ジョゼフ殿下との ②
私達も御暇するべく、陛下のいらっしゃるテラスへマッカーナ夫人と向かいます。本来なら、マッカーナ夫人はそのままお帰りになられる予定でしだが、お嬢様とジョゼフ殿下の合同鍛錬は、ジョゼフ殿下に取って好ましくないものだと、発案者である陛下へ報告してから帰られると仰り、ご一緒する流れとなったのです。
まあ、マッカーナ夫人が一緒なら、お嬢様が陛下に理不尽なことを言われても対応しやすくなるから、私としては助かるんだけどね。
陛下がお待ちの部屋へ入ると、案の定ジョゼフ殿下がいらっしゃいました。
あのクソ餓鬼、陛下に泣き付いたな!
とっ捕まえて怒鳴りたい衝動にかられたが、ここはお嬢様のためとグッと怒りを抑え無表情を貫く。
ジョゼフ殿下は、まさか、マッカーナ夫人も一緒だとは思って居なかったらしく、少し狼狽えていらっしゃいます。
怒り心頭の陛下は、お嬢様を見るなりお説教モードだ。
「マリー、いったいどういうことだい?ジョセフの邪魔をするとは。ジョゼフの足元にも及ばないからといって、邪魔をしたら危ないだろう?」
陛下の言葉に、お嬢様はなんのことかわからず、ポカンとされています。そんな様子に苛々が募られたのか、陛下の怒りはヒートアップされた様子です。
「黙っていてはわからないではないか、すぐにジョゼフに謝りなさい。マッカーナ夫人、君もマリアンヌに謝るよう言ったらどうだい!」
顔を赤くして、怒鳴られる陛下にお嬢様は今にも泣き出しそうですが、陛下の手前、勝手に口を開くことは私には叶わない。
「陛下、いったいなんのことを言ってらっしゃるのか、皆目見当がつきません。マリアンヌお嬢様は、真面目に鍛錬を受けていらっしゃいました。ジョゼフ殿下の邪魔などしていらっしゃいません」
マッカーナ夫人は、陛下をしっかりと見据えそう言った。
「マリーがジョゼフの邪魔をしたのではないのかい?」
「はい、しっかりと鍛錬に励まれておりました。理想的な生徒と言っても過言ではございません」
マッカーナ夫人の言葉に、陛下の顔色が変わる。
「だが、ジョゼフがマリアンヌが邪魔をするせいで、鍛錬が進まず迷惑を被ったと言っておったぞ」
「それは違います。マリアンヌお嬢様は、ジョゼフ殿下の数倍しっかりと取り組んでいらっしゃいました。出来も申し分無く。殿下よりだいぶ高度な魔法を使うことが可能でございます。マリアンヌお嬢様が、殿下に嫉妬する理由などございません」
マッカーナ夫人は、陛下の横に座るジョゼフ殿下をキリッと人睨みすると、陛下へハッキリと言い切った。
「わかった。マッカーナ夫人がそう言うのであれば、そうなのだろう。もうよい、マリアンヌ、今日は帰りなさい。また、来週、鍛錬に来れば良い」
陛下の言葉にマッカーナ夫人は、顔色青くし俯くジョゼフ殿下を睨んだままピシャリと苦言を呈す。
「その件でございますが、マリアンヌお嬢様とジョゼフ殿下の合同鍛錬はなんの意味もございません。また、ジョゼフ殿下が不貞腐れ、お逃げになるのが結果かと存じます」
「僕は逃げたんじゃない!マリアンヌ嬢が目障りだったから…」
逃げた、と言う言葉に過剰に反応し顔を上げたジョゼフ殿下にマッカーナ夫人はチラッと目線を向けた後、陛下をしっかりと見据える。
「お嬢様が目障りなら、それこそ、今まで通りの鍛錬方法が宜しいかと思いますが如何でしょう、陛下」
陛下にすら、反論の余地を与えない、マッカーナ夫人。カッコいいわ。
「そうだな。その方が良いだろ」
なんにも悪くないお嬢様を怒鳴り、ジョゼフ殿下にもお嬢様との鍛錬を拒否され、挙句にマッカーナ夫人にも却下されたのだから、陛下でも諦めざるをえないわよね。
誤って叱ったんだから、お嬢様に謝罪しなよ。って、思うのは私だけじゃないよね。
あー、あんなのが陛下としてこの国を治めているなんて、本当に恐ろしいわ。
明日も18時過ぎに更新します。
「婚約は間違いでした」からお読み下さっている方へ
まだ、マリアンヌのおじいちゃんが陛下です。この後、フリードリッヒが魔法学園を卒業と同時に退位します。
※以下ネタバレを含みます。ご注意下さい。
1回目の竜討伐
オルロフ侯爵家 滅ぶ
マリアンヌのおばあちゃん 死亡
リマンド侯爵が皇女エカチェリーナと婚姻後、宰相閣下となる
マリアンヌのおじちゃんであるリマンド前侯爵 死亡
マリアンヌ 誕生
ユリリマンド侯爵家の侍女になる
2回目の竜討伐
勇者誕生
フリードリッヒ、ミハイハイロビッチ、スミス家の長女、魔法学園入学
魔法学園卒業後
エカチェリーナの弟、スミス家の長女と婚姻後、王位継承




