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剣と魔法とステンガン ――ゴスロリなショップ機能(英国面強め)で目指せ優雅なスローライフ!――  作者: 石和¥
ダンジョンズ&ハンマーズ

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暗雲

「魔力雲?」


 俺は嫌な予感とともに思い出す。異常な量の魔素が発生して、それが空に上がって発生する赤黒い雲。狭い範囲で暴風雨が起きて、その雨が降ったところでは変な草が生えたり、魔物が凶暴化したりするんだっけ。

 俺たちがゲミュートリッヒに来る数ヶ月前にも、山に魔力雲が掛かったとか聞いた。エーデルバーデンで俺がこの世界に飛ばされたときにも発生したとか、エルミが言ってた。

 理由が何にしろ、状況は最悪じゃねえか。


「なあ、ティカ隊長。この町に……それか亜人に、悪意を持ってる奴らに心当たりは?」


「アンタに、ではなく?」


 エーデルバーデンで召喚されたのが自分だとは言いにくい。正直に言ったところで、すんなり受け入れてはくれる気もするけどな。


「俺を狙ったんなら二、三ヶ月前のが不自然だ。ゲミュートリッヒの存在を疎ましく思ってる勢力があるんじゃないかと思ってさ」


「悪意や敵意は多すぎてわからんが……心当たりも何も、魔力雲が出来るほどの魔素を扱えるのは教会だけだよ」


「教会?」


「ミーチャたちは教会と関わったことはないのか?」


「ああ、宗教関係とは距離を置いてたな。接点があるのは孤児院のシスターくらいだ。あのふたりに関しては、まったく心配していないけどな」


「そうだな。そもそも彼女たちは融和派だ。亜人も分け隔てなく慈悲の心で受け入れる。問題は都市部に多い強硬派だ。口では慈悲と友愛を語る一方で、人間以外は庇護の対象じゃない」


 いや、違うなとティカ隊長は笑う。口元は笑みの形に歪むが、目だけは冷えた光を放っている。


「亜人は、魔物と同じく駆逐するべき対象だと思っている」


 幸か不幸か強硬派はそれほど多くはないが、少数が政治経済の中枢にいるため発言力と影響力が大きいのだそうな。

 正直、めんどくさい。前いた世界でもこっちでも、宗教関係者とは基本的に接触したくないと思ってた。エーデルバーデンでも種族差別と拝金主義は聞いていたし、絶対ろくなことにならない。

 向こうから絡んでこない限り、関わる気はなかったんだけどな。


 悪意を持って危害を加えてくるなら、話は別だ。


 車は大きく町の東側を回って、南側の正門からゲミュートリッヒに入る。衛兵たちも魔力雲には気付いているらしく、車を降りたティカ隊長と何やら話し始めた。全員が車を降りて、それぞれに手を振って帰ってく。俺も店まで帰ろうと思っていたところに隊長が戻ってきた。


「魔力雲が出たのは三十分(四半刻)ほど前らしい。まだ雨風以外に異変はない。外堀と壁を組んでもらったいまなら、魔物が出たとしても対処できるだろう」


 そうだろな。ゴブリンなら寄せつけないしオークでも足止めにはなる。警戒するとしてもワイバーンとかくらいだし、それも頑張れば倒せる。怖いけどな。

 問題は悪天候や魔物じゃない。その原因になったものと、原因を作った相手だ。


「召喚が行われた可能性はないのか。前に魔力雲が発生したとき、妙な奴が現れたりはしてないんだよな?」


「そうだな。警戒するような人物の報告も噂も耳にしてない」


 少しだけ俺の目を見るティカ隊長に、俺は肩を竦める。もう、いいか。信用してくれてる相手を嘘で誤魔化してもしょうがないし、そんなのを続けられるほど器用でもない。


「ティカ隊長には言っとくけどな。俺とヘイゼルは異界から引き摺り込まれた召喚の被害者だ」


 驚いてはいるが警戒する様子はない。大方そんなもんだろうとは思っていたのかもしれない。


「エーデルバーデンで俺たちが現れたとき、領主が行った召喚の儀式を取り仕切ったのが王国に入り込んだ国外の黒魔導師だって話を聞いてる。どこの国かは知らんけどな」


 ティカ隊長はこれも驚かなかった。彼女によれば、推理するほどの選択肢はないのだそうな。


「王国北部のエーデルバーデンに入り込める国はそう多くない。入り込んで利益のある国はさらに少ない。その国外勢力ってのは、十中八九アイルヘルンだな。それも教会の息が掛かった凄腕となれば、対象はほぼ絞り込まれたようなものだ」


「……やっぱり、そうなるか」


「少し時間をくれ。こちらで調べてみる。それよりミーチャ、今後アンタがどうするのか、どうしたいのかを聞いておくぞ。なんであれ邪魔をする気はないが、動く前には出来れば声を掛けてもらえると助かる」


 可能な限り手は貸すと言って、彼女は笑った。辺境の集落とはいえ、公的組織の長がそれを言ってはイカンのではないか?

 まだどうするかは決めてない。相手の出方次第ではあるんだけど、和解の道などないことくらい理解してる。決めるとしたら、どこを落とし所にするかだ。そんなものがあるとしたらな。

 やるかやらないかの選択はある。でも、やるとしたら最後までやるしかないのだ。弱肉強食の未開な世界で、中途半端な実力行使は禍根を残すだけの悪手だ。


「自分の都合に他人を勝手に巻き込んでおいて、詫びるんならともかく喧嘩まで売ってくるんならさ」


 俺は彼女に目を向け、正直に告げる。


「殺すよ」

【作者からのお願い】


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(最初にお詫びしておきますが、たぶんパンジャンドラムは出ません)


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― 新着の感想 ―
[一言] 敵が生きたまんまだと枕を高くして寝れないから。 是非もないよね。
[一言] >(最初にお詫びしておきますが、たぶんパンジャンドラムは出ません) ソレは別のSF作品でもだえる程でてきたのでお腹いっぱいだったり。 むしろ英国をたたえるヘイゼルさんの謎の雄叫びの解説が欲…
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