のメイドを、個人的に受け入れて良いか、奥様に相談ね。シュトラウス子爵家から来たメイドには、私の身の回りの世話をして貰うつもりだ。今までは、リマンド侯爵家のメイドに頼んでいたが、ここで、一生お嬢様の侍女としてやっていく覚悟だ。なら、他のご令嬢と同じように、私、個人でメイドを一人雇ったほうが都合が良い。個人的な用事を頼む時に、態々それをしてくれる人を探さなくても済む。


 社交会クラブやラティーナ様、実家にパブロ商会、フリードリッヒ様、個人的に連絡をとるべき相手が増えた。それに、もうすぐ私はお嬢様に付いて行き、数年は領地へ籠る。王都へそう頻繁に来ることは叶わない。やはり、王都で自由になる手足は必要だ。


 お嬢様が学園へ入学されたら、その必要性はもっと増す。旦那様が毒に侵され、寝込まれるようになると、セルロスを始め屋敷の者達はお嬢様を気にかける余裕なんてなくなるから…。


 シュトラウス子爵家へのメイドへの手紙を書き終え、ラティーナ様の依頼の手配をする。マダムの店と、フール商会、ローディア商会へアポイントメントを取らなくてはならない。


 先ずは、マダムの店で、ドレスのデザイン画を借りなきゃ。それと、実際に仮縫いしてあるドレスを見せてもらう必要があるわね。装身具はフール商会、手頃だけど職人の腕が良いし、流行りに敏感だ。ただ、宝石は持ち込もう。あそこの宝石は種類が少ない上、質が劣る。ローディア商会で宝石と靴を手配しなければ。


 他の商会や工房も使えればいいのだが、ラティーナ様が散財していないということを証明する為と、私がラティーナ様の品の手配をしていることが知られないようにする為には、他の処へ頼むのは危険だ。


 頭の中で予定を組み立てて行く。クリスマスまであまり時間が無い。既製品を使わないとなると、それなりに時間を要す。でも、このクリスマスの夜会はラティーナ様にとって、名誉を回復させる為の重要な足掛かりとなる。乗ってしまった船だ、失敗は許されない。ラティーナ様のことが済めば、元冒険者だったラティーナ様の伝手を使い、ジュリェッタの動向を探ることができるかも知れない。


 書き終えた手紙を持って、セルロスの所へ行く。同じ場所へ出す手紙があれば、一緒に混ぜてもらう為だ。それ以外は、近くであれば、屋敷の下男にお金を渡して届けて貰う。遠いものは、商業ギルドへ依頼しなければならない。

 

 まだ、リサ伝えてないよね?いっそ、忘れてくれたら良いんだけど…。


 旦那様の執務室へ続く小部屋をノックすると、どうぞと言うセルロスの声が帰ってきた。


 ユリがドアを開けて、恐る恐る様子を伺うと、セルロスは難しい顔をして、書類と睨めっこをしている。


「どうしたの?難しい顔をして」


「ああ、シュトラウス子爵の息子であるミハイロビッチ様が、爵位と領地を手放されるとお決めになった。だだ、故シュトラウス子爵の借金が厄介でね。その相手がマロー男爵なんだ。シュトラウス子爵家にはルーキン伯爵もかなりの額を援助されていて、その為、こちらでもその動向を追っていたんだけど…。これは、一旦、王都裁判所を入れて、公的に片を付けた方が良いかもしれない」


「なら、パブロ商会の会長へ連絡した方が良いわね」


「ああ、できれば、クリソン伯爵の力添えがあった方が良いな。相手はあのマロー男爵だし」


「なら、クロエに連絡をしてみるわ。手遅れにならないといいけど…」


 クロエは今やクリソン伯爵夫人だ。クロエに連絡すれば、クリソン伯爵に手助けを頼むことは容易だろう。パブロ商会の会長が頼むよりは、クロエからの方が勘繰られ無い。パブロ商会の会長だと、裏があるんじゃないかと思われても仕方ないからね。


「なら、ここで手紙を書いてくれ。他のモノと一緒に、クリソン伯爵邸へ急ぎ届けさせよう」


 ユリは持っていた手紙を全て、セルロスへ渡した。セルロスはちゃっちゃとそれを仕分けして、部屋から出て行く。


「それ書いといて、手紙を頼んでくる」


「わかった」


 何よ、普通にしてくれちゃって、変に意識している私が馬鹿みたいじゃない!いや、セルロスは悪くない。私が勝手に意識しているだけ、彼は、イベントでの私の服を用意してくれる。私は人脈作りに彼と一緒にイベントに参加する。服を用意してくれる見返りとして、彼の恋人役を演じる。


 そう、セルロスは利害が一致した関係。ただ、毎回、セルロスのパートナーとして参加するから、恋人もとい婚約者ということにしておいた方が、世間的にも通りがいい。セルロスの女よけにもなるし、セルロス目当てにリマンド侯爵家を彷徨かれたら、旦那様や奥様にも迷惑がかかる。ただ、それだけの関係。


 そう自分に言い聞かせる。


 勘違いしては駄目。


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