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お嬢様との出会い

 侯爵家にお世話になって数日後、奥様に初めて挨拶させていただきました。


 それはそれは綺麗な奥様、出るとこは出て、でも、腰は細っそり手脚は長くまるで妖精のよう。これが、産後すぐなんて信じられない!


 うん?


 どこかで見たことのあるお顔?


『たおやかな美しい金色の髪に、細っそりとした腰、長くしなやかな手脚、キリッとした意志の強そうな美しいモーブの瞳』


 小説の一文を思い出しちゃったよ。


 モーブの瞳?


 奥様の腕の中には、金髪にモーブの瞳の可愛らしい赤ん坊が…。


「ユリ、娘のマリアンヌよ、可愛いでしょう。仲良くしてあげてね。」


『マリアンヌ』


 あっ、私の人生詰んだ。これ、悪役令嬢のマリアンヌじゃん。じゃあ、私はこの赤ん坊もとい、マリアンヌお嬢様付きの侍女になり、主人公であるジュリェッタに嫌がらせをして二人で、修道院送りか死刑になる運命だわ。


 じつは私、前世の記憶ってのがあるのよね…と言っても完全な、ではなく、朧げなんだけどね。ここ最近、よく前世を思いだすのよね。


「はい、よろしくお願いします。」


 この挨拶をするだけで、今の私には精一杯なのよ。


「緊張しちゃって、可愛い。大丈夫よ、怖くないから」


 ふふふと、奥様は少女のように可愛らしく笑ってらっしゃいました。


 頑張れ、ユリ。頑張って小説の内容を思い出すのよ!まだ、マリアンヌお嬢様はまだ赤ちゃん、回避する方法は必ずあるはずよ。


 マリアンヌお嬢様は、赤ちゃんの頃からご一緒に過ごされた、フリップ伯爵夫人とその息子のフリードリッヒ様に可愛がられてすくすくと幸せに大きくなるのよね。でも、二人がリマンド家を去ると、寂しくて荒れてしまうのよ。幼馴染で婚約者のリフリードに当たり散らすようになり、ジョゼフ殿下にも高飛車な態度をとるようになって行くの。


 でも、父親を、凄く尊敬していて。頑張って侯爵みたいな人間になろうと努力するんだけど、魔法学園に入学してすぐに侯爵は敵国のスパイに暗殺されそうになり、毒を塗った刃物でさされるのよ。


 侯爵夫人は慣れない侯爵家の事業に四苦八苦で、マリアンヌにまで気が回らない。手紙もプレゼントすら実家から来ないマリアンヌは侯爵令嬢にもかかわらず、学園で冷遇され始め、必死で対面を保つ為に頑張るんだけど、ついには、心折れてジュリェッタに嫌がらせを始める。今まで、馬鹿にされていた鬱憤の溜まっていたジョゼフ殿下にこれ幸いにとその罪を糾弾され、学園を去ることになるのよね。


 いつのまにか、婚約者のリフリードはジュリェッタに心を惹かれているし、ぼろぼろの状態で帰った実家は母が騙されて事業を失敗して二進も三進もいかない状態。


 うーん、ここまでで、あまりマリアンヌ悪くないじゃん。一番の問題は侯爵が毒に侵されることと、婚約者のリフリードが役立たずなこと、ちゃんと、フォローしろよ!


 それと、リマンド侯爵夫人があまりにも使えないことが問題じゃない?


 まあ、この後はどうしようもなくなって、決して使ってはいけない治癒魔法使っちゃったり、回復薬売ったりして反逆罪でつかまるんだけど…。それも仕方ないのよね、あんな状態じゃまともな判断なんてできるわけがないし…。どうにかしなきゃ、って必死だったわけだし。リマンド家が没落しだしてからの、周りの貴族達の冷たいこと人間不信になりそうなレベルよ。


 とりあえず、私ができることはマリアンヌお嬢様に愛情を注ぐことと、薄情なリフリードとの婚約が結ばれないように祈ること、そして、リマンド家が傾いた時に少しでも力になれるようによく学ぶことね。


 少女のような可愛らしい奥様に、マリアンヌお嬢様のお世話はとても大変なようで、フリップ伯爵夫人と乳母のソフィアさんが一生懸命、奥様をお止めしている状態なんです。


 今日も、クッキーをまだ乳飲み子のマリアンヌお嬢様に食べさせようとして、一生懸命に止められていました。


「ねぇ、ユリ。ソフィアがマリアンヌにクッキーは早いって言うのよ?こんなにおいしいのに、食べれないなんて可哀想だと思わなくって?」


 奥様、赤子はバターたっぷりのクッキーなんて食べれませんから!


 訂正。


 今、私にできることは奥様がマリアンヌ様を殺さないように、育児のお手伝いをすることです。

 


 

久しぶりの投稿です。のんびり書きますのでお付き合いください。

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